第10期マイナビ女子オープン五番勝負は、3連勝で加藤桃子女王が防衛した。挑戦者の上田初美女流三段も好調と見られていただけに、この数字は意外だった。
加藤女王は賞金500万円獲得。棋士四段を目指すのもいいが、女流棋士のトップを目指すのもわるくないと思う。
◇
4月29日(祝・土)は、世田谷区の二子玉川まで、「第10回世田谷花みず木女流オープン戦」を見に行った。
今回の出場女流棋士は、渡部愛女流初段、里見咲紀女流初段、飯野愛女流1級、塚田恵梨花女流2級の4人。前週に続いて、「女流棋士ファンランキング」の1位を拝見できるのだ。なお室谷由紀女流二段は前回の優勝で慣例により卒業。今日は別所でのイベントに出演するため、こちらへは聞き手の出演もなかった。
また今回は第10回記念ということで、夕方から中村真梨花女流三段、鈴木環那女流二段らのトークショーも予定されていた。
会場はおなじみの「玉川高島屋S・C」6階、開演は午前10時30分。その10分前に会場入りしたが、今年は昨年ほど混んではいなかった。やはり昨年は室谷人気が絶大だったのだろう。
後ろのほうのベンチに座ると、肩を叩かれた。振りむくとKaz氏である。彼がこの場に来るのは珍しいが、仕事は大丈夫なのだろうか。
定刻になり、対局者と解説者が登場した。向かって左から対局者4人、中村修九段、森下卓九段、上田初美女流三段、中井広恵女流六段である。
今年も撮影タイムが設けられていて、ここで1回目。だがフラッシュ禁止のうえ、撮影者も多く、思うように撮れなかった。写真の巧拙はともかく、自由に撮影ができた天童は本当によい環境だった。
準決勝第1局は渡部女流初段VS里見女流初段。まず戦前のインタビュー。
渡部女流初段「優勝したいんですけど、まず目の前の一局をがんばります」
里見女流初段は昨日誕生日だったらしい。「今日はがんばります」
里見女流初段は身長が165cmあるとのことで、そこはポイントが高い。もっと活躍すれば、私の「女流棋士ファンランキング」にランクインするだろう(ただし、それを発表する気力が私に残っているかどうか)。
中村アナウンサーの紹介文では、渡部女流初段が「北海道の若き妃」、里見女流初段が「終盤が強い」とされていた。
解説担当の中村九段「居飛車対振り飛車の綺麗な将棋が見られると思います」
聞き手担当の上田女流三段「この年代は仲がいいですが、盤の上では火花が散る将棋が見られると思います」
控え室脇には、中倉宏美女流二段と島井咲緒里女流二段の姿があった。島井女流二段を目にするのは1週間ぶり。もっとも私がLPSAに入れ込んでいたころは、このくらいの間隔で会うのも珍しくはなかった。
いよいよ対局開始である。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲5六歩△3四歩▲5五歩△6二銀▲5八飛△4二玉▲4八玉△3二玉▲6八銀△5二金右▲5七銀△8五歩▲7七角△3三角▲5六銀△4四歩▲3八銀△2二玉
▲2八玉△1二香▲1六歩△1一玉▲3八銀△2二銀▲6五銀△4三金▲5六飛△3一金▲7五歩△4二角▲7六飛△9四歩▲9六歩△1四歩▲4六歩△5一銀(第1図)
先番里見女流初段の中飛車に、渡部女流初段の居飛車となった。
この対局室の壁には、「在此一戦」(コノイッセンニアリ)の額が掲げられている。関根金次郎十三世名人の書だという。
中村九段「これからの将棋界は、女流棋士も解説しないといけません」
それだけ女流棋士のレベルが上がってきたと認めているのだ。
渡部女流初段は△3三角から△1二香。渡部女流初段は意外に穴熊採用率が高い。
中村九段「中飛車は▲5八金左~▲4七金とできないからやりたくないんですよ」
先手は腰掛銀から▲6五銀と出た。上田女流三段「(この形は)私はイヤな思い出があるんですよ。お姉さん(里見香奈女流名人)と指しまして」
先の女流名人戦五番勝負のことをいっているのだろう。
里見女流初段は▲5六飛と浮き、▲7六飛。中村九段は△5四歩の変化を解説する。大盤なので、当然「こうきて、こうきて…」と、指し手の符号は言わない。ただし私の位置からでは、盤の下半分が見えない。これは毎年の課題なのだが、設営側に改善の意識がないのだからしょうがない。
大盤解説は指し手の変化なかりでなく、ユルイ話も入れなければならない。渡部女流初段らの年代は、今がいちばん楽しい時期、という話になる。上田女流三段もいまがいちばん楽しいのではないか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/bc/42036ca6242abd9fbddf33976537fa32.png)
第1図以下の指し手。▲7四歩△6二銀▲5八金左△7四歩▲同銀△5四歩(途中1図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/66/df2279af9fe2c2b66d6712c80fcd36ad.png)
▲4五歩△7五歩▲5六飛△8四飛▲6五銀△5五歩▲同角△7三桂▲4四歩△同金▲同角△同飛▲5四銀(第2図)
里見女流初段、▲7四歩と突っかけた。「若い!」と中村九段。渡部女流初段は△5一に引いた銀を再び△6二銀と上がった。
上田女流三段「最近の若手は序盤がうまいなという気がします」
▲5八金左。「振り飛車でいつも思うことは、香を1つ上がるか2つ上がるかです」と中村九段。プロでさえ迷っているのだから、私レベルで分かるわけがない。結局香上がりは指運だ。
この間に渡部女流初段が秒読みに入った。両者は盤に顔をくっつけるようにして考えている。△7四歩と歩を取り、▲同銀に待望の△5四歩。
再び、子供を産んだ女流棋士の話になる。上田女流三段は幸せいっぱいで、オーラがあふれている。中村九段「子供を産んだ女流棋士は怖いもんないでしょ。しかも復帰した女流棋士は、将棋が1.5倍強くなっています」
将棋は中央から小競り合いが始まった。
中村九段「将棋は相手がいるから、自分のイメージ通りにならないんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/c6/3ed8bbfb94a666c013950f8736f9b04a.png)
第2図以下の指し手。△8三角▲4五歩△5六角▲4四歩△8八飛▲7九金△8七飛成▲4三銀成(途中2図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/83/817979f13ac99e065bace37dc331e63e.png)
△6四角▲5二飛△3八角成▲同玉△5一銀打▲5六飛成△7六竜▲同竜△同歩▲5二歩△5七歩▲同金△6五桂▲5六金(第3図)
渡部女流初段、△8三角と放つ。「え?」「え?」と解説の2人が同時に発した。「これは全然気が付きませんでした」
お互い飛車を取り、渡部女流初段△8八飛。中村九段「もう、切り飛ばす準備してますヨ」
そこで里見女流初段は▲7九金と当てた。中村九段「あ! 受ける棋風なのか」
△8七飛成▲4三銀成(途中2図)。ここは歩が成りたいところだが、上田女流三段は「柔軟な発想ですね」と感心する。
△6四角に▲5二飛が角銀両取りだ。里見女流初段はこの手を指したかったのか。
渡部女流初段は△3八角成と切って△5一銀打。「おおー」と中村九段。凄まじいねじりあいだ。中村九段と上田女流三段も唸る回数が増えてきた。
上田女流三段「里見さんは自信を持って指している気がします」
第3図で渡部女流初段は銀取りになっており忙しい。私は次の手がまったく分からなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/bd/83156d41ddd06153538a12c1913ba2a6.png)
(つづく)
加藤女王は賞金500万円獲得。棋士四段を目指すのもいいが、女流棋士のトップを目指すのもわるくないと思う。
◇
4月29日(祝・土)は、世田谷区の二子玉川まで、「第10回世田谷花みず木女流オープン戦」を見に行った。
今回の出場女流棋士は、渡部愛女流初段、里見咲紀女流初段、飯野愛女流1級、塚田恵梨花女流2級の4人。前週に続いて、「女流棋士ファンランキング」の1位を拝見できるのだ。なお室谷由紀女流二段は前回の優勝で慣例により卒業。今日は別所でのイベントに出演するため、こちらへは聞き手の出演もなかった。
また今回は第10回記念ということで、夕方から中村真梨花女流三段、鈴木環那女流二段らのトークショーも予定されていた。
会場はおなじみの「玉川高島屋S・C」6階、開演は午前10時30分。その10分前に会場入りしたが、今年は昨年ほど混んではいなかった。やはり昨年は室谷人気が絶大だったのだろう。
後ろのほうのベンチに座ると、肩を叩かれた。振りむくとKaz氏である。彼がこの場に来るのは珍しいが、仕事は大丈夫なのだろうか。
定刻になり、対局者と解説者が登場した。向かって左から対局者4人、中村修九段、森下卓九段、上田初美女流三段、中井広恵女流六段である。
今年も撮影タイムが設けられていて、ここで1回目。だがフラッシュ禁止のうえ、撮影者も多く、思うように撮れなかった。写真の巧拙はともかく、自由に撮影ができた天童は本当によい環境だった。
準決勝第1局は渡部女流初段VS里見女流初段。まず戦前のインタビュー。
渡部女流初段「優勝したいんですけど、まず目の前の一局をがんばります」
里見女流初段は昨日誕生日だったらしい。「今日はがんばります」
里見女流初段は身長が165cmあるとのことで、そこはポイントが高い。もっと活躍すれば、私の「女流棋士ファンランキング」にランクインするだろう(ただし、それを発表する気力が私に残っているかどうか)。
中村アナウンサーの紹介文では、渡部女流初段が「北海道の若き妃」、里見女流初段が「終盤が強い」とされていた。
解説担当の中村九段「居飛車対振り飛車の綺麗な将棋が見られると思います」
聞き手担当の上田女流三段「この年代は仲がいいですが、盤の上では火花が散る将棋が見られると思います」
控え室脇には、中倉宏美女流二段と島井咲緒里女流二段の姿があった。島井女流二段を目にするのは1週間ぶり。もっとも私がLPSAに入れ込んでいたころは、このくらいの間隔で会うのも珍しくはなかった。
いよいよ対局開始である。
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲5六歩△3四歩▲5五歩△6二銀▲5八飛△4二玉▲4八玉△3二玉▲6八銀△5二金右▲5七銀△8五歩▲7七角△3三角▲5六銀△4四歩▲3八銀△2二玉
▲2八玉△1二香▲1六歩△1一玉▲3八銀△2二銀▲6五銀△4三金▲5六飛△3一金▲7五歩△4二角▲7六飛△9四歩▲9六歩△1四歩▲4六歩△5一銀(第1図)
先番里見女流初段の中飛車に、渡部女流初段の居飛車となった。
この対局室の壁には、「在此一戦」(コノイッセンニアリ)の額が掲げられている。関根金次郎十三世名人の書だという。
中村九段「これからの将棋界は、女流棋士も解説しないといけません」
それだけ女流棋士のレベルが上がってきたと認めているのだ。
渡部女流初段は△3三角から△1二香。渡部女流初段は意外に穴熊採用率が高い。
中村九段「中飛車は▲5八金左~▲4七金とできないからやりたくないんですよ」
先手は腰掛銀から▲6五銀と出た。上田女流三段「(この形は)私はイヤな思い出があるんですよ。お姉さん(里見香奈女流名人)と指しまして」
先の女流名人戦五番勝負のことをいっているのだろう。
里見女流初段は▲5六飛と浮き、▲7六飛。中村九段は△5四歩の変化を解説する。大盤なので、当然「こうきて、こうきて…」と、指し手の符号は言わない。ただし私の位置からでは、盤の下半分が見えない。これは毎年の課題なのだが、設営側に改善の意識がないのだからしょうがない。
大盤解説は指し手の変化なかりでなく、ユルイ話も入れなければならない。渡部女流初段らの年代は、今がいちばん楽しい時期、という話になる。上田女流三段もいまがいちばん楽しいのではないか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/bc/42036ca6242abd9fbddf33976537fa32.png)
第1図以下の指し手。▲7四歩△6二銀▲5八金左△7四歩▲同銀△5四歩(途中1図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/66/df2279af9fe2c2b66d6712c80fcd36ad.png)
▲4五歩△7五歩▲5六飛△8四飛▲6五銀△5五歩▲同角△7三桂▲4四歩△同金▲同角△同飛▲5四銀(第2図)
里見女流初段、▲7四歩と突っかけた。「若い!」と中村九段。渡部女流初段は△5一に引いた銀を再び△6二銀と上がった。
上田女流三段「最近の若手は序盤がうまいなという気がします」
▲5八金左。「振り飛車でいつも思うことは、香を1つ上がるか2つ上がるかです」と中村九段。プロでさえ迷っているのだから、私レベルで分かるわけがない。結局香上がりは指運だ。
この間に渡部女流初段が秒読みに入った。両者は盤に顔をくっつけるようにして考えている。△7四歩と歩を取り、▲同銀に待望の△5四歩。
再び、子供を産んだ女流棋士の話になる。上田女流三段は幸せいっぱいで、オーラがあふれている。中村九段「子供を産んだ女流棋士は怖いもんないでしょ。しかも復帰した女流棋士は、将棋が1.5倍強くなっています」
将棋は中央から小競り合いが始まった。
中村九段「将棋は相手がいるから、自分のイメージ通りにならないんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/c6/3ed8bbfb94a666c013950f8736f9b04a.png)
第2図以下の指し手。△8三角▲4五歩△5六角▲4四歩△8八飛▲7九金△8七飛成▲4三銀成(途中2図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/83/817979f13ac99e065bace37dc331e63e.png)
△6四角▲5二飛△3八角成▲同玉△5一銀打▲5六飛成△7六竜▲同竜△同歩▲5二歩△5七歩▲同金△6五桂▲5六金(第3図)
渡部女流初段、△8三角と放つ。「え?」「え?」と解説の2人が同時に発した。「これは全然気が付きませんでした」
お互い飛車を取り、渡部女流初段△8八飛。中村九段「もう、切り飛ばす準備してますヨ」
そこで里見女流初段は▲7九金と当てた。中村九段「あ! 受ける棋風なのか」
△8七飛成▲4三銀成(途中2図)。ここは歩が成りたいところだが、上田女流三段は「柔軟な発想ですね」と感心する。
△6四角に▲5二飛が角銀両取りだ。里見女流初段はこの手を指したかったのか。
渡部女流初段は△3八角成と切って△5一銀打。「おおー」と中村九段。凄まじいねじりあいだ。中村九段と上田女流三段も唸る回数が増えてきた。
上田女流三段「里見さんは自信を持って指している気がします」
第3図で渡部女流初段は銀取りになっており忙しい。私は次の手がまったく分からなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/bd/83156d41ddd06153538a12c1913ba2a6.png)
(つづく)