高田郁(かおる)著『あきない世傳(せいでん) 金と銀 二 早瀬篇』(時代小説文庫2016年8月18日角川春樹事務所発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
学者の娘として生まれ、今は大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公する主人公・幸。十四歳の幸に、店主徳兵衛の後添いに、との話が持ち上がった。店主は放蕩三昧で、五鈴屋は危機に瀕している。番頭の治兵衛は幸に逃げ道を教える一方で、「幸は運命に翻弄される弱い女子とは違う。どないな運命でも切り拓いて勝ち進んでいく女子だす」と伝える。果たして、「鍋の底を磨き続ける女衆」として生きるのか、それとも「五鈴屋のご寮さん」となるのか。あきない戦国時代とも呼べる厳しい時代に、幸はどのような道を選ぶのか。話題沸騰のシリーズ第二弾!
前巻の最後は、14歳で大坂の呉服問屋「五鈴屋」に女子衆として奉公にあがった幸が、阿呆ぼん・徳兵衛の嫁にされるかどうかで終わっていた。
冒頭で、幸は徳兵衛の嫁に決まり、同業組合による御寮さんとしての試験にもパスする。しかし、まだ14歳の幸は徳兵衛と床を共にすることはなかった。(という設定で一安心?)
次男の惣次とお客との交渉に付いて行く事になった幸は、店では見せない、お客さん対応の腰の低さ、営業センスに感心する。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)
あの高田郁がじっくり設定した舞台で、十分練り上げた人物を、手のうちで思いのままに動かして話を進めていく。「こりゃ、読まずにはいられめい!」てなもんだ。
幸の女としての、商売人としての成長物語なのだが、読んでいるおじいさん、私も、ハラハラと慈しみ、そして一緒に成長している気になってしまう。
『みをつくし料理帖』に出てくる料理自体には興味を持てなかった私だが、このシリーズの商売の進め方には興味が湧く。
ところどころに『みをつくし料理帖』を思わせるところがあり、懐かしい。
路地に入り込んだ幸は、そこに朱塗りの祠(ほこら)を見つけて目もとを和らげた。
幸:武庫郡津門村の学者・重辰と母・房の娘に生まれ、妹は結(ゆい)。秀才だった兄・雅由(まさよし)は亡くなった。大阪の呉服屋「五十鈴屋」に女衆として奉公する。
治兵衛:「五十鈴屋」の番頭。「五十鈴屋の要石」と称される知恵者。幸の商才を見抜く。息子賢輔。
富久(ふく):「五十鈴屋」の二代目徳兵衛の嫁。息子の三代目徳兵衛の没後は、三人の孫と店を守る。「お家(え)さん」と呼ばれる。
四代目徳兵衛:富久の初孫で、現店主。放蕩者。「阿呆(あほ)ぼん」と呼ばれる。
惣次(そうじ):四代目徳兵衛の次弟。商才に富むが、店の者に厳しい。不細工な顔。
智蔵:四代目徳兵衛の末弟。2年前に家を出て一人暮らしし、売れない浮世草子を書いている。
「五鈴屋」の女衆: お竹(年長)、お梅、幸
「五鈴屋」の奉公人:手代(鉄七・伝七・佐七・留七・末七)、丁稚(広吉・安吉・辰吉)。鉄七はのち番頭になり鉄助となる。
高田郁(たかだ・かおる)
1959年、兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。高田郁は本名。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」(『出世花 新版』、『出世花 蓮花の契り』)
2009年~2010年、『みをつくし料理帖』シリーズ『第1弾「八朔の雪」、第2弾「花散らしの雨」、第3弾「想い雲」』
2010年『 第4弾「今朝の春」』
2011年『 第5弾「小夜しぐれ」』
『 第6弾「心星ひとつ」』
2012年『 第7弾「夏天の虹」』
『みをつくし献立帖』
2013年『 第8弾「残月」』
2016年『あきない世傳 金と銀 源流篇』、本書『あきない世傳 金と銀 二 早瀬篇』
その他、『 ふるさと銀河線 軌道春秋』『銀二貫』『あい 永遠に在り』
エッセイ、『晴れときどき涙雨』