東野圭吾著『危険なビーナス』(2016年8月26日講談社発行)を読んだ。
動物病院の獣医・手島伯朗に、弟・明人の妻だと名乗る矢島楓から電話がかかる。誰にも知らせずに結婚したという。しかも、明人が行方不明だと告げる。
父・一清は伯朗が5歳のときに病死し、その後、母・禎子は、病院など経営する資産家の息子・矢神康治と再婚し、9歳下の弟・矢島明人が生まれた。その後、伯朗は矢島家からは遠ざかり、疎遠になっていた。
伯朗と明人の父・康治が危篤であると聞いて、明人と楓はシアトルから急遽帰国したが、すぐに明人が書置きを残し失踪したという。惚れやすい伯朗は魅力的な美人の楓に協力して、明人を探すことにする。
関わりがあると見た矢神家の人たちを調べるため、伯朗は楓をつれて、久しぶりに矢神家を訪れる。
伯朗は型破りに明るく、セクシーな楓に思うがままに扱われ、どんどんのめり込んで行く。
本書は書下ろし。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
内容が薄いので、★★★(三つ星)が適切かとも思ったが、「楽しく読めればいいじゃないか」ということで★★★★(四つ星)とした。
相変わらずの東野作品は、ともかく楽しく読める。内容がないから楽しくスイスイ読めるのではと思ってしまう。読後感はほぼ何も残らないし、読んでいるときにも引っ掛かりや、感動や、哀しい気持ちになることはない。
惚れやすく、それを悟られやすい伯朗の幼さと、魅力を最大限生かして操る楓のコンビがおもろく、次の展開を早く知りたくなってしまう。いかにも怪しい楓だが、溌剌としていて、湿っぽくさ、ゼロなのがいい。
一気に読んで、最後に最後でバタバタと意外な犯人が明らかになるといういつもの展開だが、謎解き自体はそれほど感心しない。
登場人物
手島伯朗:池田動物病院の獣医。主人公。
手島一清:伯朗が5歳の時に病死した父。画家。
手島禎子:伯朗の母。一清の死後に康治と結婚。明人を生む。16年前に事故死。
兼岩順子:禎子の妹。
兼岩憲三:順子の夫。数学の教授。
矢神康之介:康治の父。病院の創立者で事業を拡張。
矢神康治:禎子と再婚。明人の父。病院の副院長。神経科。膵臓がんで闘病中。
矢神波恵:康治の妹。矢神家を仕切る。
支倉隆司:祥子の夫。
支倉祥子:康治の次妹。
支倉百合華(ゆりか):隆司と祥子の娘。清楚系美人。明人が好きで楓に反感を持つ。
矢神牧雄:康治の長弟。偏屈な数学者。
矢島佐代:康之介の養子。実は愛人。銀座のクラブのママ。
矢島勇磨:康之介の養子。実は康之介と佐代の息子
蔭山元美:池田動物病院の助手
池田幸義:池田動物病院の院長。80歳目前。
矢神明人(あきと):伯朗の9歳下の異母弟
矢神楓:矢神明人の妻。魅力的美人。