付け焼き刃の覚え書き

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「回転スシ世界一周」 玉村豊男

2008-06-18 | 食・料理
「必要なのはちょっとしたイタズラごころと、正直な精神」
 ロンドンのマッサージサービス付き居酒屋を企画したサイモン・ウッドロフの言葉。

 仕事絡みで世界各地は飛び歩くのだけれど、わざわざ海外に来てまで閉鎖的な日本人社会を反映したような日本料理店だとか、オリジナルとは似ても似つかぬ料理など食べたくないと、あえて日本の料理は避けていた著者だけれど、今、世界のスシ屋に何かが起きていると聞き込んで急遽調査旅行。1999年から2000年にかけて、高級デパートのフードコーナーから1日平均1万食を生産するアムステルダムのスシ工場まで、1日5食はスシを食うという旅をして回った結果をまとめたルポルタージュ。

 確かにスシは変わっていたといいます。そして「外人は生魚は食べない」というのも日本人の勝手な思いこみだったことも。
 気軽に外出して楽しく食事するための場所の1つが回転スシであり、店の方もそれに応えて、清潔で、目新しく、楽しく、安く、美味しい料理を食べさせようとしているというのです。だから、日本そのままの形式ではなく、その国、その店ならではの工夫が凝らされています。
 もしかしたら本来の寿司とは違っているかもしれないけれど、料理としてのセオリーはしっかり押さえ、独創的な美味しさと安さを探究しています。
 その一方で、頑なに正統派の寿司にこだわる者もいます。

「回転スシ? 問題外だね。(中略)ぐるぐる回っているうちに乾いちゃうじゃないか。ぼくにはとても受け容れられない」
「でも、バルセロナの2軒目の回転スシは……ぼくがやりたい」

 アムステルダムの寿司職人ニルス・バッカー。

 なんにせよ、なにかよくわかってないけれど「とにかく食べてみよう」と思った客が足を運んだら、それに応えて「なんとか食べてもらおう」と工夫するのが職人の仕事。
 パリ、ロンドン、アムステルダム、ニューヨーク、ロサンジェルスを回った20世紀最後の世界スシ事情。そしてその後、スシはさらに世界へと広まり、今ではレバノンからミラノまでスシ屋が進出しているんだとか。
 ついこの前、「そんな世界のあちこちに寿司屋なんてないし、あっても食べに行く者なんかたいしていない」という発言を聞いて、「そうかなあ」と思っていたら、直後に見たテレビでイースター島の寿司屋の話をやっていて、「ここにあるならどこにでもあるじゃないか!?」と思っていたら、やはりそうでしたねえ。
 空想が現実に負けてちゃいけません。

【回転スシ世界一周】【玉村豊夫】【回転寿司】
コメント
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