付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「シャーロック・ホームズの生れた家」 ロナルド・ピアソール

2010-10-07 | ミステリー・推理小説
「作品が当たった場合、作家には大金がころがり込む。それに必要なのは次から次へと話を生み出す才能だ」
 コナン・ドイルに追従した推理小説作家たちの置かれた状況と彼らの心構えを評した著者の言葉。良い作品を書く必要はない、多作であればよいのだと。

 なんというか、最近はドイル伝ばかり読んでいる気がしますが、これもその1冊。コナン・ドイルの生涯を追いかけながら当時のイギリスの風俗文化や世相までを切り取って見せようというもの。
 ドイルのホームズ物は作者の知識不足で間違っている箇所は多いし、展開が陳腐なものも少なくないし、ホームズとワトソンというキャラで持っているようなものだと言い切らんばかりの酷評ぶりに「この本、大丈夫かっ!?」と思ったのだけれど、これに対して「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」の章がやけに充実。普通の評伝なら軽く流してしまうような、二番煎じで登場した模倣作の数々について一々紹介しては「どこがダメか」解説するような展開です。「ホームズ物の一番出来の悪い話でさえ、面白くもおかしくもない三文小説よりずっとましであった」と一端はライヘンバッハの滝へと落ちて消えたホームズが復活する経緯を解説しているのです。
 ホームズ以外にもチャレンジャー教授物や歴史物、オカルト物についてもかなり紙幅を割いているので、ドイル伝としては全体的にかなり詳しい本ではないかと思います。ただ、ドイルやその作品、そして登場人物たちをボロクソに貶しているような論調なので万人にお勧めできませんが……。
 やっぱりミステリーというのは、キャラクター小説なんですよ。

【シャーロック・ホームズの生れた家】【ロナルド・ピアソール】【エダルジ事件】【スレイター事件】【チャレンジャー教授】【懸賞拳闘】【ボーア戦争】【マラコット海溝】
コメント
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