天祢涼(あまね・りょう)著『彼女が花を咲かすとき』(光文社文庫あ59-1、2017年12月20日光文社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
花の街として知られる地方都市・光咲(こうさき)市。花屋「あかり」を経営する榊竜は、客たちから花に詳しい少女・美咲の噂を耳にする。三つ編みの可憐な少女は謎解き名人で、花にまつわるトラブルを必ず解決するというが…。ある科学者が植物に対する画期的な研究を進める中、花に導かれ、少女と人々が絆を結んでいく。切なさと感動が溢れるファンタジー&ミステリー。
間章をはさんだ5章からなる連作短編集。
「二月 花あるところ泥棒あり」
公民館の臨時職員渡会純平は花を定期購入していて、受付カウンターに飾っていた。「日にちが経たった花を捨てるんだったら下さい」という小2の佐藤雅晴くんに、純平は「誰かひとりだけにあげる訳にはいかないんだ」と断る。その後、バラが1本なくなり少年はバチが当たって病気になったと悲しむ。
「なぜ、バラを盗んだ少年は自分にバチが当たったと思ったのか?」
「五月 花を抱いて恋せよ乙女」
空手道場で修行する猫田凛々子は、国際的ピアニストでイケメンの花坂昌と幼なじみで今も親しく「ハナさん」と呼ぶ。花坂はバイオリニストの美人の佐々木麻里亜と相思相愛で、彼女は楽団員から嫌がらせを受けている。そこで凛々子が花坂の恋人のふりをすることにした。
「なぜ、彼女はユリの花を買ったのか?」
「八月 花は口ほどにものを言う」
摂津は娘の梗花(きょうか)に花を贈ろうと店長の榊に相談し、トルコキキョウを贈るが、なぜか娘に嫌われている。
「なぜ、娘はトルコキキョウの花に怒るのか?」
「十一月 花の色は移りゆけども」 略
「間章」 略
「誰がために花は咲く」 略
初出:「ジャーロ」2013年秋冬~2015年春
この作品は、2015年8月光文社刊行の『ハルカな花』を改題・改稿したもの。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
普通の大人が持っている人生のやりきれない重荷をまだ持っていない人たちの話で、浅く、軽すぎる。謎自体もどうでもいいじゃないと想えて、追及する気持ちにならない。
愛する人を亡くしたり、飛び出して行ってしまったりした人もいるのだが、そのやるせなさにはまったく触れない。
なんでこんなヤング向けの本を読もうと思ったのか、忘れてしまった。共感覚(文字や数字に色が付いて見えたり、音を聞くと色が見えたりする現象)というものがあって、『キョウカンカク』という本を書いている著者に興味を持ったのではないだろうか?
天祢涼(あまね・りょう)
1978年生まれ。
『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞してデビュー。
『葬式組曲』が「本格ミステリ・ベスト10」2013年版で第7位、第13回本格ミステリ大賞の候補
他に、『銀髪少女は音を視る』など多数。近著に『もう教祖しかない!(『リーマン、教祖に挑む』)』『希望が死んだ夜に』