付け焼き刃の覚え書き

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「彩雲国物語(一) はじまりの風は紅く」 雪乃紗衣

2011-11-22 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「幸せって、誰かが与えてあげられるようなものじゃないでしょう。その人が感じるものだから、その人自身がつかみ取らなければ意味のないものなのよ」
 何を選ぶかはその人次第。でも政事がきちんとしていなければ、選ぶことすら出来なくなると紅秀麗。

 紅家は彩雲国きっての名門のはずだが、世渡り下手で仕事をしているのかいないのか分からない当主のせいで家計は常に火の車。おかげで一人娘の紅秀麗は、深窓の姫君とは思えないほど庶民の世界に馴染んだ、しっかり者に成長してしまった。
 そんな秀麗のもとへ舞い込んできた高額な賃仕事とは、即位間もない暗愚な王の教育係として、からっぽの後宮に貴妃の身分で入内しろというもの。
「どーかどーかどーか!! 主上をまともな王にしてくだされぇええっっ」
 高額な報酬に目がくらんで引き受けたのではない。
 政がきちんとおこなわれなければ、争いに巻き込まれ、飢えに苦しむのは市井の人々なのだから。

 なにもかも王様に押しつけはしないけれど、王様しかできないことがあるなら、それをやるのが王様の仕事なのだという一言は最終巻まで貫くテーマです。
 そして暗愚で男色と噂されている王にも、彼なりの理由がありました。

 角川ビーンズ文庫から出ていたシリーズが、今度は落ち着いたレイアウトで角川文庫からリリース。厚みはビーンズの半分ほどですが、中身はちゃんと1冊分。ホワイトハートから出ていた小野不由美の『十二国記』が講談社文庫から平行して展開されたのと同じ、少女向けレーベルから一般向けに足場を移したパターンです。面白いものは、子供向けだろうと少女向けだろうと、どの層が読んでも面白いんですよ。
 最初はいかにも(少女マンガによく見られる)ありきたりな王宮ラブコメかと思わせておいて、中盤以後の政治陰謀劇から伝奇世界への広がり、泥沼にはまりっぱなしの主人公グループと、かなりエグいというか、「こんな風に話を広げ、主人公をどん底に叩き込んでおいて、話を終わらせられるのか!?」という大風呂敷を見事に畳んだ技量には脱帽。すごいよ!あんな話を畳めるんだ?

 本当はこちらは買わないつもりだったけれど、「加筆修正」があると付記されたら買うしかないでしょ?

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コメント
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