付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「大きな音が聞こえるか」 坂木司

2013-01-24 | その他フィクション
 高校1年生の八田泳は、サーフィン以外はとりたてて趣味がない帰宅部で、生活や学業に何不自由はなかったけれど、なんとなく過ぎ去っていく日々にぶつけ処の見つからないモヤモヤを抱えていた。
 そんな泳は偶然にアマゾン川の終わらない波・ポロロッカの存在を知り、なにがなんでもこの波に乗ろうと決意するのだが……。

 なにをしたらいいか分からないままもがいていた少年が、ポロロッカという目標を見つけ、それに向かって動き始めたことから、最初は単なる障害にしか思えなかったクラスメイトや大人たちが助言を与えたり支えてくれる存在に変わっていきます。少年が一歩ずつ夢の実現に向けて動き出す青春小説で、終わらない波に乗る、バイトと旅の物語。
 宣伝文句に「青春大河小説!」と書いてあって、1年生の夏から春休みまでの物語だから青春小説であっても大河小説じゃないだろ!?とツッコミいれようとして、あ、これはアマゾン河の“大河”かよ……と気づいて。
 まあ、大河には違いない。

 そして途中から合流してくる剛叔父さんの仕事はメディスン・ハンターというやつですね。『メディシン・クエスト』で読みました。これも懐かしく思いながら再確認。
 主役はあくまで少年であり、少年が自分の意志と力で行動する成長と変化の物語なのだけれども、それを見守り、時に助言して手助けする大人の存在は、良きジュブナイルそのものです。泳は自分自身の置かれた状況、自分の欲求や衝動を自分の言葉で語れるようになるたびに成長していきます。自己を客観視することが成長の1ステップなのですね。

「大人は喜びに溢れている」
 バディ・ジュニアの言葉。
 大人は子供の楽しさを超える楽しさを経験できる。大人だからつまらないということはない。『That's イズミコ』の名台詞を即座に思い出しましたが自重します。
 でも、確かに彼の成長は羨ましい。彼に嫉妬する周囲の大人たちの気持ちがよくわかります。

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コメント
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