「歴史に残る悪女になるぞ」 大木戸いずみ

　ウィリアムズ家長女アリシアは７歳の時に、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることを認識した。もともときれい事ばかりのヒロインが嫌いで悪役令嬢好きだったこともあり、アリシアは誰よりも努力し、学び、考え、完璧な悪役令嬢への道を歩み始めるのだが……。

　料理番組において同じ食材で料理人たちがそれぞれの腕と独創性を競うように、悪役令嬢ものも「存在するかどうかも怪しい乙女ゲームとその悪役令嬢」という共通フォーマットを元に各作家たちが競い合っているのが昨今のウェブ小説界とそこからのライト文芸界です。「ヒロインも悪役令嬢も良い子でみんな仲良し」から「ヒロインが本編に絡まないまま通り過ぎる」とか「ヒロインが初っぱなに殺される」までさまざま。
　この作品もその１つで、なんの具体案もないのに現実味のない理想論を唱えるヒロインを弾劾していくパターン。そこに矯正の余地を見いだしているあたりが個性でしょうか。あまりにも馬鹿すぎて、目の前の現実を無視したお為ごかしに１冊目から辟易……という意味で、作者の意図は見事に達成されてます。

【歴史に残る悪女になるぞ】【悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです！】【大木戸いずみ】【早瀬ジュン】【ビーズログ文庫】【トラック転生】