一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

カノタマに教えていただく(後編)

2025-02-24 23:39:26 | LPSA麹町サロンin DIS

第4図以下の指し手。△9五歩▲同歩△8四香▲8八銀△9八馬▲9六桂(途中図)
△4六歩▲3一馬△9五香▲8四桂△同歩▲9九歩△8八馬▲同玉△6四桂(第5図)

鹿野圭生女流三段は、女流初段時代の福間香奈女流五冠に勝ったことがある。要するに、女流棋士は皆さん強いのだ。
第4図で私が恐れていたのは、△4六歩(参考A図)の突き出しだった。次に△4四香の応援が厳しく、場合によっては△3二銀と馬に当てつつ飛車先を通す手もある。

しかし鹿野女流三段が考えているようではなあかったので、手番を確認した。するとやはり、鹿野女流三段は私の手番と勘違いしていた。
そこで鹿野女流三段は9筋のほうを見、△9五歩と指した。私はもちろん▲同歩。
しかし鹿野女流三段は直感的に緩手と感じたらしく、「(大沢さんの)歩切れを解消させちゃったしなあ……」とつぶやいた。
とはいえ、△8四香。私は▲8八銀を間に合わせ、△9八馬に▲9六桂と据えた。
「なんか不思議な手やなあ」
と鹿野女流三段がつぶやく。△9六歩を防いだだけの手だから、我ながら気が利かない。ただこう指すことによって、鹿野女流三段は△9五香と走りたくなる。そうしたら▲9九歩で馬を殺す算段だった。
鹿野女流三段は遅ればせながら△4六歩。私は△3二銀の脅威から逃れるのと、根元の飛車を狙って▲3一馬と寄る。
そこで鹿野女流三段はやはり△9五香。私は狙い通り▲9九歩で馬を殺した。
そこで△9九同馬▲同銀△同香成もあったと思うが、鹿野女流三段は△8八馬と切り飛ばし、返す刀で△6四桂。振り飛車の常套手で、私は一難去ってまた一難である。

第5図以下の指し手。▲7七玉△9九香成▲6六歩△8九成香▲6五歩△5六桂▲6七金直△4七銀(第6図)

このままふつうに△7六桂と跳ばれてはさすがに悪い。とはいえ、それをどう受けても味が悪い。
そこで甚だ異筋だが、▲7七玉と顔面受けした。
鹿野女流三段はじっと香を成る。私は▲6六歩と桂を取りにいく。上手玉を攻略するには、▲9四桂しかないのだ。もっとも▲6六歩は次に▲6五歩としても桂は取れないが、ほかに指す手がなかった。
果たして▲6五歩には△5六桂と跳ばれ、▲6七金直と後手を引くようではやはり苦しい。
ここで鹿野女流三段は少考する。私は△8八銀と決められるのがイヤだったが、注目の指し手は、俗手の△4七銀だった。

第6図以下の指し手。▲5九金△3六銀成▲5六金△4七歩成▲5三香△4六と▲6六金△5七と▲9四桂△8三玉(第7図)

K氏の角落ち戦は、鹿野女流三段が勝った。どうも、K氏が序盤で失敗したようだ。
LPSAの指導対局は、時間まで指せるので、すぐにK氏の雪辱戦が始まった。
私は▲5九金と引く、手の善悪はともかく、私らしい手だと思った。そして△3六銀成には▲5六金。思わぬ形で桂が取れ、少し希望が出てきた。
△4七歩成に▲5三香が待望の反撃である。ただここで△3二飛の強手があり、▲同馬△同銀は次に△8八角があるのでそれを受けるしかないが、すると5三香がスカタンになってしまう。つまり▲5三香は、馬引きのスペースを自ら消してしまう、諸刃の剣だった。
だが鹿野女流三段は△4六とから△5七ととした。これも厳しいが、駒の動きが重複していると思った。
私はいまのうちに▲9四桂を決める。鹿野女流三段は△9三歩と打たないとは思ったが、その保証はない。打てるときに打っておこうと思った。
鹿野女流三段は
「こっち(△7一玉)は相手の駒がいるもんなあ。じゃあ上か。8三か。9三か」
とつぶやきつつ△8三玉と立った。
そこで私の指し手は。

第7図以下の指し手。▲7八玉△9六歩▲8九玉△9七歩成(第8図)

私は▲7八玉と引いた。△8八角の筋から逃れるためと、攻めると見せかけて受けの手を指せば、鹿野女流三段が混乱すると思ったからだ。
すると鹿野女流三段は△9六歩。成香をくれてやる代わりに、三段目にと金を作るハラだ。だがこちらは香を取るしかない。
鹿野女流三段は△9七歩成としたが、この瞬間、私に絶好の順が生じていた。

第8図以下の指し手。▲5二香成△同飛▲9七馬△8五桂▲8六馬△2六成銀▲9一角△9五歩▲8二角成△9四玉▲9五馬(投了図)
まで、91手で一公の勝ち。

私はここで▲5二香成。対して△同銀は▲4二馬。△同金も▲4二馬が残り指しきれない。もっとも鹿野女流三段はさして考えず△同飛と取った。しかしその瞬間、私の馬の利きが再び自陣に通った。すなわち、▲9七馬と虎の子のと金を取れた。これは一遍に下手の勝ちである。
鹿野女流三段は「そうかー」とつぶやき、△8五桂。私は▲8六馬と逃げ、△2六成銀に▲9一角と迫った。
鹿野女流三段はすべてを悟り、△9五歩。これには簡単な即詰みがあり、私の勝ちとなった。
私は僥倖の勝利で、まあ、鹿野女流三段が私に花を持たせてくれたというところ。私はただただ、感謝するのみである。
なお、LPSA麹町サロンでの指導対局では、私の飛車が1回も動かないことが何度かあったが、本局もそうなってしまった。

感想戦では、中盤の私の▲6六銀に、△8八香を考えていたそう。だが以下▲4四桂△4二飛▲5二桂成△同銀に「大沢さんなら▲7九金と(参考B図)打つやろ?」と鹿野女流三段は言った。

はい、と私は答えたが、鹿野女流三段に私の棋風がバレているのは驚異だった。
ただ参考B図ではやはり△4六歩の突き出しはあるし、その前にどこかで△8九馬の王手は入る。この変化も冷静に見れば、上手有望であろう。
時間は午後7時47分。鹿野女流三段は2局目を申し出てくれたが、私は固辞し、味よく麹町サロンを後にした。
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