中山七里著『超合理的!ミステリーの書き方』(幻冬舎新書742、な30-1、2024年9月25日幻冬舎発行)を読んだ。
「目標は生涯現役。パソコンのキーを打ちながら死にたい」と語る著者はデビューから十四年間、三か月に一冊以上のペースで書き続け、ベストセラーを連発している。その極意とは何か?
「気分で仕事をしない」「プロットは三日で捻り出す」「主要キャラクターには落差を作る」「トリックよりも情報開示の順番に気をつける」など、思いつきに頼らず「質」と「量」を両立する創作術から、「トイレは一日一回、食事は二食」など驚異的な肉体改造まで、出し惜しみすることなく語り尽くす。ミステリーを書きたい人、読むのが好きな人必携の書!
本書はプロの小説家になるための、中山流ミステリーの書き方講座だ。
《情報の開示のコツ》《トリックは後で考える》《帰納法ではなく演繹法で書く》《取材はいらない》《原稿の直しは頭の中のものを出しているだけだから一度もない》といった素人が実行するには厳しい内容だが、説明は分かりやすい。
商業出版について、たとえば《編集者との付き合い方》《関係者に迷惑をかけるな》《締め切りについて》
「地獄を楽しんじゃうタイプ」「専業作家になったときからまともな暮らしを諦めた」「トイレは一日一回」「睡眠時間は3時間」「命の限り書く」「遊びたい、休みたい、と思ったらやめる」と中山流作家生活を述べる章
第1章 ミステリーとは何か
ミステリーは小ネタが支えている:大きなトリックが中心だが、周辺に小ネタがばらまかれていて、その小ネタだけでは犯人にたどり着けないが、真実が分かったときに、それらすべてが合理的につながる。
ミッシング・リンク:複数の事件が起きるがその関連性が最初はわからないが、リンクさえ掴めば全事件が解決する。
伏線:伏線はなるべく前に敷けば、結末で読者の思い込みと真実の落差が大きくなりどんでん返しの効果が大きくなる。
第2章 ミステリーを書く
中山流プロットの作り方:新作のたびに毎回3日3番唸りながら考えたものを、2000文字のプロットにまとめて編集の人に見せ、OKが出たものを書く。
編集者の後ろには何十万人の読者が控えている。中山さんには自分で書きたいものはひとつもない。
テーマ、ストーリー、キャラクター、トリックの順:トリックを最初に考える作家は多い。大事なのはトリックより情報を出す順番
第3章 ミステリーをより面白くする
原稿はゲラ(印刷)の状態で見直す/!、?等の記号は少なくする/一行アキは時間経過を表すときのみ使用/キャラクターを作る時は欠陥部分を作る/自分の文体を見つけるためには、たくさん書くことしかない/
第4章 ミステリーと生活
新人作家は量産しないと駄目/編集者はクライアントで作家は下請け/中山さんは、平均睡眠時間は3時間、トイレに行くのは一日一回、一日に映画を1本と本を1冊読む(趣味というより食事)/遊びたいとか休みたいと一回でも思ったら筆を折るつもり
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
新人は、素晴らしい小説を書こうとするより、まず新作を量産しなければ話にならないらしい。そこで、もちろん合格点だが、ともかく量産するために方法・ノウハウが伝授されている。
「才能や個性がなくてもバイタリティとタフさがあればミステリー作家になれる」とあったので、どれどれと読んで行くと、睡眠時間は3時間・トイレは一日一回・一日に映画1本と本・1冊読むなどとんでもない話が出てきた。「まあ、最初からそのつもりもないけど」と負け惜しみ
中山七里 (なかやま・しちり)
1961年12月16日生れ。岐阜県出身。花園大学文学部国文学部卒。
2009年、『さよならドビュッシー』で第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞
2010年1月、48歳での小説家デビュー
受賞作のほかに「災厄の季節」(のちに『連続殺人鬼カエル男』として刊行)も同賞初のダブルノミネート。
他に、『贖罪の奏鳴曲』『総理にされた男』『作家刑事毒島』『護られなかった者たちへ』『彷徨う者たち』『有罪、とAIは告げた』『ヒポクラテスの悲嘆』『鬼の啼く里』『ドクター・デスの再臨』など多数
短篇小説は原稿用紙100枚までの作品
小遣いで本を買う人は2万人しかいない