付け焼き刃の覚え書き

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「風来忍法帖」 山田風太郎

2012-09-12 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「殿……仰せにはそむきまする。いかにわが夫の仰せでございましょうとも、主家のためでありましょうとも、麻也は妻として、女として、人間として、仰せにはそむきまする」

 悪源太ら香具師たちが飛び込んだのは豊臣勢の包囲下にある忍城。彼ら7人の風来坊の目的は北条方の麻也姫。姫を守るのは風摩小太郎が率いる忍者団・風摩組、そして攻め寄せる石田三成の軍勢もまた麻也姫の身柄を確保せんとしていた……。

 戦場に潜り込んでは戦を逃れてきた奥方侍女をたぶらかしては売り飛ばし、鉄砲玉や薬を戦場のど真ん中で敵味方に売りつけてきた悪党たちが、何の因果かハッタリと機智と詐術で攻め寄せる豊臣勢を迎え撃ち、風摩忍者と戦うことになる物語。
 『のぼうの城』と同じ、浮城こと忍城をめぐる攻防戦で、奇々怪々な忍術の数々や攻守が二転三転するシニカルなストーリー展開はさすが山田風太郎です。

 この話の忍法にはやたら「糸」が出てきます。
 単分子ワイヤーとか、細く長い糸を使って戦い相手を細切れにしてしまうというと、最近では『HELLSING』のウォルター・C・ドルネーズの極細の鋼線。その元ネタである『魔界都市ブルース』の秋せつらのチタン合金製の妖糸。『庖丁人味平』で無法板の練二が使う白糸バラシ……はちょっと違うか……。まあ、こうした異能の糸使いというと、やはり山田風太郎まで遡ってしまうんですね。
 北条家の乱波組頭領である風摩小太郎らが使う忍法「風閂」は髪の毛で人体を真っ二つにしたり、首に巻き付けて遠隔操作で人を操ったり。女忍者たちも蜘蛛の糸のようなものを使いますが、これはバルトリン氏腺から分泌する粘液なので、これは白糸バラシなみに違うような気がします。忍法「恋さみだれ」って名前はかわいいんですけどね。

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コメント
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