宇佐見りん著『推(お)し、燃(も)ゆ』(2020年9月30日河出書房新社発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。
著者は、デビュー作『かか』で第33回三島賞を受賞し、第二作の本書で第164回芥川賞を受賞した21歳。
2021年上半期を代表するベストセラー小説となっている。
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」で本書は始まる。アイドルグループ「まざま座」の上野真幸(まさき)というメンバーを「推す」ことに全てを捧げる高校生の“あかり”の物語。
真幸のおっかけに専念するあかりは、学校生活もバイトもうまくゆかず、母や姉との関係もおかしくなって、心身の不調を抱える。唯一の支えが「推し」(真幸)の存在であり、推しを推し続けることで、なんとか生きながらえている。
推しのグッズを集め、CDやDVDを保存用、鑑賞用、貸出用に3部買い、「推し」の声で起こしてくれる目覚まし時計を購入し、金がかかるライブに足を運ぶために叱られながらバイトする。推しの作品と人となりを解釈するブログを出し続けて、ブログファンもようやくできてきた。推しに打ち込むあいだだけ、「余計なものが削ぎ落とされて、背骨だけになって」「重さから逃れられる」。
そのさなか、「推し」がファンを殴ったという噂が広まり、「推し」は叩かれ、燃えた(炎上した)。「推し」の芸能生活に危機が迫り、あかりの生活の背骨が揺らぐ。
「推すことはあたしの生きる手立てだった。業だった。最後のライブは今あたしが持つすべてをささげようと決めた」
初出:「文藝」2020年秋季号
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
新し気なテーマの選定に不満はないし、文章はうまいし、構成も巧みだ。文才があることは間違いない。唯一の心配は、その後の活躍には不満がある、あの綿矢りさの登場を思わせる点だけだ。
「推し」という行動、その背景が、年寄にもなんとなく理解できた点はグー。
推しという行為に追い込まれていく孫のような少女を、小説なのに、ついつい心配してしまう。何にでも、例えば勉強でも、結局、逃避に過ぎないといえば言えるのだろうが、将来が引きこもりにしか見えないので、孫が(??)心配だ。
“推し”という言葉がまだぴんと来ない。ようやく“おっかけ”が馴染んできたのに、もう“推し”とは、トホホ!!推しは対象を指す言葉にも使えるし、行動としても推しの方が積極的な感じがする?
宇佐見りん(うさみ・りん)
1999年静岡県沼津市生まれ、神奈川県育ち。現在大学生、21歳。
2019年、『かか』で第56回文藝賞(遠野遥と同時受賞)、史上最年少で第33回三島由紀夫賞を受賞。
2021年、『推し、燃ゆ』で第164回芥川賞を受賞。
お勉強の時間
居竦(いすく)まる
非難囂囂(ひなんごうごう) こんなの漢字で書く必要あるの?
「(携帯の画面を覗いていて)、その気の抜けた顔がかわいくてスクショした。」 スクリーンショットでしょ? おじいさんだって知ってたもん!