初手からの指し手。▲2六歩△8四歩▲7六歩△3二金▲2五歩△8五歩▲7八金△7二銀▲3八銀△1四歩▲1六歩△7四歩▲5八玉△7三銀(第1図)
私は本局も立ち見である。決勝戦だけあって、ギャラリーも準決勝の時より多い。
解説は島朗九段、聞き手は鈴木環那女流二段の黄金コンビだ。
鈴木女流二段「塚田さんは清楚でみんなからかわいがられています」
島九段「お父さんの塚田九段とは青山学院中等部からの付きあいになります」
将棋は相掛かり系になった。渡部女流初段は△1四歩から△7四歩。「序盤が新しいですね」と島九段。「よく研究しています」
島九段「ところで女流棋士がきものを着る時ってどうなんでしょうか」
鈴木女流二段「和服を着ると、心も体も熱くなります」
渡部女流初段は8筋の歩交換を保留して△7三銀。これが用意の作戦だったか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0e/90c31d351966fa16316cfc11c7ac833e.png)
第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛△6四銀▲3六歩△3四歩▲2二角成△同銀▲8八銀△4二玉▲9六歩△7五歩▲3五歩(第2図)
鈴木女流二段は「渡部さんとは研究会でお世話になったことがありますが、さわやかです」と続けた。
先手は飛車先の歩を交換したが、まだ戦いは始まっていないので、花みず木女流オープン戦のこぼれ話に移る。
第1回は8人のトーナメントだったらしい。
島九段「第1回は世田谷区民会館で行われました。当時は里見香奈さんと加藤桃子さんのカードもありました」
また並行して行われた小学生と中学生竜王戦の予選は、原っぱで行われたという。雨が降ったらどう対処するつもりだったのだろう。
局面は角を換わり、△7五歩▲3五歩の攻め合い。ここで渡部女流初段が長考に入った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/d1/18267954351d96d1f4ecc87679527bf6.png)
第2図以下の指し手。△4四角▲7五歩△同銀▲5六飛△3三銀▲4五角△5二金▲3四歩△2四銀▲2五歩△3五銀▲7七銀△7二飛▲7六歩△6四銀(第3図)
両対局者は盤にのめりこむように考え、まさに盤上没我である。
渡部女流初段は△4四角と打つ。ここで塚田女流2級が先に秒読みに入った。ここから一手30秒はつらい。塚田女流2級は▲7五歩と戻し、▲5六飛と回った。
島九段「この手はお父さん好みですね」
続けて渡部女流初段も秒読みに入った。しかし手数は30手そこそこである。ここから先、私だったら一手30秒ではとても指せない。
△3三銀に、塚田女流2級はビシッと▲4五角。▲3四歩の取り込みと▲6三角成を見た手で、私もこれが第一感だった。島九段は「本局の命運を賭けた手。若々しい手です」と評した。
△5二金には▲3四歩と取り込み△2四銀に▲2五歩だが、渡部女流初段は△3五銀と出て、むしろこの銀が威張ってきた感じだ。
塚田女流2級は▲7七銀と壁銀を解消するが、△7二飛▲7六歩に△6四銀と引かれ、次の△5五銀(飛車取り)が先手は受けにくい。こうなると先の▲2五歩△3五銀の交換がどうだったのだろう。その前に▲4五角の利きもいまひとつで、ないほうがよい。ここに至って、先ほどの島九段の「若々しい手」が、必ずしも褒め言葉でないことが分かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/3d/e628fd55e155bfe41c1fe16be13b4a34.png)
第3図以下の指し手。▲6六歩△5五銀▲6八玉△5六銀▲同角△8二飛▲3七銀△3六歩▲4六銀△2八飛▲3八銀△2五飛成▲7五歩△2八竜▲7四歩△7二歩▲9五歩△1九竜▲9四歩(第4図)
島九段「渡部さんの将棋は持ち玉が多いですね」
第3図では先手の飛車が苦しいが、助かりそうもない。塚田女流2級は▲6六歩だが、△5五銀で飛車が詰んだ。塚田女流2級は▲6八玉と寄るが、その手に力がなかった。
渡部女流初段は△2八飛から△2五飛成と返り、盤石の態勢。塚田女流2級の▲7五歩は冴えないが、ほかに手もない。大盤では、両対局者はフットサル部に入っています、という話題になるが、もう解説陣は渡部勝ち、と結論づけているように思えた。
▲7四歩に△7二歩。「これはやらないと思ったんですけどねぇ」と島九段が唸った。勝ちになったら逃しません、という渡部女流初段の声が聞こえてくるようではないか。
塚田女流2級は▲9五歩。私だったらバカバカしくて投げているところだ。
さらに▲9四歩と突いたが…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/5a/92045762c3214ffe0b8894f7dda44a36.png)
第4図以下の指し手。△5四香▲6五角△9四歩▲6七金△6四歩▲3五銀△同角▲7三歩成△同歩▲8三銀△6五歩▲8二銀不成△6六歩▲同銀(第5図)
渡部女流初段は△5四香と角をいじめる。この角を取れば、自然に先手玉が見えてくる。
お互い飛車を取り合って渡部女流初段は△6六歩と取り込む。
これは▲同銀で、手順に5七の地点が厚くなるから損な手に見えたが…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/3d/22f3c619f445809ade50f697c15c82a3.png)
(つづく)
私は本局も立ち見である。決勝戦だけあって、ギャラリーも準決勝の時より多い。
解説は島朗九段、聞き手は鈴木環那女流二段の黄金コンビだ。
鈴木女流二段「塚田さんは清楚でみんなからかわいがられています」
島九段「お父さんの塚田九段とは青山学院中等部からの付きあいになります」
将棋は相掛かり系になった。渡部女流初段は△1四歩から△7四歩。「序盤が新しいですね」と島九段。「よく研究しています」
島九段「ところで女流棋士がきものを着る時ってどうなんでしょうか」
鈴木女流二段「和服を着ると、心も体も熱くなります」
渡部女流初段は8筋の歩交換を保留して△7三銀。これが用意の作戦だったか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/0e/90c31d351966fa16316cfc11c7ac833e.png)
第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛△6四銀▲3六歩△3四歩▲2二角成△同銀▲8八銀△4二玉▲9六歩△7五歩▲3五歩(第2図)
鈴木女流二段は「渡部さんとは研究会でお世話になったことがありますが、さわやかです」と続けた。
先手は飛車先の歩を交換したが、まだ戦いは始まっていないので、花みず木女流オープン戦のこぼれ話に移る。
第1回は8人のトーナメントだったらしい。
島九段「第1回は世田谷区民会館で行われました。当時は里見香奈さんと加藤桃子さんのカードもありました」
また並行して行われた小学生と中学生竜王戦の予選は、原っぱで行われたという。雨が降ったらどう対処するつもりだったのだろう。
局面は角を換わり、△7五歩▲3五歩の攻め合い。ここで渡部女流初段が長考に入った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/d1/18267954351d96d1f4ecc87679527bf6.png)
第2図以下の指し手。△4四角▲7五歩△同銀▲5六飛△3三銀▲4五角△5二金▲3四歩△2四銀▲2五歩△3五銀▲7七銀△7二飛▲7六歩△6四銀(第3図)
両対局者は盤にのめりこむように考え、まさに盤上没我である。
渡部女流初段は△4四角と打つ。ここで塚田女流2級が先に秒読みに入った。ここから一手30秒はつらい。塚田女流2級は▲7五歩と戻し、▲5六飛と回った。
島九段「この手はお父さん好みですね」
続けて渡部女流初段も秒読みに入った。しかし手数は30手そこそこである。ここから先、私だったら一手30秒ではとても指せない。
△3三銀に、塚田女流2級はビシッと▲4五角。▲3四歩の取り込みと▲6三角成を見た手で、私もこれが第一感だった。島九段は「本局の命運を賭けた手。若々しい手です」と評した。
△5二金には▲3四歩と取り込み△2四銀に▲2五歩だが、渡部女流初段は△3五銀と出て、むしろこの銀が威張ってきた感じだ。
塚田女流2級は▲7七銀と壁銀を解消するが、△7二飛▲7六歩に△6四銀と引かれ、次の△5五銀(飛車取り)が先手は受けにくい。こうなると先の▲2五歩△3五銀の交換がどうだったのだろう。その前に▲4五角の利きもいまひとつで、ないほうがよい。ここに至って、先ほどの島九段の「若々しい手」が、必ずしも褒め言葉でないことが分かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/3d/e628fd55e155bfe41c1fe16be13b4a34.png)
第3図以下の指し手。▲6六歩△5五銀▲6八玉△5六銀▲同角△8二飛▲3七銀△3六歩▲4六銀△2八飛▲3八銀△2五飛成▲7五歩△2八竜▲7四歩△7二歩▲9五歩△1九竜▲9四歩(第4図)
島九段「渡部さんの将棋は持ち玉が多いですね」
第3図では先手の飛車が苦しいが、助かりそうもない。塚田女流2級は▲6六歩だが、△5五銀で飛車が詰んだ。塚田女流2級は▲6八玉と寄るが、その手に力がなかった。
渡部女流初段は△2八飛から△2五飛成と返り、盤石の態勢。塚田女流2級の▲7五歩は冴えないが、ほかに手もない。大盤では、両対局者はフットサル部に入っています、という話題になるが、もう解説陣は渡部勝ち、と結論づけているように思えた。
▲7四歩に△7二歩。「これはやらないと思ったんですけどねぇ」と島九段が唸った。勝ちになったら逃しません、という渡部女流初段の声が聞こえてくるようではないか。
塚田女流2級は▲9五歩。私だったらバカバカしくて投げているところだ。
さらに▲9四歩と突いたが…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/5a/92045762c3214ffe0b8894f7dda44a36.png)
第4図以下の指し手。△5四香▲6五角△9四歩▲6七金△6四歩▲3五銀△同角▲7三歩成△同歩▲8三銀△6五歩▲8二銀不成△6六歩▲同銀(第5図)
渡部女流初段は△5四香と角をいじめる。この角を取れば、自然に先手玉が見えてくる。
お互い飛車を取り合って渡部女流初段は△6六歩と取り込む。
これは▲同銀で、手順に5七の地点が厚くなるから損な手に見えたが…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/3d/22f3c619f445809ade50f697c15c82a3.png)
(つづく)