付け焼き刃の覚え書き

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「魔王と勇者の戦いの裏で2」 涼樹悠樹

2022-09-24 | 異世界転生
「脚本家の都合なんぞ知った事か」
 この世界はゲームと似ているが、だからといってゲームのストーリーそのままの展開などにさせはしないとヴェルナー・フォン・ツェアフェルト。

 もともとのゲームではモブ貴族のヴェルナーだが、魔王軍襲撃によるデッドエンドを回避すべく可能な限りの手を打ち続けている。ヴェリーザ砦の戦いから王都へ帰還すると、今度はヴェルナーは魔物に滅ぼされた隣国の難民を護送する任務へ就くことになったヴェルナーだが、その合間に勇者マゼルに新たなパーティーメンバーを紹介し、装備更新の手配も済ませる。
 さて、滅びたトライオットからの難民の大半は老人と女子供。歩みは遅く、魔物や野獣の良い的となる。しかし、ヴェルナーはこの状況を戦時中の輸送船団のようだと見立てた。ならば、船団護送艦隊方式を取り入れれば、少しはマシになるはずだ。哨戒機代わりに斥候を送り出し、発見した敵に対して駆逐艦の役目を果たす冒険者や傭兵を都度派遣して殲滅していく積極的な防衛プランだ。しかし、それだけでは処理できない大規模な群の接近が報告され……。

 華やかな女性キャラが乱舞しているわけでなく、主人公がチート能力でオレツエーしてるわけでもないけれど、きっちり面白い話なので2巻が出て嬉しいし、コミカライズも好調なら相乗効果でもっと売れると良いなあと期待。
 主人公に原作知識と現代知識があるといっても万能ではないのも良いですね。身体も頭も一つだけなのに、一人で何でもできちゃう話は興ざめです。この話の場合は「家を作る大工と内装職人が同一人物である必要はあるまいて」という老セイファート将爵の言葉に象徴されるように、どんな有能な人間にもいろんな意味で限界があるというのが根本のテーマ。だからこそ、勇者の手が回らない仕事をヴェルナーがするし、そのヴェルナーの気がつかない部分を他の大人たちがフォローしていきます。こういう世の中の歯車がしっかりはまって回り始める話というのは、進めば進むほど面白くなるのです。

【魔王と勇者の戦いの裏で2~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~】【涼樹悠樹】【山椒魚】【オーバーラップ文庫】【小説家になろう】【伝説の裏側で奮闘するモブキャラの本格戦記ファンタジー】【逆サイホン】【Uボート狩り】
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