貫井徳郎著『被害者は誰?』(講談社文庫ぬ2-4、2006年5月15日講談社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
豪邸の庭に埋められていた白骨死体は誰なのか? 犯人が黙秘を貫く中、警察は押収した手記をもとに、被害者の特定を試みるが……。警視庁の桂島刑事から相談される、迷宮入り寸前の難事件の数々。それを解き明かすのは、頭脳も美貌も態度も規格外のミステリー作家・吉祥院慶彦(きっしょういんよしひこ)。痛快無比! 本格推理の傑作。
普通のミステリーのように読者が犯人を探すのではなく、被害者、目撃者、誰が探偵か、を探すという構成の4編の連作短編集。
「被害者は誰?」
豪邸の庭に埋められていた白骨死体。その家の主人・亀山俊樹が犯人であるのは明らかなのだが、亀山は被害者が誰かについては黙秘を貫いていた。警視庁捜査一課の桂島刑事が頼ったのは、大学時代の先輩で、今はミステリー作家で、容姿端麗,頭脳明晰だが、尊大で口が悪く、けちで、ナルシストな吉祥院慶彦だった。
警察が自宅から押収した手記には、元妻の亀山美枝子と思われるミコが度々登場し、さらに「自分はこの三人の女性の誰かを殺すだろう」と書かれていた3人は田之浦亜紀、妹、富士喜子だろうか?
「目撃者は誰?」
男は学生時代に高嶺の花と憧れていた旧姓綾瀬の美春と10年ぶりに再会した。美春は男の同僚の妻になり、同じ社宅に引っ越してきたのだ。すぐに不倫関係になってしまった二人に現金2万円を要求する脅迫状が届けられる。おそらく、向かいの棟に住む3人の同僚の誰かが、密会の現場を目撃したと思われる。
一方、桂島刑事は、学生時代の友人・薬師丸から、同じ社宅に住む3人の人間のもとに、身に覚えのない、2万円分の旅行券が送られてきたという奇妙な相談を受けた。
「探偵は誰?」
新作のネタが思い浮かばなかった吉祥院は、自らが学生時代に解決したモデルクラブ社長殺人事件の登場人物の名前を変えて小説を書いた。桂島刑事は、登場する男性モデル4人、栗本、松沢、梅田、柿生のうち誰が吉祥院なのかを当てる賭けをする。
「名探偵は誰?」
先輩が交通事故で足を複雑骨折し、入院してしまった。加害者への怒りを抑えきれない先輩だったが、相手が、若くて美人の茅部であることを知ると、態度を豹変させる。それから、その女性はちょくちょく見舞いに訪れるようになるのだが、どうやら見舞い以外に、病院を訪れる目的があるらしく……。
本書は2003年5月に講談社ノベルスより刊行。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
軽く読めて、誰が被害者か、目撃者か、探偵かを探るミステリーという構成は面白い。
しかし、あまりにもお手軽ミステリーだ。吉祥院先輩と桂島刑事のキャラが軽く、二人の会話が安っぽいコメディで薄っぺら。ところどころに挿入される挿絵がまるで素人絵で、いやます感を増す。
お勉強
彼我(ひが)の生活環境の違い:他人と自分
天網恢恢疎にして漏らさず:天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕える。
綸言(りんげん)汗の如し:出た汗が再び体内に戻り入ることがないように、君主の言は一度発せられたら取り消しがたいこと。
フーダニット:Who done it? 「やったのは誰か」 犯罪小説、映画で、最後まで犯人がわからないようにしてあるもの。