午後3時から、森内俊之九段、囲碁の武宮正樹九段、プロポーカープレイヤー・木原直哉の3氏によるトークショーが始まった。
こちらもさっきに増して聴衆が多い。私も興味深かったのだが、話すのは武宮九段と木原氏で、森内九段はあまり話を振られない。
ちょっと抜け出して指導対局エリアに戻ると、Shin氏が櫛田陽一七段に指導を請うていた。指導対局者が入れ替わったのだ。
櫛田七段とは私もさっき目があったのだが、なんとなく無視してしまった。私は極端な人見知りなので、こういう態度をよく取る。
Shin氏は飛車落ちで対峙していた。ふつうなら角の手合いなのに、マジか。Shin氏、本気で勝ちにきている。
中村真梨花女流三段は連投である。そしてその左では、熊倉紫野女流初段が指導していた。今日も色白でかわいらしい。
熊倉女流初段は、我が「女流棋士ファンランキング」の3位である。つまりこの10日間で、私はランキングのトップ3を間近で拝見したことになる。トップ10まで範囲を拡げれば、飯野愛女流1級、中倉宏美女流二段、中村桃子女流初段が加わり、6人。まさに眼福で、やはり人は表に出なければいけないと実感した。
ほかは佐藤紳哉七段の姿もあった。今日はフサフサの髪型である。
私も将棋が指したくなって、指導対局を申し込む。4時台のである。棋士は誰に当たるか分からないが、好きな番号を引けるようにはなっている。
熊倉女流初段を見ると、対局者は「3ーA」などのカードを机に置いていた。
ということは、熊倉女流初段が「3」となるが、それが次回の対局でも通用するか分からない。とはいえ、「3」の付箋を選んでみた。
トークショーでは、宏美女流二段と福山千沙さんが乱入し、「しょうぎのくにのだいぼうけん」のPRをしていた。現在LPSAは、この絵本とネコSHOGIバトルを推しているらしい。
再び森内九段らのトークに戻ったが、相変わらず森内九段は言葉少な。
「最近はコンピュータの将棋も強くなってきましたしね」
と語っていたが、そのうち終わってしまった。私はちょっと消化不良だ。
森内九段は十八世名人の有資格者である、武宮九段でも木原氏でも、もう少し森内九段に話を振る配慮があってもよかったと思う。
LPSAのブースでは、小さな女の子が、「しょうぎのくんいのだいぼうけん」のパネルを持っている。
宏美女流二段に聞くと、少女は中倉彰子女流二段の娘さんだそう。彰子女流二段の娘さんがあんなに大きくなるんじゃ、私も頭が薄くなるわけだ。
トーク会場ではガラッと雰囲気が変わり、ミスインターナショナル2017日本代表・筒井菜月さん、バックギャモン世界チャンピオン・矢澤亜希子さん、文壇勝負名人・下平憲治氏によるトークショーが始まった。
菜月さんは長身でスタイルもよく、なにより美しい。さすがにミスインターナショナルである。
亜希子さんはちょっと杏里に似ていて、ミステリアスな雰囲気もある。
下平氏は作家だが私は不勉強で存じ上げない。最後の文壇将棋名人のため、今もそれを名乗っているという。その下平氏の進行でトークは行われた。
菜月さんは幼少時を児童養護施設で過ごし、いろいろな経験をしたらしい。
「私は11歳のころまで、児童館で毎日将棋を指していたんですよ。角がサーッと横に動いて」
……うん? 角が動くのはナナメだと思う。菜月さんはホントに将棋を指してい、た、の、か…?「大きくなってからはシモキタの、いまもあるかな、日高屋で働いてました。その理由は、昼に賄いが出るからなんです」
菜月さんはなかなか庶民的な面があるようだ。だけどその貌は高貴で、マネキンのようだ。
「バックギャモンの競技人口はどれくらいか皆さんご存知ですか」
と下平氏が私たちに問う。ちょっと想像もつかないが、約3億人いるという。そして下平氏自身も、高名なプレーヤーらしい。
亜希子さんは、バックギャモンは素人だったが、外国に武者修行して、2014年に「バックギャモン世界選手権大会」で優勝した。
「私はバックギャモンの最終盤で、勝利確率が5%の時がありました。でも勝利の可能性があるわけですから、負けるとは考えませんでした。それで最後は勝ちました」
さらに菜月さんも語る。
「目標は高いところに置かなければダメです。100点を目指すと70点しか取れません。250点を取るつもりで、やっと100点が取れます」
「コンテストに出る時も、負けることは考えませんでした。1ミリの迷いもなく、勝った後ことをイメージします。こうイメージすることで、周りの空気が変わるように思うんです。脳波が出る、という感じでしょうか」
いいことをイメージすれば勝ちに結びつく、という典型的な例であろう。考え方がポジティヴで、私とは真反対の生き方だ。私などは。勝てばどうとでも言える、とシャに構えてしまうが、ためになる教訓ではある。
下平氏の司会進行は如才なく、これが本職のようだ。その下平氏も、国内有数のバックギャモンのプレイヤーだという。
「『謙遜は悪』ですね。日本人は褒められても否定しますが、よくありません。私も周りから、綺麗ですね、とよく言われます。私は、ありがとうございます、と素直に返すようにしています。褒め言葉には『ありがとう』です」
と菜月さんは言った。
ミスインターナショナルの世界大会は10月に行われるという。
「歴代のミスインターナショナルの優勝者はタイプが違います。圧倒的なオーラがあります。生きてきたものがふわーっと出るのがオーラです。
時代の流れに合っているかどうか。いろいろ考えながら頑張ります」
その瞳には力強い光が宿っていた。
(つづく)
こちらもさっきに増して聴衆が多い。私も興味深かったのだが、話すのは武宮九段と木原氏で、森内九段はあまり話を振られない。
ちょっと抜け出して指導対局エリアに戻ると、Shin氏が櫛田陽一七段に指導を請うていた。指導対局者が入れ替わったのだ。
櫛田七段とは私もさっき目があったのだが、なんとなく無視してしまった。私は極端な人見知りなので、こういう態度をよく取る。
Shin氏は飛車落ちで対峙していた。ふつうなら角の手合いなのに、マジか。Shin氏、本気で勝ちにきている。
中村真梨花女流三段は連投である。そしてその左では、熊倉紫野女流初段が指導していた。今日も色白でかわいらしい。
熊倉女流初段は、我が「女流棋士ファンランキング」の3位である。つまりこの10日間で、私はランキングのトップ3を間近で拝見したことになる。トップ10まで範囲を拡げれば、飯野愛女流1級、中倉宏美女流二段、中村桃子女流初段が加わり、6人。まさに眼福で、やはり人は表に出なければいけないと実感した。
ほかは佐藤紳哉七段の姿もあった。今日はフサフサの髪型である。
私も将棋が指したくなって、指導対局を申し込む。4時台のである。棋士は誰に当たるか分からないが、好きな番号を引けるようにはなっている。
熊倉女流初段を見ると、対局者は「3ーA」などのカードを机に置いていた。
ということは、熊倉女流初段が「3」となるが、それが次回の対局でも通用するか分からない。とはいえ、「3」の付箋を選んでみた。
トークショーでは、宏美女流二段と福山千沙さんが乱入し、「しょうぎのくにのだいぼうけん」のPRをしていた。現在LPSAは、この絵本とネコSHOGIバトルを推しているらしい。
再び森内九段らのトークに戻ったが、相変わらず森内九段は言葉少な。
「最近はコンピュータの将棋も強くなってきましたしね」
と語っていたが、そのうち終わってしまった。私はちょっと消化不良だ。
森内九段は十八世名人の有資格者である、武宮九段でも木原氏でも、もう少し森内九段に話を振る配慮があってもよかったと思う。
LPSAのブースでは、小さな女の子が、「しょうぎのくんいのだいぼうけん」のパネルを持っている。
宏美女流二段に聞くと、少女は中倉彰子女流二段の娘さんだそう。彰子女流二段の娘さんがあんなに大きくなるんじゃ、私も頭が薄くなるわけだ。
トーク会場ではガラッと雰囲気が変わり、ミスインターナショナル2017日本代表・筒井菜月さん、バックギャモン世界チャンピオン・矢澤亜希子さん、文壇勝負名人・下平憲治氏によるトークショーが始まった。
菜月さんは長身でスタイルもよく、なにより美しい。さすがにミスインターナショナルである。
亜希子さんはちょっと杏里に似ていて、ミステリアスな雰囲気もある。
下平氏は作家だが私は不勉強で存じ上げない。最後の文壇将棋名人のため、今もそれを名乗っているという。その下平氏の進行でトークは行われた。
菜月さんは幼少時を児童養護施設で過ごし、いろいろな経験をしたらしい。
「私は11歳のころまで、児童館で毎日将棋を指していたんですよ。角がサーッと横に動いて」
……うん? 角が動くのはナナメだと思う。菜月さんはホントに将棋を指してい、た、の、か…?「大きくなってからはシモキタの、いまもあるかな、日高屋で働いてました。その理由は、昼に賄いが出るからなんです」
菜月さんはなかなか庶民的な面があるようだ。だけどその貌は高貴で、マネキンのようだ。
「バックギャモンの競技人口はどれくらいか皆さんご存知ですか」
と下平氏が私たちに問う。ちょっと想像もつかないが、約3億人いるという。そして下平氏自身も、高名なプレーヤーらしい。
亜希子さんは、バックギャモンは素人だったが、外国に武者修行して、2014年に「バックギャモン世界選手権大会」で優勝した。
「私はバックギャモンの最終盤で、勝利確率が5%の時がありました。でも勝利の可能性があるわけですから、負けるとは考えませんでした。それで最後は勝ちました」
さらに菜月さんも語る。
「目標は高いところに置かなければダメです。100点を目指すと70点しか取れません。250点を取るつもりで、やっと100点が取れます」
「コンテストに出る時も、負けることは考えませんでした。1ミリの迷いもなく、勝った後ことをイメージします。こうイメージすることで、周りの空気が変わるように思うんです。脳波が出る、という感じでしょうか」
いいことをイメージすれば勝ちに結びつく、という典型的な例であろう。考え方がポジティヴで、私とは真反対の生き方だ。私などは。勝てばどうとでも言える、とシャに構えてしまうが、ためになる教訓ではある。
下平氏の司会進行は如才なく、これが本職のようだ。その下平氏も、国内有数のバックギャモンのプレイヤーだという。
「『謙遜は悪』ですね。日本人は褒められても否定しますが、よくありません。私も周りから、綺麗ですね、とよく言われます。私は、ありがとうございます、と素直に返すようにしています。褒め言葉には『ありがとう』です」
と菜月さんは言った。
ミスインターナショナルの世界大会は10月に行われるという。
「歴代のミスインターナショナルの優勝者はタイプが違います。圧倒的なオーラがあります。生きてきたものがふわーっと出るのがオーラです。
時代の流れに合っているかどうか。いろいろ考えながら頑張ります」
その瞳には力強い光が宿っていた。
(つづく)