辻堂ゆめ著『二人目の私が夜歩く』(2024年4月25日中央公論新社発行)を読んだ。
昼と夜で、一つの身体を共有する茜と咲子。しかし「昼」が終わりを告げたとき、予想だにしなかった「夜」の真相が明かされる。この物語には、二人の「私」と、二つの「真実」がある――。
「昼のはなし」と「夜のはなし」の二部構成。
昼のはなしで少しずつ積上げた伏線を、夜のはなしで引き継いで、全く違う世界を描いてみせる。
鈴木茜:高校3年生。小学1年の時に交通事故で両親を失い、祖父母(初瀬)と暮らす。事故のトラウマでなかなか眠れず、一度眠ると夢も見ないで、朝なかなか起きられない。
厚浦咲子:30歳。高校生の時に交通事故で首から下が麻痺し、自発呼吸もできない。
厚浦多恵子:咲子の母。72歳。
茜は、寝たきりの患者を訪ねる「おはなしボランティア」で咲子の家へ行き、咲子が歌詞を書き、茜がパソコンで作曲する約束をする。
――今、空を見上げているこの瞬間だけでも、入れ替わってあげられたらいいのに。
そんなことを考えながら、……
おとなしく、受け身な茜は、やさしく爽やかな咲子と話すこと安らぎを覚え、咲子のために何かしたいと思う。
その後、夜、茜は自分では覚えてないのに、外に出かけていると祖母から聞かされる。さらに、前の晩に予習したノートを見ると、『わたしは、サキ』と書いてあった。自分の筆跡ではなかった。日中、強い睡魔に襲われるようになったり、……。
茜は、全く身体を動かせない咲子に、夜だけでも自分の身体を使って好きなことをしてほしいと願っていた。
第一部は、昼の話で、茜の視点での人間のやさしさが描かれる。
第二部は、咲子と夜活動するサキの話で、すべての人について、明るい昼には見えない面が、夜には浮かび上がってくる。
鎌田朋哉:咲子の高校の先輩で、元恋人。事故当日に逢う約束をしていたが、事故後、見舞いにも来ない。
保谷奈々恵:咲子の親友。事故の当日、会って、喧嘩になってしまう。その後、見舞いにも来ない。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
第一部ではやさしさが描かれ、第二部は一転して、反面にある醜さが目立つという構成が見事。
第二部は、解離性同一性障害・多重人格者(主人格、交代人格)の話なので、ややこしく、しっかり読まないと混乱する。
あえて、あら捜しをすれば、第二部の咲子とサキの会話あたりからテンポが遅くなり中だるみ。また、事故の生々しい話を思い出したくないとの理由で避けたり、謎隠しに多少の無理が感じられる。
今年もよろしくお願いします。
面白そうな本ですね。知らない作家です。最近、なかなか本も読めないので、こちら様のサイト、参考にさせていただきます。
本も高くなりましたが、いいものは買ってみたいと思います。
情報、ありがとうございました。
この作家、東大法学部を優秀な成績で卒業し、まだ30歳そこそこなのに新作をバンバン出していて、将来有望かも。
私は時間を持て余していて、本をどんどん読むので、新刊がでると、あるいは予定があると、もっぱら図書館に予約して読んでいます。