hiyamizu's blog

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辻村深月『ツナグ 想い人の心得』を読む

2020年06月26日 | 読書2

辻村深月著『ツナグ 想い人の心得』(2019年10月20日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社の宣伝文句は以下。

死者との再会を叶える使者「ツナグ」。長年務めを果たした最愛の祖母から歩美は使者としての役目を引き継いだ。7年経ち、社会人になった彼の元を訪れる依頼者たちは、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていた――。後悔を抱えて生きる人々の心を繋ぐ、使者の物語。シリーズ累計100万部の大ベストセラー、9年ぶりの待望の続刊!

 

2011年の『ツナグ』の続編。

 

 

秋山杏奈(あんな):8歳。歴史ある占い師の家系である秋山家の当主。分家の仕事の使者を時に代わることもある。大人びた顔立ち、頭良いが小学生には違いない。

歩美(あゆみ):秋山家の分家で、祖母のアイ子から引き継いだ使者(ツナグ)。おもちゃメーカー『つみきの森』に勤務。子供の頃に父が母を殺して自殺した。(『ツナグ』)

鶏野工房:木の風合いを大事にするおもちゃを作る工房。歩美の父と付き合いがあった。大将夫婦が作り、娘の奈緒が事務仕事する。

 

プロポーズの心得

神谷ゆずる:特撮ヒーローを務める新人の役者。23歳。カッコ良い、調子よいと言われる。顔も知らず、悪い話ばかりで恨んでいる父親・久間田市郎、3年前に死亡、と満月の夜にホテルで会う。美砂にフラられる。

嵐美砂:駆け出しだが、本格派を目指す女優。「私は誰かと幸せになってはいけないの」と語る。高校時代に親友を亡くしている。この話は、前編の『ツナグ』に出てくる。彼女は親友の御園奈津に演劇部の主役を取られる。御園は車にひかれて死ぬ。御園が好きといっていた渋谷歩美が使者になる。

 

歴史研究の心得 

鮎川幸平:元高校の校長で家族なし。上川岳満の研究者。鮎川は岳満を呼び出して疑問をぶつけたいと歩美に依頼した。岳満は名君だったのか?

上川岳満(うえかわ・がくまん):戦国時代の農村の指導者。上杉謙信に逆らっても農民を戦に出さなかった。また、謎の恋の歌を残した。

 

母の心得 

重田彰一・美里(みさと)夫妻:5年前、6歳の娘・芽生(めい)を事故で亡くす。芽生は妹を欲しがっていた。芽生に会う美里にホテルの鍵を渡すとき、彼女はキーホルダーを鞄の内側に隠して見えにくくした(p155)。

小笠原時子:74歳。20年以上前、当時26歳の長女・瑛子を乳がんで亡くした。瑛子は時子が嫁入り用に貯金していた金でドイツに留学し、ドイツ人のカールと結婚した。娘に会ってお礼が言いたいと依頼。次女は弘子

 

一人娘の心得 

鶏野工房の大将が突然亡くなる。父は一人娘の奈緒の作品に駄目だしばかりだった。果たして奈緒に工房を続けてもらいたかったのか? 歩美は奈緒に「会ってみませんか」と何度も声が出かかった。歩美が小学生の杏奈に相談すると「えー、それは余計なお世話なんじゃないかなぁ」と答えた。

奈緒が作った犬のおもちゃを父はかなり手直ししていた。奈緒は「父は、私に諦めるように言おうと思ったんだって、すぐにわかった」と語った。「だから」と奈緒は言う。そして、こう、続けた。「私、諦めません。」 

彼らは、使者など必要としていなかった。

 

想い人の心得 

袖岡絢子(あやこ):京都の料亭の娘で、身体が弱いが勝気な美人。16歳で婚約したが病死。

蜂谷茂:京都の店で修業し、東京で神楽坂の料亭のオーナーとなったが、引退。桜が咲くころあこがれていた絢子へ面会を依頼し何度も断られている。「絢子さまにお伝えいただきたいんです。あの小僧だった蜂谷も、とうとう八十五になりました、と」 話が終わって、ホテルのカーテンを開けるとそこには‥‥‥。

 

初出:「yom yom」vol.31~52

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

 

前作の話になるが、死んでしまった人に会えるという仕組みが素晴らしい。死んだ人に対して、いろいろ想いがある人との逢瀬にはいろいろ種が作れそうだ。会ってみると、「実は」という話がいかにも展開しそうだ。

 

最後の「想い人の心得」が一番好きだ。勝気で線が細い美人の 16 歳で死んだ絢子、好々爺となった蜂谷、満開のライトアップされた桜、桜の小枝を残して徐々に消えていく絢子、絵になる話だ。

年老いた蜂谷がつぶやく、「想い人や、大事な人たちと、同じ時間に存在できるということは、どれだけ尊いことか」
幸せを噛みしめるのは、「いつか」なのではない。それは、今でしょう!

 

「歴史研究の心得」も歴史上の人物に会うと言う話もオモロイ。とくに、著名な人でない点がいいと思っていたら、以下のような裏話だったとは!

映画「ツナグ」で歩美を演じた松坂桃李と辻村さんのインタービューで、著者辻村さんが質問に答えている。

「(上川岳満のモデルは)いません。領主が名君そうな土地がいいなと思って「よし、上杉謙信にしよう」と新潟に決め、岳満の残したとされる和歌も、専門家の方にご相談しながらつくっていただきました。」 

 

 

辻村深月(つじむらみづき)の略歴と既読本リスト

 

書けない漢字のお勉強。書く気はないけど。

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