hiyamizu's blog

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雫井脩介『クロコダイル・ティアーズ』を読む

2023年04月09日 | 読書2

 

雫井脩介著『クロコダイル・ティアーズ』(2022年9月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの作品紹介

【第168回 直木賞候補作】
ベストセラー作家、雫井脩介による「究極のサスペンス」

この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。
息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。

「息子を殺したのは、あの子よ」
「馬鹿を言うな。俺たちは家族じゃないか」

未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。
家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!

「家族というのは、『お互いに助け合って、仲睦まじく』といった一面が取りざたされることも多いですが、そうじゃない部分もあります。ある種の運命共同体であるからこそ、こうしてほしいという願望を押しつけあったり、求めあったりして、生きづらさも生んでしまう。だからこそ、ドラマが生まれる。家族が一枚岩になれないときに生ずる『心の行き違い』は、サスペンスにしかならない」(著者インタビューより)

 

クロコダイル・ティアーズcrocodile tearsとは、ワニは獲物をおびきよせるためにうその涙を流すと言い伝えられていることから、見せかけの涙、空涙、うそ泣きのこと。

 

登場人物

久野想代子(くの・そよこ):老舗陶磁器店の跡継ぎ夫・康平と結婚したが、夫が元交際相手に殺害された。義父・貞彦の勧めで、想代子は3歳の息子の那由太ともに両親と同居する。実母は岸川敏代

久野貞彦、暁美(あさみ):東鎌倉駅前で老舗陶磁器店「土岐屋吉平(きっぺい)」を営む。長男・康平を亡くし孫の那由太に望みを持つ。妻・暁美は想代子に疑いを深める。

塚田東子(はるこ)、辰也:暁美の実姉・東子は、一時は翔んでいる女だったが、今は「土岐屋吉平」のビルの3階でキッチン雑貨店を営む。夫の辰也は楽器店経営に失敗し、今は、妻の店のお飾り店長。

隈本重邦:想代子と同棲していたが、暴力を振るうので別れた。想代子の夫となった康平を殺害し裁判で、懲役17年の判決を受けた直後に「夫殺しを想代子に依頼された」と叫んだ。

山本喜市:人間国宝の陶芸家。息子の正市郎も売り出し中の陶芸家。

 

 

初出:「オール読物」2022年1月号~8月号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

元恋人隈本をそそのかして夫・康平を殺させたのではと疑われていても、一見平静で何を考えているか見えにくい嫁・想代子は冷静に店の仕事をこなしていく。
一方で、息子を殺され、荒れる心から嫁に嫌味を言い、確証のない憶測で想像力を膨らませる姑・暁美、たきつける姉・東子。暁美の心身はボロボロになる中で、店の仕事は嫁に移っていく。さらに、夫・貞彦も跡継ぎを孫・那由太に期待する中で、立派に店の仕事をこなす想代子に肩入れしていく。暁美はますます感情的になり攻撃性を増すし、壊れていく。

私は、最初からたぶん結末はこうだろうと予想をつけていた。したがって、嫁いびりをエスカレートする暁美にいやな話が続くと思っていた。しかし、逆に読み終わってもなお、なにかすっきりしないのは何故?

 

 

雫井脩介の略歴と既読本リスト

 

 

コメント
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