
第5図以下の指し手。△6五歩▲同銀△6六歩▲同金△5七角成▲7七玉△6八角▲7六玉△6六馬▲同玉△5七角成▲7七玉△6七銀▲7九歩(途中図)

△6四歩▲同銀△6八馬▲6六玉△6五歩▲同玉△5六銀不成(投了図)
まで、98手で渡部女流初段の勝ち。
渡部愛女流初段は△6五歩~△6六歩と手筋の歩。▲同金に△5七角成で寄せに入った。
▲7七玉には△6六馬▲同玉△8八角(島朗九段)の寄せもあったが、渡部女流初段は△6八角から△6六馬と切った。
以下再び馬を作って、△6七銀。島九段「シャープな寄せですね」。
塚田恵梨花女流2級は詰めろを防いで▲7九歩(途中図)だが、私には浮かばない手だ。
渡部女流初段は△6四歩。さらに最後の1歩を使って△5六銀不成。ここで塚田女流2級が投了した。

渡部女流初段、優勝なる! LPSA棋戦以外での優勝の瞬間を初めて見た。
大盤での感想戦に入る。島九段は「塚田さんの▲4五角は若さが出ましたかね」。
私の第一感が敗着とは、穴があったら入りたい気分だった。
塚田女流2級は「家に帰って怒られてしまう」
渡部女流初段は「優勝できてうれしいです」
のコメントだった。
両対局者が退場したあと、再び渡部女流初段が登場し表彰式である。
その渡部女流初段が、登壇する時コケた。渡部女流初段はよく転ぶらしいが、ナマで初めて見た。
渡部女流初段には日本将棋連盟から表彰状が渡され、花束も手にして感無量の表情だ。
そのまま1分間の撮影タイムとなった。今回は撮影者が少なかったのだが、それはそれで却って撮影しにくく、結果、またヘンな写真になってしまった。

例年ならこれですべてのプログラムの終了だが、今回は中村真梨花女流三段、鈴木環那女流二段、飯野愛女流1級による「花みず木女流オープン戦第10回記念・トークショー」があるのだ。
3人が拍手をもって迎えられた。まず中村女流三段は、朝から子供竜王戦の審判に出ていたという。
以下は中村アナウンサーの問いに3女流棋士が答えるという形である。
中村アナ「決勝戦で和服を着るというのはどういう気持ちになるのでしょうか」
鈴木女流二段「和服を着られるのは幸せなこと。タイトル戦に出なければ、ふつうは着られませんから。花みず木で夢が叶いました」
飯野女流1級は研修会員時代からこの棋戦に皆勤である。飯野女流1級「第1回は、東急将棋まつりの一環で行われました」
中村女流三段「花みず木で優勝することで、ワンランク上がる気がします」
中村アナ「対局者で出るのと聞き手で出るのと、どちらがいいでしょう」
鈴木女流二段「もちろん聞き手です。(席上の対局者になると)心臓が口から出る緊張感があります」
個人的には、これはウソだと信じたい。鈴木女流二段は聞き手よりも対局者で出たいはずだ。もちろん私も鈴木女流二段の対局姿を見たいし、鈴木女流二段もファンへの見せ方を心得ている。これは私がかつてマイナビ女子オープンの一斉公開対局を拝見した時にビビビと感じたものである。
中村アナ「対局中は解説の声は聞こえるものでしょうか」
飯野女流1級「序盤は聞き入ってしまうこともあります」
鈴木女流二段「解説は途中から聞こえなくなります。何年か前の決勝戦の時は、玉川高島屋で指していることを忘れました」
中村女流三段「私も、中盤以降はまったく解説が聞こえなくなります」
私はもっと解説の声が聞こえると思ったが、杞憂だったようだ。
中村アナ「今後の抱負をお願いします」
鈴木女流二段「東京オリンピックまでに英語で将棋を教えたい…と思ったのが3年前です。まだ目標は達成していないので、がんばります」
中村アナ「今年度の目標を教えてください」
飯野女流1級「女流初段になることです。あと、ひとりでも多くの人に将棋を伝えていけたらと思います」
鈴木女流二段「将棋にまっすぐに向き合っていくことです。前向きにがんばっていきたい。
子供たちへの普及をがんばっていきます」
中村女流三段「昨年度は30対局にわずかに届きませんでした。今年度は30対局に届くようにがんばります。
女性への普及もがんばっていきたい」
対局はもちろんだが、女性や子供への普及に努める、という目標が多かった。
以上で今回の花みず木女流オープン戦および子供竜王戦は、すべてのプログラムを終了した。
プロの将棋を間近で見られる棋戦は少なく、花みず木女流オープン戦の存在意義は大きい。
来年の自分を想像すると恐ろしいが、来年私がここに戻ってこられるよう、この棋戦がいつまでも続くことを願ってやまない。
…というわけで、私は気持ちよく帰るつもりだったが、Kaz氏はグズグズしている。
「もう帰っちゃうんですか?」
「え? 帰るよ」
「ワタシ将棋盤と駒、持ってきてるんですよ。どこかで指せないかと思って」
Kaz氏、盤駒を持ってきたって…。何たる将棋バカか。
「指すってどこで指すんだよ。オレやだよ」
「ブログネタが増えますよ」
「ブログネタはいいよ、天童旅行記だってまだ続いてるし、今日のイベントも書かなきゃいけないし、冬の北海道旅行記もまだ残ってるし、来週は九州に行くかもしれないし…。それにもうこのブログ続かないよ。職探しでそれどころじゃなくなるよ」
Kaz氏は不満顔だが、こっちも失職寸前で、もう将棋を指す気力がないのだ。「そうだひとつブログネタを教えます。今夜アップ(4月30日分)の記事は期待していいよ。ことによったら批判が集まるかもしれない。あってもオレは無視するけど」
Kaz氏とは二子玉川のホームまでいっしょに向かった。Kaz氏は大井町線の利用らしいが、快速を待つため、入線していた普通列車には乗らなかった。
私は田園都市線に乗り彼と別れたのだが、これが普通列車だった。途中の駅で、あとから来る快速列車の通過待ちを余儀なくされた。
この選択の差が、Kaz氏と私の人生の差でもある。
(おわり)