![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/bd/83156d41ddd06153538a12c1913ba2a6.png)
第3図以下の指し手。△4八歩▲5九金△8六角▲7七歩△同桂不成▲8七歩△7五角▲5一歩成△5八歩▲4八金△同角成▲同玉△5九歩成▲5七玉△5五歩▲同金△5八飛▲6六玉△7五金▲同玉△5五飛成▲7六玉△8九桂成▲6六金△6四桂▲7七玉(第4図)
渡部愛女流初段は△4八歩と手裏剣を飛ばす。これを▲同金は△5九飛だから里見咲紀女流初段は▲5九金とよろけるが、いい辛抱だ。どちらにも私には指せない手で、さすがにプロは違うと思った。
さればと渡部女流初段は△8六角と出て金取り。中村修九段が「ほぉー」と唸った。
以下▲7七歩△同桂不成▲8七歩の進行に、「ほー、いろんな手を指しますね」とさらに感心した。
ただ▲5一歩成△5八歩に、中村九段は▲4一とと勝負したいふうだった。これを△同金なら▲3二銀で、攻守ところを変える。
しかし里見女流初段は▲4八金。やはり受けの棋風なのだ。
渡部女流初段は△同角成と切る。私見だが、守りの金と角の交換は互角だと思う。
▲4八同玉に間髪入れず△5九歩成。後手ペースになったようだ。
△5五歩▲同金と吊り上げて、△5八飛。▲6六玉に△7五金▲同玉として、△5五飛成と▲5五の金を取った。流れるような攻めである。
里見女流初段は▲6六金と打って上を向く。さっきまで前のめりだった姿勢は、すっと伸びていた。何か緊張感が解けたようだった。
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第4図以下の指し手。△7六金▲同金△7九成桂▲8八金△7六桂▲6六角△6五金▲5五角△8八桂成▲同玉△7八金▲9八玉△5五金▲8二角△9七金(投了図)
まで、120手で渡部女流初段の勝ち。
第4図から渡部女流初段は△7六金の犠打で竜取りを外し、△7九成桂と金を取って詰めろ。▲5五金を取りに行った時と同じ手筋を披露した。里見女流初段は▲8八金と受けるが、「根性の一手ですね」と上田初美女流三段が感心した。
しかし渡部女流初段の寄せは的確だ。ここも、相手の受け駒をズラせてから取りに行く、という手法で、△5五金まで先手玉は受けなしとなった。以下▲8二角△9七金まで、里見女流初段の投了となった。
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両対局者に盛大な拍手が送られ、大盤の前で感想戦となる。
「(里見さんは)背が高いね」と中村九段があらためて驚く。
里見女流初段「最近は攻め過ぎて攻めが切れてしまうことが多かったので、受けに回ろうと思ったんですけど…。終盤はわるくないと思ったんですけど…」
いい将棋を落とした里見女流初段は残念無念の表情だ。
渡部女流初段「攻め合われたらわるかったです」
どうも里見女流初段が渡部女流初段の攻めを面倒見すぎて、どこかで逆転した感じだ。中村九段の解説どおり、どこかで▲4一とと攻め合うべきだったようだ。
かくして、渡部女流初段の2年連続の決勝進出が決まった。
しばらく休憩した後、準決勝の第2局。飯野愛女流1級VS塚田恵梨花女流2級戦である。
飯野女流1級はこの棋戦の常連だが、いまだに優勝がない。けやきカップの宏美女流二段同様、ファンの期待を裏切り続けている。
両者が登場し、対局前のインタビュー。両者は先の羽生善治三冠VS藤井聡太四段戦の記録係をしていたので、まずそのことに触れる。
塚田女流2級「貴重な体験をさせていただいて、ありがたかったです」
飯野女流1級「いろいろなところで声を掛けていただいたんですが、記録態度がひどくて…。動きすぎだな、と。でも貴重な体験をさせていただきました」
塚田女流2級「昨日から緊張してします。今日は自分らしい将棋が指せればと思います」
飯野女流1級「第1局に続いて熱戦が指せればと思います」
中村アナウンサーによるプロフィール紹介。「飯野女流1級は第2回大会で準優勝。地元ファンも多く、類まれな品格の振り飛車で、初優勝を狙います。
塚田女流2級は、お父様が塚田泰明九段、お母様が高群佐知子女流三段。血統のよさは折り紙付きです。初優勝を目指します」
解説の森下卓九段「飯野さんは昔ながらの正統な振り飛車。塚田さんはご両親のいいところを受け継いでいると思います」
聞き手の中井広恵女流六段「塚田さんの攻めを飯野さんがどう受け止めるか」
12時02分、塚田女流2級の先手で対局が開始された。
初手からの指し手。▲2六歩△3四歩▲7六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩△6二玉▲3七銀△7二玉▲7八玉△8二玉▲4六銀△7二銀▲6八銀△3二金
▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲6六銀△5一飛▲3八飛(第1図)
私は席を立って、後方で観戦。このほうが大盤がよく見えるからだ。
塚田女流2級の居飛車明示に、飯野女流1級は中飛車に振った。森下九段「今いちばん流行っているゴキゲン中飛車ですね」
塚田女流2級は▲3七銀から▲4六銀と上がる。いわゆる超速だ。森下九段「この手はねぇ、初めて見た時は指し手の間違いかと思いましたよ」
△3二金には▲7七銀と上がった。森下九段「(次は)▲4五銀や▲6六銀があります」
△5六歩▲同歩△同飛に▲5五歩とフタをするのは、△同飛▲同銀△同角で後手有利、と森下九段。その解説は明快で、言語も明瞭だ。
塚田女流2級は▲3八飛(第1図)と寄ったが、ここで▲3五歩△同歩▲同銀(参考1図)と行くとどうなるか。
「ここでいい手を皆さんに伝授します」
と森下九段が大上段に構えた。
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(つづく)