貫井徳郎著『殺人症候群』(双葉文庫ぬ1-03、2005年6月20日双葉社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。「大切な人を殺した相手に復讐するのは悪か?」「この世の正義とは何か?」という大きなテーマと抜群のエンターテインメント性を融合させた怒涛のノンストップ1100枚!
「症候群シリーズ」は(1)『失踪症候群』(2) 『誘拐症候群』、(3)『殺人症候群』
環はチームの3人を集め、6件の事件記事を示した。犯人は刑法上の罪には服していないが、別にスクラップされている事件の被害者なのだという。
例えば、少年AとBは、リンチで級友を殺して少年院に送致されたが、1年で退院。Aはオートバイ転倒で死亡。Bは押し込み強盗で家族ごと殺された、等々。復讐を請け負う職業的殺人者がいるとしか考えられないという。倉持はこの仕事を断り、原田と武藤が引き受けることになる。
特殊工作チーム
環(たまき)敬吾:警視庁警務部人事二課。リーダー。30代後半。常に冷静で必要最低限のことしか言わない。
原田柾一郎:表の生業は私立探偵。元刑事。
武藤隆:表の生業は托鉢僧。元機動隊員。
倉持真栄(まさはえ):表の生業は肉体労働。190㎝近い大男。妻は温子。娘は笙子。元刑事。
鏑木(かぶらぎ):刑事。相棒は50代の北嶋。
梶原智之:平凡な中小企業の営業社員。息子・透は中学でリンチを受け死亡。主犯は佐島、香山と市倉。
小島和子:40歳過ぎの看護師。息子・継治は心臓移植が必要な難病。
矢吹響子:「少年犯罪を考える会」主宰。渉(わたる)の親友の、殺された高木の妻。響子が折衝役で渉が実行役。
本書は2002年2月に双葉社より刊行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
話としては面白く、いろいろな要素が絡み合っている大作の702頁。
家族に理不尽、残酷なことをして、大した罰を受けてない奴がいても、懲らしめたいとは思うだろうが、殺したいと思うものなのだろうか。ましてや、自分に関係しない事件の犯人を殺す動機が私には納得できない。
リーダーの環敬吾は頭脳明晰で、底を見せず、倉持は単純明快な武闘派で、いずれも只者ではない雰囲気を漂わせて興味を引く。この本では武藤と原田の出番は少ない。倉持の警察を辞めた事件が語られるのに、捜査からは外れて裏で活動し、最後の方で主役級になる。渉の人物像が不明だったが、なんと!!
お勉強
牽強付会(けんきょうふかい):自分の都合の良いように強引に理屈をこじつけること。
蹌踉(そうろう):足どりがふらつくさま。「―として家に帰る」
怯懦(きょうだ):おくびょうなこと。「―な性格」