一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第10回世田谷花みず木女流オープン戦(3)

2017-05-19 00:54:23 | 将棋イベント

参考1図から△5七飛成!(参考2図)が強手。以下▲5七同銀△8八角成▲同玉△5五角▲7七角△2八角成となれば、陣形の差で後手有利、が森下卓九段説だった。


第1図以下の指し手。△6四歩▲3五歩△同歩▲同飛△6三銀▲3七桂△7二金▲3六飛△6五歩▲7七銀△7四歩▲5八金右△7三桂▲4五桂△4四角▲5五歩△3三歩▲6八金寄△6二角(第2図)

▲3五同飛に、森下九段は中座飛車の話を始めた。「昔▲2五飛を見た時は、下がる場所を間違えたのかと思いました」
さらに現代将棋の感覚へと進む。
「もう、5年前と将棋が全然違うんですね」
「(私は)昭和の将棋なので」
と中井広恵女流六段が応じる。
「昔は、午前中はのんびりしていました。21世紀は気が付いたら斬られているという将棋です。序盤の重要性が年々増しています」
▲3七桂△7二金。
中井女流六段「塚田さんは、人に(将棋を)見られていると燃えるタイプらしいです」
森下九段「それはプロ向きです」
話はアマプロ角落ち戦の話に変わる。森下九段は2003年にアマと指すことになり、相手の将棋を調べたという。
そこから今の若手の話に転じる。「昔はちょっと睨むとビビった後輩がいましたが、今は(将棋においても)恐がらないんですね」
と森下九段。
△6五歩▲7七銀。後手は銀を引かせて気持ちがいいが「伸び過ぎになる可能性もある」と森下九段。再びこぼれ話に戻る。
「米長先生が名人戦に挑戦していた時です。師匠の佐瀬勇次先生が検討をしていた。でも米長は大丈夫かとハラハラしどうしなんですね。
それを見ていた芹沢先生が、『大丈夫だよ佐瀬さん、アンタが指してるんじゃないんだから』。昔の先輩はおもしろい人が多かった」
塚田恵梨花女流2級は思い切って▲4五桂と跳んだ。飯野女流1級は△4四角。
森下九段「女流棋士はよく勉強しています。室谷さん(由紀女流二段)の知識にはビックリしました」
▲5五歩に、飯野女流1級は秒読みに入った。そして△3三歩。角が2二にいる場合は問題だが、この場合はいい、と森下九段。硬軟織り交ぜて、実に分かりやすい解説だ。
▲6八金寄に△6二角と引いて、次の狙いは△4四歩からの桂取り。それが実現する前に、塚田女流2級は動く必要に迫られた。

第2図以下の指し手。▲6六歩△同歩▲同銀△4四歩▲7七桂△4五歩▲同銀△8四桂▲6七金△4二銀▲9六歩△4三銀▲8六歩△6五歩▲同桂△同桂▲同銀△6四歩▲5四銀左(途中図)

△同銀左▲同歩△6五銀▲5五桂△5四銀引▲6三桂成△同銀(第3図)

▲6六歩に、森下九段が「なるほど」と唸った。ただし森下九段は「なるほど」を大安売りするので、話半分で聞かなければならない。
▲7七桂には、「ハァー!! 昔の塚田先生を思わせる一着です」。
△4五歩から戦いが始まったが、塚田女流2級はその最中に▲9六歩。
森下九段「ほー▲9六歩。これはお母さんゆずりですね」
中井女流六段「お父さんとお母さんのいいところを譲り受けましたね」
さらに▲8六歩! 今度は塚田女流2級が桂を取りに行った。飯野女流1級はグズグズできない。△6五歩と決戦だ。
△6四歩の銀取りに、引くようではオンナではない。塚田女流2級は強く▲5四銀左(途中図)と出た。中央で銀4枚がぶつかって、ガシャンと音が鳴った。
森下九段「塚田流ですね」
飯野女流1級の△6五銀には、「いかにも振り飛車党の手」と評する。
▲5五桂△5四銀引の応酬に中井女流六段は
「昭和の将棋、ねじり合いです」
と言った。

第3図以下の指し手。▲8五歩△5五桂▲6八金引△4一飛▲8四歩△4五飛▲8三歩成△同金▲5六銀△2五飛▲2六歩△2四飛▲5五銀△8六歩▲6六角△5四歩▲9五桂△5五歩▲8三桂成△同玉▲8四歩△7二玉▲5五角△4五銀▲6六飛△5四飛▲5六歩(第4図)

塚田女流2級、ついに▲8五歩。森下九段「前に指した手を活かす手です」
今度は飯野女流1級が△5五桂と打ち、△4一飛と活用した。以下駒を取り合い▲8三歩成。森下九段「ここはお父さんで行きました」。これは後手から△8六歩の反撃もあるので、微妙なところだ。ちなみに「お母さん」なら穏やかに▲4六歩か。
数手進んで△5四歩の銀取りに、構わず▲9五桂。森下九段「これがうるさい攻めです」。
両対局者は再び駒を取り合い、▲5六歩。

第4図以下の指し手。△8四角▲7五桂△同歩▲8五銀△7四桂▲6七飛△5六銀▲8四銀△5五飛▲8八歩△6七銀成▲同金(第5図)

ここで飯野女流1級は△8四角と飛びだした。
「なるほど!」
と森下九段が感嘆する。「この歩が取れたんですね。忘れてました」
塚田女流2級は▲7五桂の犠打で一手凌ぐが、その桂で再び飛車取りに打たれてしまった。
塚田女流2級は▲6七飛と辛抱するが△5五飛と角を取られ、飛車取りが残っているうえ、今度は△8七角が生じている。
塚田女流2級は根性の▲8八歩だが、森下九段は「ベテランはこの気力がないんですよ」と感心した。
△6七銀成▲同金と飛車を入手して、飯野女流1級の次の一手は。

(つづく)
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