付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「あけましておめでとう計画 実録・日本テレワーク物語」 野田昌宏

2008-06-14 | その他SF(スコシフシギとかも)
 野田昌宏のSF著作といえば『銀河乞食軍団』なのだけれど、自分がいちばん好きなのは『実録・日本テレワーク物語』です。

 日本テレワークという実際の会社がありまして、最近では「発掘!あるある大事典II」のデータ捏造などで悪い意味の知名度があがってしまいましたが、もともと幼児番組「ひらけ!ポンキッキ」から始まり、「ハンマープライス」「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」とか面白い番組をいろいろ世に送り出してきた会社。その会社の制作現場を舞台に、社長以下ひと癖もふた癖もあるスタッフたちが、謎の宇宙人ガチャピンの妨害をはねのけ、時には逆に利用して番組を制作していくという科学的ホラ話集。

 実録と言い張って当時の取締役社長・野田昌宏以下、実在のキャラクターを出して破天荒なSF話を語るって技は、野田昌宏以外にはできなかったんじゃないかと思います。ある意味、目から鱗が落ちた作品。そうか、こういう話もありなんだと。
 いや、確かに「大統領の陰謀」ネタに代表されるように、現実の組織や人物を題材にして話を膨らませるフィクションは少なくありませんが、そのレベルが妙に身近なのですよね。それだけにインパクトがあったんです。自分でやるかよと。

 やはり、
・実在のテレビ制作スタッフが番組を制作しようとする。
・謎のガチャピンが絡み、野田昌宏が対決する。(ある意味での本人対決)
・宇宙人の妨害をはねのけ、逆に利用してスゴイ番組完成。
 という展開が基本ですね。
 後に『キャベツ畑でつかまえて』と改題されて文庫オチしましたが、チャッキーみたいなキャベツ人形が暴れ回る表題作よりも、宇宙からのメッセージで新年を祝う年越し番組を制作しようとする日本テレワークにガチャピン型宇宙人がからむ「あけましておめでとう計画」の方が、このシリーズの典型っぽくて好きですな。

【あけましておめでとう計画】【実録・日本テレワーク物語】【野田昌宏】【ガチャピン】【NASA】
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「昭和のロケット屋さん」 垣見恒男・林紀幸 ききて:あさりよしとお・笹本祐一・松浦晋也

2008-06-13 | エッセー・人文・科学
「東大卒なんか役に立たない」

 戦後日本で生まれ、発展していった固体燃料ロケットの歴史について、第一線の研究者、技術者だった2人が語ったトークショーの内容をまとめたもの。「ペンシルロケットはなぜあのサイズなのか」という質問への回答に含まれていた大嘘、仕事すればするほど会社が損する研究所などあれこれ。記録映像の収録されたDVDも付録で付いていて、お得な1冊。巻末にはインデックスもついているので、あとで必要な箇所だけ読み返すにも支障なし。
 キャッチコピーには「今だから語れる」とあるけれど、意外な真実ととんでもないエピソードの連続で、今だって語って活字にして良いのかと思う箇所も幾つか。
 読んでいて思わず肯いたのは、ロケットの組み立てには常に最新のマニュアルが用意されており、そこに記載されたチェックシート通りの作業をして、決められたクロスチェックをすればヒューマンエラーによる事故は起きない。でも事故は起きるってあたり。泣けちゃいますね。

【昭和のロケット屋さん】【垣見恒男】【林紀幸】【糸川】【ペンシルロケット】
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「黄泉がえり」 梶尾真治

2008-06-12 | その他SF(スコシフシギとかも)
「何故かはわからん。理由よりも、現状に対応するのが行政じゃなかや」

 熊本市周辺で不思議な現象が頻発した。
 死んだはずの人間が帰ってきたというのだ。
 去年自殺した高校生の息子が、何十年も前に水死した兄が、父が、夫が、妻が、死んだときのままの姿でひょっこりと帰ってくるのだ。
 最初はイタズラか何かの陰謀かと疑っていた市職員も、死亡したはずの人間の戸籍訂正を問い合わせてくる人間が何十人、何百人と増えるに従い、対策を講じざるを得なくなってくる。
 警備会社に勤めている三池は、深夜のレストランに侵入した泥棒と思しき女性を捕まえる。だが、彼女は1年半前に死亡したはずの女性歌手マーチンであり、三池はマーチンのファンだったのだ……。

 「泣けるリアルホラー」って煽り文句には首を傾げるよね。確かに泣ける。こういう話には弱いのだ。『フィールド・オブ・ドリームス』だって『異人たちとの夏』だって泣けたのだ。でも、ホラーじゃないよね? 確かに死人が生き返る話だし、あんなんとかこんなんとかも出ますけれど、どちらかというと雰囲気は『ゲイルズバーグの春を愛す』とか『夏への扉』とかに近い。

「俺は、まだ自分の墓を見ていない」

 誰かにすごく愛され、死んだ後も想われ続けていた人たちが甦り、旧交を温め、心残りを片づけていく過程で起こる涙と笑いの物語ですね。基本のキーワードは「優しさ」かな。

【黄泉がえり】【梶尾真治】【25万人ライブ】【地震】【死者の復活】
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「11番ホームの妖精」 藤真千歳

2008-06-11 | その他SF(スコシフシギとかも)
 日本が高密度次元圧縮交通(C.D.)技術を開発・独占し、これによって完成させた「鏡色の門」と鋼鉄の線路が世界を結んでいる時代。
 東京のはるか上空に、通過する列車もないという、東京駅11番ホームがあり、1人の少女と1匹の犬が配属されていたのだが、そこに来るはずのない列車が高速で進入してきた……。

 高空の駅に年齢不詳の美少女駅員というと『イグナクロス零号駅』を真っ先に連想してしまいますが、「駅」テーマであると同時に「少女と犬」テーマでもありますし、実験の暴走に巻き込まれ村1つが消えてしまったというと『銀河乞食軍団』を思い出します。

【11番ホームの妖精】【中継ステーション】【駅】
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「プロテウス・オペレーション」 J.P.ホーガン

2008-06-10 | 時間SF・次元・平行宇宙
「わたしはもうあらゆることを知っているほど若くはないのでね」
 アルベルト・アインシュタインの言葉。それでも彼は人間を信じている。

 ハードSFミステリ『星を継ぐもの』でデビューして注目を浴びたJ.P.ホーガンの作品には、独創的なアイデアを軸に、人々の自由な思想や行動を抑圧しようとする専制的な勢力との対決を描いたものがほとんどです。『星を継ぐもの』はそんな構図はほとんど見えなかったけれど、シリーズが進むに従って顕著になるし、『創世記機械』もそうだし『断絶への航海』とか……『終局のエニグマ』はその典型ですね。この『プロテウス・オペレーション』もそうですね。

 原爆開発に成功したナチス・ドイツは第二次大戦に勝利し、欧州、アジア、アフリカと勢力圏を拡大していた。
 そして1974年。最後の自由主義の砦であるアメリカ合衆国とドイツ陣営との間に戦争が起こるのは必至で、そのアメリカに勝利の希望はほとんどない。唯一の道は、時間の流れを遡って特殊部隊を送り込み、第二次大戦でドイツが勝利しなかった世界を作り出すことだった。
 この無謀ともいえる任務に送り出され、1939年の世界に到達したプロテウス部隊は、政界の第一線を退いたチャーチル議員に接触し、領土拡大の野心に燃えるナチスへの抵抗を訴えるのだが……。

 時間改変ものもいろいろありますが、これは「歴史を正しい流れに戻す」話ではなく、「歴史を自分たちの都合の良いように改変する」のが目的の話。ホーガンのSFとしては【駄】の方かもしれないけれど、でもホーガンのスパイアクションとしては【上】の部類ですかね。タイムパトロールは出てこないのかしらん。
 チャーチルとかアインシュタインらに接触し、自分たちが未来から来たのだと説得していく過程が前半の山場。後半はもちろんナチスの原爆計画を叩きつぶせという、戦争アクションではお馴染みの展開になりますが、ここでさらに時間SFらしいひねりが用意されています。さて史実の第二次大戦では、連合軍による大陸反攻作戦には「オーバーロード」という作戦秘匿名がついていたわけですが……。

【プロテウス・オペレーション】【J.P.ホーガン】【ハヤカワ文庫SF】【時間移動】【アインシュタイン】【時間改変】【架空戦記】【特殊部隊】【グレン・ミラー】【重水素】【アジモフ】
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「エリアル04」 笹本祐一

2008-06-09 | 巨大ロボット
「必要なのは、道具と使い方よ。使える道具さえあれば、それで用は足りるもの」
「想像力と応用力は、いくらあっても邪魔になりませんよ」

 シンシアとリーエの会話。

 侵略戦艦が留守の間に、縄張り荒らしの海賊が重巡洋艦で地球に襲いかかった。
 予算計画も何も関係ない海賊の攻撃は、アメリカ軍の核攻撃すらあしらって第7艦隊を蹂躙する。
 この侵略になすすべもないARIELはニューメキシコのロス・アラモス研究所へと飛ぶ。新兵器H装備とともに宙へ往くために。

 第23話「新たなる侵略者」から第28話「女子高生の危険な温泉旅行」、それに書き下ろしとしてまだ小学生のシンシアが統合参謀司令部にハッキングを仕掛ける「妖精と魔法使い」を収録した合本の第4弾。
 テレビシリーズなら第2クールの終盤。また少し世界各国の思惑が交錯して地球防衛の物語っぽくはなりましたが、地球側の描写は相変わらずの個々人の暴走が中心で、ストーリーとしては侵略企業が果たして経営危機を乗り切れるか!?という方向で進んでいます……って、ちゃんと文庫初版で買ってますが、書き下ろしだけでも買う価値はありますねえ。
 でも、本当に書店でも古書店でも新書の棚は小さくなる一方で、少ない新書コーナーもビジネスとか時事関連で2/3くらいを占拠されている感じ。残りスペースをSFとミステリーと仮想戦記で取り合っているような有様なので、店頭で探すのは本当に難しくなりました。うーむ。

【エリアル】【笹本祐一】【ラスベガス】【ロス・アラモス】【魔法使い】【エリアル】【宇宙海賊】
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「スペース・オペラの書き方~宇宙SF冒険大活劇への試み」 野田昌宏

2008-06-08 | 宇宙・スペースオペラ
 野田昌宏が自ら実践してきた創作法を、あいかわらずの野田節で語りまくった1冊。スペース・オペラの書き方というけれど、スペースオペラに限らず、小説でも映画でも、創作を志す者に必見の本。また、その合間に挟まれるエピソードは実録・日本テレワーク物語さながらの展開で、創作に縁のない一読者が読んでいても愉しい話になっています。
 これを読んでいると、ああ、『あけましておめでとう計画』はこういう状況で生まれてきたんだなあとか、これ『銀河乞食軍団』で使ったよね!?とか、ホテルのカンヅメってなんかあこがれるよね?とか、日本の文豪も辿ってきた道なんだよなあと、何度も読み返す座右の書。

【スペース・オペラの書き方】【創作法】【野田昌宏】【海音寺潮五郎】【鹿鳴館】【スターウルフ】【アイデア・カード】
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「スペース・オペラ名作選2 お祖母ちゃんと宇宙海賊」 野田昌宏編

2008-06-07 | 宇宙海賊・宇宙商人
 野田昌宏・宇宙軍大元帥の訃報が届く。
 合掌。

 野田昌宏という人はスペースオペラの啓蒙を続けた人でした。もちろん「どんなものも、その90%はカスである」というスタージョンの法則の通り、スペースオペラの9割はカスなのだけれど、その残り1割を、いかにも面白可笑しく吹聴して回った人。
 そうして紹介された、キャプテン・フューチャーやスターウルフのように有名なシリーズものは置いておいて、単発のスペースオペラ作品を紹介したのがアンソロジー集、『お祖母ちゃんと宇宙海賊』。
 収録された作品の大半は、今から見るとより抜いてさえこれかい!?という水準ではあるけれど、表題作の「お祖母ちゃんと宇宙海賊」はなかなかの快作。これがあるから仕方がないねえという。

 カリストから地球へ向かう豪華客船<キスメット号>が宇宙海賊に襲撃された!
 乗り込んでいたおチビなおばあちゃん、152歳のパーキンス祖母ちゃんは宇宙服を着込んで、有名な乗客の1人である美人女優トゥジュールになりすますと海賊船に潜入。宇宙海賊を手玉にとって大反撃。ついにはやってきた宇宙パトロールまで巻き込んで……

 スペースオペラ名作選2といっても『名作選1 太陽系無宿』は(たぶん)読んでないし、2も実は手元にない。
 15年ほど前に、三重の山奥に転居したNさんに借りたのだ。膨大な蔵書の中から「これいいですよ」と貸してくれて、家に帰って読んでまた高速飛ばして返しに行ったという1冊。庭でバーベキューして焼いたハムが美味しかったなあ……。

 まあ、こんな感じで、みんな宇宙軍大元帥の敷いたレールを走ってきたのですよ。(2008/06/07)

「スマートな女性ってものはね。ヘアピン1本ありさえすりゃ、やれないことはないんですよ」
 御歳152というマチルダ・パーキンスの言葉。

 アマゾンで安く出物を見つけて購入。
 よしよし。(2012/02/09)

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「バービーはなぜ殺される」 ジョン・ヴァーリイ

2008-06-05 | 宇宙・スペースオペラ
「食べることが人生のすべてだと思うのかい? この広い宇宙には、きみにも想像のつかないようなことがいくらでもあるんだよ」
 捕獲を免れたブラックホールの言葉。

 個という概念を持たない統一教徒のコミューンでは、老若男女をとわずすべての信者が同じ姿形をしている。子供のおもちゃのバービー人形のように。
 そのコミューンで殺人事件が発生した。被害者も容疑者もすべて同じ顔かたち。人口7万人の閉鎖社会には、プライバシーはおろか個体の区別、指紋もほくろも個人を識別するようなものは何もない。頭を抱えるニュードレスデン警察署長のアンナ=ルイーズ・バッハは……。

 人間が地球から駆逐され、太陽系宇宙で生きるようになり、容姿はおろか性別すら自在に変えるのがあたりまえになった時代を舞台とする、八世界シリーズの短編集。
 この、子供のうちに2回や3回は性転換してあたりまえというか、それをさせるのが親の義務!みたいなアナーキーな世界に馴染めれば、いろいろ楽しいガジェット満載なジョン・ヴァーリイの世界です。

【バービーはなぜ殺される】【八世界シリーズ】【ジョン・ヴァーリイ】【個と全】【ロリポップ】【ブラックホール狩り】
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「妙なる技の乙女たち」 小川一水

2008-06-04 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「人間は家事が好きであるべきです」
 歌島美旗の言葉。

 軌道エレベーターが建設された2050年。その基部となった東南アジアの海上都市リンガには、世界各地から企業が集まってきている。
 宇宙用弁当箱を設計するデザイナー、無認可の託児所で働く保母、動力機械で彫刻する芸術家、海上タクシーの運転手……。プライドを持ち、その街で働く女性たちを主人公にしたオムニバス短編集。

 「軌道エレベーター」というSFガジェットの代表を話の中心に据えながら、物語はあくまでその周辺で働く日本人女性たちという視点が面白いですし、自分のなすべきことに取り組んでいる人間を書かせたら相変わらず文句なしの小川一水です。内容もやる気満々の女性社員とダメダメな男性陣とか、迷子の子供と保母さんとか、新種の蝶と嵐の海とか、オムニバスの名に恥じないバリエーション。自分の仕事への誇りとか憧れと、この赤道直下の孤島で生きていく意味への問いかけた作品集。
 ウン。面白かった。

【妙なる技の乙女たち】【小川一水】【働く女性】【軌道エレベーター】【ウラン】【SWAT】【船首飾】【ロイズ】
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「人類は衰退しました(3)」 田中ロミオ

2008-06-03 | 破滅SF・侵略・新世界
 『人類は衰退しました』もついに3巻。

 衰退期に入っていることを、人類自身がなんとなく受け入れてしまい、のんびりと生きていくようになってはや数世紀。
 そんな人類が久々にやる気を見せて、人類すべての記録を目指したヒト・モニュメント計画を発動させます。そして古代遺跡のデータ収集をするために、まだ生き残っていた発電衛星を起動させました。
 古代遺跡の最寄りの村である、クスノキの里では「電気が来る!」ということで“夏の電気まつり”が開催されることになるのですが、その影響で妖精さんが里から消えてしまいます……。

 今回は、人類最後のモニュメント的事業のために、都市遺跡に潜り込む話です。でも、それが単なるトレジャーハンターものにならず、危機的状況ながらなんとなくぬるい遭難話になり、オチは少しブラックといういつものパターン。でも、妖精さんの出番が少なめなのが物足りないかなあ。

【遺跡荒らし】【電磁波】【人類は衰退しました】【情操教育】
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「天使墜落」 ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル&マイクル・フリン

2008-06-02 | 宇宙・スペースオペラ
 『暗黒太陽の浮気娘』を再読して頭が痛くなったので、同じようにとんでもないけれど、まだ少しは他人の役に立ったSFファンの話を読んでみたりする。

 地球に氷河期が訪れ、人類存続のための環境保護が科学への憎悪にまで至ってしまった時代。高度な科学技術は、地球軌道上の宇宙ステーションに孤立した人々のみが有しており、地球政府に敵視されていた。
 その宇宙ステーションの宇宙船が墜落し、宇宙飛行士が地上に取り残された。
 地球政府につかまったら命が危ない! 天翔ることから<天使>と呼ばれる宇宙飛行士を救うことができるのは、弾圧されながらも性凝りなくファンジン活動を続けるSFファンだけだった……。

 SFファンって、実は素晴らしくって、人類のあるべき姿なんだ! やろうと思えば何でもできる! 未来を切り開くんだ!というSFオタク賛歌。おーい。
 科学文明が崩壊した未来社会で、科学技術を守ろうとする人々と否定する人の対立の物語というのは、他にもあるのだけれど、その担い手が科学者だけではなくSFファンにも与えられているというのが特色。
 とても面白いけれど、文庫でおよそ700ページというのは、使命感や人道主義より悪のりと個人の趣味の探求で暴走するSFファンの群像劇としては長すぎると思います。

【天使墜落】【ラリー・ニーヴン】【ジェリー・パーネル】【マイクル・フリン】【隠れSFファン】【宇宙ステーション】【氷河期】
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「暗黒太陽の浮気娘」 シャーリン・マクラム

2008-06-01 | ミステリー・推理小説
「気の狂った人間を捜すべきですよ。森の中で木を捜すようなもんでしょうがね」
 アイルランドのフォーク歌手、マクローリィの言葉。

 たまたま執筆した書物が「SF」として売り出されたことから、アメリカのローカルSFコンベンション<ルビコン>へのゲスト参加を依頼された大学教授J・オーウェンズ・メガ。
 編集者に書名を『暗黒太陽の浮気娘』なんて内容に反したものにされただけでも頭が痛いのに、初めて体験するSFファンのお祭りは、常識人たる教授の良識には頭を抱えることばかり。あげくの果てに、人間的には鼻持ちならない人気ファンタジー作家ダンギャノンが殺されるという事件に巻き込まれることに……。

 マニアの世界に紛れ込んだ一般人の物語。SFファンやSF作家は非常識で自己顕示慾が強く鼻持ちならないヤツばかりで、編集者は無責任なヤツばかり、大会スタッフは大会運営に奔走するけれどやっぱり本質的にダメ人間……という話。
 262頁と薄手の1冊。これくらいの長さでちょうど良い話だと思いますが、ミステリーとしては特筆すべき部分は無いと思います。動機とか犯人捜し方法が極めてSF大会らしいといえばその通りですけれど。

【暗黒太陽の浮気娘】【シャーリン・マクラム】【ミステリアス・プレス文庫】【マニアの世界】【コスプレ】【TRPG】【ノートン】
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