付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「SOULLESS」 REM

2013-01-21 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 ハヤカワ文庫FTから翻訳が出ている、英国パラソル奇譚の1作目『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』をコミカライズしたもの。アメリカの出版社の刊行だけれど「The Manga」とわざわざあるくらい、絵だけを見れば日本のマンガと区別が付きません(崩したギャグフェイスも含めて)。このままモーニングかアフタヌーンあたりで連載しててもおかしく日本的な巧さだなと思って調べてみたら、作画担当のREM氏はモーニング国際新人漫画賞の第1回大賞受賞者のようです。どんぴしゃり。
 全体的にキャラクターは美形化してます。アイヴィのファッションセンスがちょっとおかしいのもそのままだけれどかわいいし、なんとなく白塗りのオネエっぽいイメージだったアケルダマ卿がすてきな美青年に描かれているし、そのドローンはもちろん美形集団。夕焼けの名場面は泣かせます。ビクトリア朝の雰囲気もそのままに、激しいアクションやら素敵な肉体が披露されるシーンもしっかりと。
 巻末におまけマンガ「Mr.マクドゥーガルの大脱走」も収録。

【SOULLESS】【アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う】【ゲイル・キャリガー】【REM】【英国パラソル奇譚】【パラノーマル・ロマンス】
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「翼の帰る処3 歌われぬ約束(下)」 妹尾ゆふ子

2013-01-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人から教わった未来など……そんなもの、よくできたまがい物に過ぎない。明日は、自分で積み重ねていくものだ。誰かに語られるものではない」
 予言の言葉などに振りまわされる義務はないと<黒狼公>ヤエト。

 上巻が出てから下巻まで1年という(刊行ペースは)超大作。待つのは辛いけれど、それでも待てるくらいの面白さ。そして、刊行ペースに反して話がさくさく進むのは、主人公が病弱だから。
 これで主人公が活劇を繰り広げるほどの気力と体力があったなら、鉱床の掃討戦とか北方からの脱出劇とかあれやこれやで膨大な紙幅が費やされてしまったろうけれど、文官なので戦闘は報告を聞くだけだし、何かあったら昏倒して病室に担ぎ込まれて1週間や2週間は平気で人事不省に陥ってしまうので、結果的に話の展開は早いです。

 皇帝の策謀によって失敗に終わりかねなかった、北方との人質交換と外交交渉をとりあえず進めたヤエトはまたも人事不省で北嶺に送還。意識を回復するや、商人ナグウィンを救出するため再び北方へ飛び、塔に幽閉されていたア=ブルスたちを解放することに成功するが、帰還したヤエトを待っていたのは、皇女が第4皇子の処刑を阻止するべく籠城しているという報告だった……。

 倒れても立ち上がるヒーローというのはタフガイの代名詞ですが、死にたくないのに、今にも死にそうなことばかり自分からしているヤエトは、倒れては病室に担ぎ込まれ、やっとこさ起き上がるとあっちに飛び、倒れて担ぎ込まれてはまた立ち上がりの連続。ぜんぜんタフガイではありません。案外と頑張っているなと思いつつ、確実に痩せてきているようなので、主人公の過労死で話が終わらないかドキドキです。暗殺とか、皇帝による刑死とかも十分ありうる展開です。
 恐ろしい皇帝の意外な親バカぶりもちらりと垣間見え、あれは本心が思わず漏れたのか、はたまた単なる偶然かとドキドキしながら頁をめくりますが、結局結論は持ち越し。次は1年後か2年後か……。(2011-09-04)

 新装版は、人質生活をセルク視点で語った短編「鳴弦の響き」収録。

【翼の帰る処3(下)】【歌われぬ約束】【妹尾ゆふ子】【ことき】【幻冬舎コミックス】【北の魔女】【女心がわからない】
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「翼の帰る処3 歌われぬ約束(上)」 妹尾ゆふ子

2013-01-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「権力は、失ったら買い戻せない。手に入れたら死ぬまでしがみついていないと、危険な品物です。売れないものに興味はありませんよ」
 権力に興味はないのかと尋ねられ、仕入れても不良在庫になるモノは要らないと商人ナグウィン。

 病弱な下っ端役人が、生きているうちに隠居して楽になりたいと願いながら、余計なことに口出ししないでいられるほど賢くなくて、いつの間にか望まぬ出世を続けるはめに陥り、いまや帝国の四大貴族の一角にまで上り詰め、それに伴い職務も増大。隣国との紛争から国内の権力争いはおろか、神話の中だけのはずの鬼神にまで対応しなければいけなくなり、結局、意識不明で北嶺国にたどり着いて、面会謝絶状態の病室で話がスタートするのだけれど……。

 今回は、皇妹から「復縁」を提案されるのと、宿敵・北方蛮族の使節との和平交渉がメインかな。「今度こそ隠居すると言い出されたらどうしよう!?」と狼狽える王や重臣たちが可愛いです。みんなが苦境にいるときにやめると言い出せるような人物だったら、もっと楽に生きられたはずですよ。

 一頃と比べると書店での文芸新書の扱いは悪く、駅ビルのワンフロアを占有するような書店でも街の小さな書店でも、新書コーナーは計ったように棚1本分。ここにミステリも架空戦記もSFもファンタジーも押し込められているので、買いそろえているシリーズでも新刊発見は困難です。本当に新刊で出たときに、たまたま書店に配本されていて、それを運良く見かけないとそれっきり。
 この本も出ているのに気づいたのが刊行後10ヶ月が過ぎたところ。慌てて書店に客注で取り寄せてもらったのだけれど……思いっきり逆境に陥ったところで続く……で、発売後ほぼ1年経つのに、いまだ下巻の刊行予定は見えず。これはこれで辛いなあ……。(2011-05-29)

 新装版の帯で、4巻上は25年2月発売予定とのことで、ちょっと楽しみです。

【翼の帰る処3(上)】【歌われぬ約束】【妹尾ゆふ子】【ことき】【幻冬舎コミックス】【隠居願望】【芝居】【黒狼公】【復縁】【人質交換】
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