一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第10回世田谷花みず木女流オープン戦(6)

2017-05-22 00:17:01 | 将棋イベント

第5図以下の指し手。△6五歩▲同銀△6六歩▲同金△5七角成▲7七玉△6八角▲7六玉△6六馬▲同玉△5七角成▲7七玉△6七銀▲7九歩(途中図)

△6四歩▲同銀△6八馬▲6六玉△6五歩▲同玉△5六銀不成(投了図)
まで、98手で渡部女流初段の勝ち。

渡部愛女流初段は△6五歩~△6六歩と手筋の歩。▲同金に△5七角成で寄せに入った。
▲7七玉には△6六馬▲同玉△8八角(島朗九段)の寄せもあったが、渡部女流初段は△6八角から△6六馬と切った。
以下再び馬を作って、△6七銀。島九段「シャープな寄せですね」。
塚田恵梨花女流2級は詰めろを防いで▲7九歩(途中図)だが、私には浮かばない手だ。
渡部女流初段は△6四歩。さらに最後の1歩を使って△5六銀不成。ここで塚田女流2級が投了した。

渡部女流初段、優勝なる! LPSA棋戦以外での優勝の瞬間を初めて見た。
大盤での感想戦に入る。島九段は「塚田さんの▲4五角は若さが出ましたかね」。
私の第一感が敗着とは、穴があったら入りたい気分だった。
塚田女流2級は「家に帰って怒られてしまう」
渡部女流初段は「優勝できてうれしいです」
のコメントだった。

両対局者が退場したあと、再び渡部女流初段が登場し表彰式である。
その渡部女流初段が、登壇する時コケた。渡部女流初段はよく転ぶらしいが、ナマで初めて見た。
渡部女流初段には日本将棋連盟から表彰状が渡され、花束も手にして感無量の表情だ。
そのまま1分間の撮影タイムとなった。今回は撮影者が少なかったのだが、それはそれで却って撮影しにくく、結果、またヘンな写真になってしまった。



例年ならこれですべてのプログラムの終了だが、今回は中村真梨花女流三段、鈴木環那女流二段、飯野愛女流1級による「花みず木女流オープン戦第10回記念・トークショー」があるのだ。
3人が拍手をもって迎えられた。まず中村女流三段は、朝から子供竜王戦の審判に出ていたという。
以下は中村アナウンサーの問いに3女流棋士が答えるという形である。
中村アナ「決勝戦で和服を着るというのはどういう気持ちになるのでしょうか」
鈴木女流二段「和服を着られるのは幸せなこと。タイトル戦に出なければ、ふつうは着られませんから。花みず木で夢が叶いました」
飯野女流1級は研修会員時代からこの棋戦に皆勤である。飯野女流1級「第1回は、東急将棋まつりの一環で行われました」
中村女流三段「花みず木で優勝することで、ワンランク上がる気がします」
中村アナ「対局者で出るのと聞き手で出るのと、どちらがいいでしょう」
鈴木女流二段「もちろん聞き手です。(席上の対局者になると)心臓が口から出る緊張感があります」
個人的には、これはウソだと信じたい。鈴木女流二段は聞き手よりも対局者で出たいはずだ。もちろん私も鈴木女流二段の対局姿を見たいし、鈴木女流二段もファンへの見せ方を心得ている。これは私がかつてマイナビ女子オープンの一斉公開対局を拝見した時にビビビと感じたものである。
中村アナ「対局中は解説の声は聞こえるものでしょうか」
飯野女流1級「序盤は聞き入ってしまうこともあります」
鈴木女流二段「解説は途中から聞こえなくなります。何年か前の決勝戦の時は、玉川高島屋で指していることを忘れました」
中村女流三段「私も、中盤以降はまったく解説が聞こえなくなります」
私はもっと解説の声が聞こえると思ったが、杞憂だったようだ。
中村アナ「今後の抱負をお願いします」
鈴木女流二段「東京オリンピックまでに英語で将棋を教えたい…と思ったのが3年前です。まだ目標は達成していないので、がんばります」
中村アナ「今年度の目標を教えてください」
飯野女流1級「女流初段になることです。あと、ひとりでも多くの人に将棋を伝えていけたらと思います」
鈴木女流二段「将棋にまっすぐに向き合っていくことです。前向きにがんばっていきたい。
子供たちへの普及をがんばっていきます」
中村女流三段「昨年度は30対局にわずかに届きませんでした。今年度は30対局に届くようにがんばります。
女性への普及もがんばっていきたい」
対局はもちろんだが、女性や子供への普及に努める、という目標が多かった。

以上で今回の花みず木女流オープン戦および子供竜王戦は、すべてのプログラムを終了した。
プロの将棋を間近で見られる棋戦は少なく、花みず木女流オープン戦の存在意義は大きい。
来年の自分を想像すると恐ろしいが、来年私がここに戻ってこられるよう、この棋戦がいつまでも続くことを願ってやまない。

…というわけで、私は気持ちよく帰るつもりだったが、Kaz氏はグズグズしている。
「もう帰っちゃうんですか?」
「え? 帰るよ」
「ワタシ将棋盤と駒、持ってきてるんですよ。どこかで指せないかと思って」
Kaz氏、盤駒を持ってきたって…。何たる将棋バカか。
「指すってどこで指すんだよ。オレやだよ」
「ブログネタが増えますよ」
「ブログネタはいいよ、天童旅行記だってまだ続いてるし、今日のイベントも書かなきゃいけないし、冬の北海道旅行記もまだ残ってるし、来週は九州に行くかもしれないし…。それにもうこのブログ続かないよ。職探しでそれどころじゃなくなるよ」
Kaz氏は不満顔だが、こっちも失職寸前で、もう将棋を指す気力がないのだ。「そうだひとつブログネタを教えます。今夜アップ(4月30日分)の記事は期待していいよ。ことによったら批判が集まるかもしれない。あってもオレは無視するけど」
Kaz氏とは二子玉川のホームまでいっしょに向かった。Kaz氏は大井町線の利用らしいが、快速を待つため、入線していた普通列車には乗らなかった。
私は田園都市線に乗り彼と別れたのだが、これが普通列車だった。途中の駅で、あとから来る快速列車の通過待ちを余儀なくされた。
この選択の差が、Kaz氏と私の人生の差でもある。
(おわり)
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第10回世田谷花みず木女流オープン戦(5)

2017-05-21 01:35:09 | 将棋イベント
初手からの指し手。▲2六歩△8四歩▲7六歩△3二金▲2五歩△8五歩▲7八金△7二銀▲3八銀△1四歩▲1六歩△7四歩▲5八玉△7三銀(第1図)

私は本局も立ち見である。決勝戦だけあって、ギャラリーも準決勝の時より多い。
解説は島朗九段、聞き手は鈴木環那女流二段の黄金コンビだ。
鈴木女流二段「塚田さんは清楚でみんなからかわいがられています」
島九段「お父さんの塚田九段とは青山学院中等部からの付きあいになります」
将棋は相掛かり系になった。渡部女流初段は△1四歩から△7四歩。「序盤が新しいですね」と島九段。「よく研究しています」
島九段「ところで女流棋士がきものを着る時ってどうなんでしょうか」
鈴木女流二段「和服を着ると、心も体も熱くなります」
渡部女流初段は8筋の歩交換を保留して△7三銀。これが用意の作戦だったか。

第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛△6四銀▲3六歩△3四歩▲2二角成△同銀▲8八銀△4二玉▲9六歩△7五歩▲3五歩(第2図)

鈴木女流二段は「渡部さんとは研究会でお世話になったことがありますが、さわやかです」と続けた。
先手は飛車先の歩を交換したが、まだ戦いは始まっていないので、花みず木女流オープン戦のこぼれ話に移る。
第1回は8人のトーナメントだったらしい。
島九段「第1回は世田谷区民会館で行われました。当時は里見香奈さんと加藤桃子さんのカードもありました」
また並行して行われた小学生と中学生竜王戦の予選は、原っぱで行われたという。雨が降ったらどう対処するつもりだったのだろう。
局面は角を換わり、△7五歩▲3五歩の攻め合い。ここで渡部女流初段が長考に入った。

第2図以下の指し手。△4四角▲7五歩△同銀▲5六飛△3三銀▲4五角△5二金▲3四歩△2四銀▲2五歩△3五銀▲7七銀△7二飛▲7六歩△6四銀(第3図)

両対局者は盤にのめりこむように考え、まさに盤上没我である。
渡部女流初段は△4四角と打つ。ここで塚田女流2級が先に秒読みに入った。ここから一手30秒はつらい。塚田女流2級は▲7五歩と戻し、▲5六飛と回った。
島九段「この手はお父さん好みですね」
続けて渡部女流初段も秒読みに入った。しかし手数は30手そこそこである。ここから先、私だったら一手30秒ではとても指せない。
△3三銀に、塚田女流2級はビシッと▲4五角。▲3四歩の取り込みと▲6三角成を見た手で、私もこれが第一感だった。島九段は「本局の命運を賭けた手。若々しい手です」と評した。
△5二金には▲3四歩と取り込み△2四銀に▲2五歩だが、渡部女流初段は△3五銀と出て、むしろこの銀が威張ってきた感じだ。
塚田女流2級は▲7七銀と壁銀を解消するが、△7二飛▲7六歩に△6四銀と引かれ、次の△5五銀(飛車取り)が先手は受けにくい。こうなると先の▲2五歩△3五銀の交換がどうだったのだろう。その前に▲4五角の利きもいまひとつで、ないほうがよい。ここに至って、先ほどの島九段の「若々しい手」が、必ずしも褒め言葉でないことが分かった。

第3図以下の指し手。▲6六歩△5五銀▲6八玉△5六銀▲同角△8二飛▲3七銀△3六歩▲4六銀△2八飛▲3八銀△2五飛成▲7五歩△2八竜▲7四歩△7二歩▲9五歩△1九竜▲9四歩(第4図)

島九段「渡部さんの将棋は持ち玉が多いですね」
第3図では先手の飛車が苦しいが、助かりそうもない。塚田女流2級は▲6六歩だが、△5五銀で飛車が詰んだ。塚田女流2級は▲6八玉と寄るが、その手に力がなかった。
渡部女流初段は△2八飛から△2五飛成と返り、盤石の態勢。塚田女流2級の▲7五歩は冴えないが、ほかに手もない。大盤では、両対局者はフットサル部に入っています、という話題になるが、もう解説陣は渡部勝ち、と結論づけているように思えた。
▲7四歩に△7二歩。「これはやらないと思ったんですけどねぇ」と島九段が唸った。勝ちになったら逃しません、という渡部女流初段の声が聞こえてくるようではないか。
塚田女流2級は▲9五歩。私だったらバカバカしくて投げているところだ。
さらに▲9四歩と突いたが…。

第4図以下の指し手。△5四香▲6五角△9四歩▲6七金△6四歩▲3五銀△同角▲7三歩成△同歩▲8三銀△6五歩▲8二銀不成△6六歩▲同銀(第5図)

渡部女流初段は△5四香と角をいじめる。この角を取れば、自然に先手玉が見えてくる。
お互い飛車を取り合って渡部女流初段は△6六歩と取り込む。
これは▲同銀で、手順に5七の地点が厚くなるから損な手に見えたが…。

(つづく)
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第10回世田谷花みず木女流オープン戦(4)

2017-05-20 00:38:27 | 将棋イベント

第5図以下の指し手。△8七銀▲6八玉△3八飛▲5八歩△7三桂▲4四角△5三歩▲5五角△3四角▲4一飛△5二銀▲9一飛成△6三玉▲8二竜△5四玉(第6図)

飯野愛女流1級は歩頭に△8七銀と打ったが、しくじった。森下卓九段の解説によれば、△6六桂打でほぼ詰みだったという。私には形勢がまったく分からなかったが、飯野女流1級がよかったようだ。
塚田恵梨花女流2級は落ち着いて▲6八玉。「ハ、ハーーー」と森下九段が唸った。
飯野女流1級が△7三桂と詰めろを防ぐと、塚田女流2級は駒音高く▲4四角。やむない△5三歩に▲5五角と飛車を取っては、塚田女流2級が逆転したようだ。
▲4一飛△5二銀には▲8三金△6三玉▲7三金△5四玉▲4四飛成以下の詰みがあったが、塚田女流2級は▲9一飛成。飯野女流1級は△6三玉~△5四玉と逃げ越したが…。

第6図以下の指し手。▲5六銀△4四桂▲5七香△7六銀成▲7三竜△6七成銀▲同玉△6三金▲4五銀打△同角▲同銀△同玉▲2七角△3五玉▲2五金(投了図)
まで、141手で塚田女流2級の勝ち。

塚田女流2級は▲5六銀と支える。これが△3四角の利きも遮り、一石二鳥の決め手となった。
△4四桂。「将棋は勝ちと思った瞬間があぶないですよ」と森下九段は注意喚起するが、もう塚田女流2級は逃すまい。▲5七香と支えた。
△6七銀成▲同玉に、中井広恵女流六段が「終わりませんねえ」と苦笑する。しかし決着の時は確実に訪れようとしていた。
塚田女流2級は▲4五銀打から角を取り、▲2五金。これが詰み上がりで、13時07分、飯野女流1級の投了となった。
大盤解説に入る。森下九段「△8七銀では△6六桂打で詰んでいたと思います」
塚田女流2級「序盤から難しい将棋で、秒読みに入ってしまって…」
飯野女流1級「残念でした。詰みを逃すところが自分らしいかな、と」
飯野女流1級、またも決勝進出ならず。ここ数年は優勝にかすりもしないが、私はまだ応援を続けていいのだろうか。

さて、昼食である。私はいつもの中華料理屋でタンメンを食すつもりだが、Kaz氏がお伴するという。私も首をタテに振るよりない。
いつもの通りに出ると、例によって花みず木イベントをやっていた。ちょっと覗いていきたいが、今年は単独行動はできないので、先を急ぐ。
しかし「龍園」はまだ先だ。
「ずいぶん長いっスね」
とKaz氏。「(大沢さんは)こんなに長い距離を歩いてたんですか?」
歩くも何も、食事処を探していたら、いつの間にか距離を稼いでしまったのだ。
龍園に入る。私は例によってタンメンを注文するが、値段が750円になっていた。
Kaz氏はチャーハンに餃子を頼んだが、餃子は6ヶ470円で、私には注文する勇気はなかった。
私のタンメンは美味かったが、Kaz氏の餃子は費用対効果がわるかったようだ。「家庭の味のように思いました」

玉川高島屋S・Cに戻ると、小学生竜王戦の決勝戦をやっていた。
近くに中井女流六段がいたので、挨拶する。高野秀行六段もいたので、「いつも観戦記を読んでいます」と挨拶した。言われた高野六段は怪訝な顔をしていたが、まあ、そうなるだろう。
小学生竜王戦は高学年の部、相掛かり系の将棋になっていた。解説は森下九段、聞き手は上田初美女流三段だった。

局面は、堀君(5年生)の▲8五桂(図)に、上野君(6年生)が△6五桂と跳ね違ったところだった。以下、上野君の攻めが鮮やかに決まり、76手まで勝利。
感想戦では「堀君は△7六歩が来る前に▲5六角と飛車取りに打つのがよかった」と、森下九段のアドバイスだった。
勝利インタビューで上野君は「うれしいです。あと、(対局時の)姿勢が疲れます」と観客を笑わせていた。
続いて中学生竜王戦の決勝戦。対局者は桐山君(3年生)と中山君(2年生)。桐山君は何と3年連続の決勝戦進出。過去2回はいずれも準優勝で、今回は悲願の初優勝を狙う。
解説は島朗九段、聞き手は中井女流六段である。
ふたりは同じ中学校だという。中山君の先手で▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀から、相居飛車の将棋となった。島九段は「昭和の香りがしますね」と感慨深げだ。
ちなみに今年の竜王戦参加者は過去最高だったとのこと。これも島九段を始め、世田谷区在住の将棋関係者の普及の賜物といえる。
島九段「最近は将棋教室も多くなりました」
あす4月30日も世田谷で将棋イベントがあるが、いま勢いがあるのが世田谷区である。
将棋は桐山君が腰掛け銀から左美濃と組む。昭和から21世紀の布陣に移った感じだ。中山君は雁木でがんばったが、桐山君の攻めが鋭い。中山君も攻め合ったが桐山君の攻めがわずかに上回り、70手まで、桐山君の優勝となった。
桐山君「前回は相手が強かった。今回は優勝できてうれしいです」
中山君「来年がんばります」
どちらも中学生らしいコメントだった。

続いて表彰式。世田谷区と日本将棋連盟から、それぞれ賞状が贈られた。副賞は島九段や鈴木環那女流二段の色紙や扇子で、賞状はともかく、この副賞は私も欲しい。
飯野健二七段講評「飯野です。最近はイイノアイの師匠、父親ですと言わないと通じなくなりました。
小学生低学年の決勝戦は188手。感性そのもののぶつかり合いで、とても清々しい。二転三転しましたが、両方優勝させたいと思いながら見ていました。
高学年の決勝戦は、手数は76手でしたが、ひじょうに内容の濃い一局でした。
中学生の決勝戦は、桐山君が悲願3年目の優勝でした。負けた中山君も立派な対局姿勢でした。
結果よりも経過が大事です。今回の経験をいい思い出として、これからも将棋を続けていただき、新たな第一歩を踏み出してください」
イタガキ世田谷副区長「この大会のますますの発展を祈念いたします」

さて、いよいよ本日のメーンイベント、花みず木女流オープンの決勝戦である。
15時すぎ、両対局者が登場した。恒例のきもの姿である。
渡部愛女流初段はブルー系のきもの、塚田女流2級はピンク系のきものだった。私は服のことはよく分からないが、きものを着られるということがかなりの特典になると思う。
塚田女流2級「前局は逆転勝ちだったので、本局は序盤、中盤気を付けてがんばりたい」
渡部女流初段「きものは何回か来ていますが、馴れません、オホホホホホ。でも和服は身も心も引き締まります」
両対局者とも艶やかで、私はうっとりしてしまう。
…と、島井咲緒里女流二段に声を掛けられた。
「けやきカップの時はごめんなさい。ごあいさつに行こうと思ったんですけど…」
1週間前にも同じセリフで詫びられたので、私は困惑する。
「いえいえ、気にしないでください。……あれっ?先生、けやきカップで対局されてましたっけ」
「……!!!」
島井女流二段が絶句してしまった。
ああそうだった、島井女流二段は中倉宏美女流二段と対局していたのだった。私がつまらぬことを口走り、すっかり気分をわるくされてしまった。

ここで対局者の撮影タイムとなる。私も何枚か撮らせてもらったが、また失敗してしまった。



15時20分、塚田女流2級の先手で、対局が開始された。
(つづく)
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第10回世田谷花みず木女流オープン戦(3)

2017-05-19 00:54:23 | 将棋イベント

参考1図から△5七飛成!(参考2図)が強手。以下▲5七同銀△8八角成▲同玉△5五角▲7七角△2八角成となれば、陣形の差で後手有利、が森下卓九段説だった。


第1図以下の指し手。△6四歩▲3五歩△同歩▲同飛△6三銀▲3七桂△7二金▲3六飛△6五歩▲7七銀△7四歩▲5八金右△7三桂▲4五桂△4四角▲5五歩△3三歩▲6八金寄△6二角(第2図)

▲3五同飛に、森下九段は中座飛車の話を始めた。「昔▲2五飛を見た時は、下がる場所を間違えたのかと思いました」
さらに現代将棋の感覚へと進む。
「もう、5年前と将棋が全然違うんですね」
「(私は)昭和の将棋なので」
と中井広恵女流六段が応じる。
「昔は、午前中はのんびりしていました。21世紀は気が付いたら斬られているという将棋です。序盤の重要性が年々増しています」
▲3七桂△7二金。
中井女流六段「塚田さんは、人に(将棋を)見られていると燃えるタイプらしいです」
森下九段「それはプロ向きです」
話はアマプロ角落ち戦の話に変わる。森下九段は2003年にアマと指すことになり、相手の将棋を調べたという。
そこから今の若手の話に転じる。「昔はちょっと睨むとビビった後輩がいましたが、今は(将棋においても)恐がらないんですね」
と森下九段。
△6五歩▲7七銀。後手は銀を引かせて気持ちがいいが「伸び過ぎになる可能性もある」と森下九段。再びこぼれ話に戻る。
「米長先生が名人戦に挑戦していた時です。師匠の佐瀬勇次先生が検討をしていた。でも米長は大丈夫かとハラハラしどうしなんですね。
それを見ていた芹沢先生が、『大丈夫だよ佐瀬さん、アンタが指してるんじゃないんだから』。昔の先輩はおもしろい人が多かった」
塚田恵梨花女流2級は思い切って▲4五桂と跳んだ。飯野女流1級は△4四角。
森下九段「女流棋士はよく勉強しています。室谷さん(由紀女流二段)の知識にはビックリしました」
▲5五歩に、飯野女流1級は秒読みに入った。そして△3三歩。角が2二にいる場合は問題だが、この場合はいい、と森下九段。硬軟織り交ぜて、実に分かりやすい解説だ。
▲6八金寄に△6二角と引いて、次の狙いは△4四歩からの桂取り。それが実現する前に、塚田女流2級は動く必要に迫られた。

第2図以下の指し手。▲6六歩△同歩▲同銀△4四歩▲7七桂△4五歩▲同銀△8四桂▲6七金△4二銀▲9六歩△4三銀▲8六歩△6五歩▲同桂△同桂▲同銀△6四歩▲5四銀左(途中図)

△同銀左▲同歩△6五銀▲5五桂△5四銀引▲6三桂成△同銀(第3図)

▲6六歩に、森下九段が「なるほど」と唸った。ただし森下九段は「なるほど」を大安売りするので、話半分で聞かなければならない。
▲7七桂には、「ハァー!! 昔の塚田先生を思わせる一着です」。
△4五歩から戦いが始まったが、塚田女流2級はその最中に▲9六歩。
森下九段「ほー▲9六歩。これはお母さんゆずりですね」
中井女流六段「お父さんとお母さんのいいところを譲り受けましたね」
さらに▲8六歩! 今度は塚田女流2級が桂を取りに行った。飯野女流1級はグズグズできない。△6五歩と決戦だ。
△6四歩の銀取りに、引くようではオンナではない。塚田女流2級は強く▲5四銀左(途中図)と出た。中央で銀4枚がぶつかって、ガシャンと音が鳴った。
森下九段「塚田流ですね」
飯野女流1級の△6五銀には、「いかにも振り飛車党の手」と評する。
▲5五桂△5四銀引の応酬に中井女流六段は
「昭和の将棋、ねじり合いです」
と言った。

第3図以下の指し手。▲8五歩△5五桂▲6八金引△4一飛▲8四歩△4五飛▲8三歩成△同金▲5六銀△2五飛▲2六歩△2四飛▲5五銀△8六歩▲6六角△5四歩▲9五桂△5五歩▲8三桂成△同玉▲8四歩△7二玉▲5五角△4五銀▲6六飛△5四飛▲5六歩(第4図)

塚田女流2級、ついに▲8五歩。森下九段「前に指した手を活かす手です」
今度は飯野女流1級が△5五桂と打ち、△4一飛と活用した。以下駒を取り合い▲8三歩成。森下九段「ここはお父さんで行きました」。これは後手から△8六歩の反撃もあるので、微妙なところだ。ちなみに「お母さん」なら穏やかに▲4六歩か。
数手進んで△5四歩の銀取りに、構わず▲9五桂。森下九段「これがうるさい攻めです」。
両対局者は再び駒を取り合い、▲5六歩。

第4図以下の指し手。△8四角▲7五桂△同歩▲8五銀△7四桂▲6七飛△5六銀▲8四銀△5五飛▲8八歩△6七銀成▲同金(第5図)

ここで飯野女流1級は△8四角と飛びだした。
「なるほど!」
と森下九段が感嘆する。「この歩が取れたんですね。忘れてました」
塚田女流2級は▲7五桂の犠打で一手凌ぐが、その桂で再び飛車取りに打たれてしまった。
塚田女流2級は▲6七飛と辛抱するが△5五飛と角を取られ、飛車取りが残っているうえ、今度は△8七角が生じている。
塚田女流2級は根性の▲8八歩だが、森下九段は「ベテランはこの気力がないんですよ」と感心した。
△6七銀成▲同金と飛車を入手して、飯野女流1級の次の一手は。

(つづく)
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第10回世田谷花みず木女流オープン戦(2)

2017-05-18 00:37:09 | 将棋イベント

第3図以下の指し手。△4八歩▲5九金△8六角▲7七歩△同桂不成▲8七歩△7五角▲5一歩成△5八歩▲4八金△同角成▲同玉△5九歩成▲5七玉△5五歩▲同金△5八飛▲6六玉△7五金▲同玉△5五飛成▲7六玉△8九桂成▲6六金△6四桂▲7七玉(第4図)

渡部愛女流初段は△4八歩と手裏剣を飛ばす。これを▲同金は△5九飛だから里見咲紀女流初段は▲5九金とよろけるが、いい辛抱だ。どちらにも私には指せない手で、さすがにプロは違うと思った。
さればと渡部女流初段は△8六角と出て金取り。中村修九段が「ほぉー」と唸った。
以下▲7七歩△同桂不成▲8七歩の進行に、「ほー、いろんな手を指しますね」とさらに感心した。
ただ▲5一歩成△5八歩に、中村九段は▲4一とと勝負したいふうだった。これを△同金なら▲3二銀で、攻守ところを変える。
しかし里見女流初段は▲4八金。やはり受けの棋風なのだ。
渡部女流初段は△同角成と切る。私見だが、守りの金と角の交換は互角だと思う。
▲4八同玉に間髪入れず△5九歩成。後手ペースになったようだ。
△5五歩▲同金と吊り上げて、△5八飛。▲6六玉に△7五金▲同玉として、△5五飛成と▲5五の金を取った。流れるような攻めである。
里見女流初段は▲6六金と打って上を向く。さっきまで前のめりだった姿勢は、すっと伸びていた。何か緊張感が解けたようだった。

第4図以下の指し手。△7六金▲同金△7九成桂▲8八金△7六桂▲6六角△6五金▲5五角△8八桂成▲同玉△7八金▲9八玉△5五金▲8二角△9七金(投了図)
まで、120手で渡部女流初段の勝ち。

第4図から渡部女流初段は△7六金の犠打で竜取りを外し、△7九成桂と金を取って詰めろ。▲5五金を取りに行った時と同じ手筋を披露した。里見女流初段は▲8八金と受けるが、「根性の一手ですね」と上田初美女流三段が感心した。
しかし渡部女流初段の寄せは的確だ。ここも、相手の受け駒をズラせてから取りに行く、という手法で、△5五金まで先手玉は受けなしとなった。以下▲8二角△9七金まで、里見女流初段の投了となった。

両対局者に盛大な拍手が送られ、大盤の前で感想戦となる。
「(里見さんは)背が高いね」と中村九段があらためて驚く。
里見女流初段「最近は攻め過ぎて攻めが切れてしまうことが多かったので、受けに回ろうと思ったんですけど…。終盤はわるくないと思ったんですけど…」
いい将棋を落とした里見女流初段は残念無念の表情だ。
渡部女流初段「攻め合われたらわるかったです」
どうも里見女流初段が渡部女流初段の攻めを面倒見すぎて、どこかで逆転した感じだ。中村九段の解説どおり、どこかで▲4一とと攻め合うべきだったようだ。
かくして、渡部女流初段の2年連続の決勝進出が決まった。

しばらく休憩した後、準決勝の第2局。飯野愛女流1級VS塚田恵梨花女流2級戦である。
飯野女流1級はこの棋戦の常連だが、いまだに優勝がない。けやきカップの宏美女流二段同様、ファンの期待を裏切り続けている。
両者が登場し、対局前のインタビュー。両者は先の羽生善治三冠VS藤井聡太四段戦の記録係をしていたので、まずそのことに触れる。
塚田女流2級「貴重な体験をさせていただいて、ありがたかったです」
飯野女流1級「いろいろなところで声を掛けていただいたんですが、記録態度がひどくて…。動きすぎだな、と。でも貴重な体験をさせていただきました」
塚田女流2級「昨日から緊張してします。今日は自分らしい将棋が指せればと思います」
飯野女流1級「第1局に続いて熱戦が指せればと思います」
中村アナウンサーによるプロフィール紹介。「飯野女流1級は第2回大会で準優勝。地元ファンも多く、類まれな品格の振り飛車で、初優勝を狙います。
塚田女流2級は、お父様が塚田泰明九段、お母様が高群佐知子女流三段。血統のよさは折り紙付きです。初優勝を目指します」
解説の森下卓九段「飯野さんは昔ながらの正統な振り飛車。塚田さんはご両親のいいところを受け継いでいると思います」
聞き手の中井広恵女流六段「塚田さんの攻めを飯野さんがどう受け止めるか」
12時02分、塚田女流2級の先手で対局が開始された。

初手からの指し手。▲2六歩△3四歩▲7六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩△6二玉▲3七銀△7二玉▲7八玉△8二玉▲4六銀△7二銀▲6八銀△3二金
▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲6六銀△5一飛▲3八飛(第1図)

私は席を立って、後方で観戦。このほうが大盤がよく見えるからだ。
塚田女流2級の居飛車明示に、飯野女流1級は中飛車に振った。森下九段「今いちばん流行っているゴキゲン中飛車ですね」
塚田女流2級は▲3七銀から▲4六銀と上がる。いわゆる超速だ。森下九段「この手はねぇ、初めて見た時は指し手の間違いかと思いましたよ」
△3二金には▲7七銀と上がった。森下九段「(次は)▲4五銀や▲6六銀があります」
△5六歩▲同歩△同飛に▲5五歩とフタをするのは、△同飛▲同銀△同角で後手有利、と森下九段。その解説は明快で、言語も明瞭だ。
塚田女流2級は▲3八飛(第1図)と寄ったが、ここで▲3五歩△同歩▲同銀(参考1図)と行くとどうなるか。
「ここでいい手を皆さんに伝授します」
と森下九段が大上段に構えた。


(つづく)
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