おんぼろアパートの一室にある『佐能探偵事務所』の所長は眼帯をつけた中二病の高校生。所員は彼の兄と猫だけという貧乏所帯だが、最近は父親の浮気調査を持ち込んだクラスメートの少女も入り浸っていて……。最近流行の美少年・美青年が探偵役のお店ミステリかと思わせておいて、実は副題の「佐能探偵事務所の業務日記」はほとんど関係なく、「世界螺旋」がそのまんまのテーマでした。つまりお店ミステリでもオカルトミステリでもなく、平行世界の未来を観る力、過去へ飛ぶ力、平行世界へ渡る力が絡んで織りなすタイムトラベルＳＦ。
「平行世界を移動するワールドチェンジは横移動、それに対して過去と未来を行き来するタイムトラベルは縦移動だ」
序盤は未来視の話だったのだけれど、中盤以後は歴史を修正しようと過去へ飛んでは「何も変えられなかった」か「事態が悪化した」とドツボにはまっていく、アニメ映画『時をかける少女』のヤンデレ版みたいなストーリーでした。
結局、眼帯も義眼も女装癖もミスディレクションってことなの？
【世界螺旋】【佐能探偵事務所の業務日記】【梨沙】【カキネ】【集英社文庫】【バレンタインデー】【浮気調査】【シュレーディンガーの猫】【バタフライナイフ】
「どうしてウチ－－フランスは政治オタクばっかりなんだ！」
高校の部活紹介の会場で、国分隼人の前世の記憶が突如として蘇った。
老騎士バルド・ローエンは旅を続けていた。領地も財も捨て、供をするのは長年連れ添った老いた馬のみ。
「私には度胸も技術もありませんので、どうしても殺したい人が居る場合は、他人にお金を払って殺してもらおうと思います」
「ラノベ作家なんて博打打ち以外の何物でもない」
高校生ハガネは路上の猫を救おうとして事故死。そこを女神シロニャによってゲーム的異世界に転生させてもらうことになったのだが、転生システムのバグをついて通常の20万倍のボーナスポイントを獲得することになる。
なぜか山間のお寺にまで合宿に来た園芸部一同。
「私はただ、真実を口にしたいと思う。そして人々から、この人間は真実を言っているのだと思ってもらいたい」
「女友だちとゆーものは、片想いの友だちにはとても優しく理解があるものなのです。ええ。そして、両想いになっている友だちにはまったくもって容赦しないものなのですっ」
「最初に本が売れるのはイラストの力。売れ続けるのは話の力であるが、イラストの力もかなり大きい」
運だけはすごく良い状態で異世界転生したのに、同じパーティーの女性陣の残念さ加減が有り余る幸運値をマイナスに削ってなお足りないという異世界コメディの３冊目。法廷バトルとかお見合いをぶち壊せとか悪魔バニルとの決戦とか、みんなうやむやの内に幕。すごいや。
作者は「綾波系無感情美少女が超絶美形妖怪ハーレムにチヤホヤチヤホヤチヤホヤされる話を書きたかったはず」とのことですが、確かにちょっと違います。
1980年代というと「ＴＶマンガ」から「アニメ」への移行期。そして、「美少女＋メカ」という遊びがラムロイドとかポニーメタルとか同人のお遊びから商業誌へと広がっていった時期の産物。
ゲーム世界に転移してしまった現代の若者たちの冒険譚も３冊目。全般に戦闘では女性陣が前衛の壁役で男性陣が支援系という話ですが、それだけでは活動に限界があると、よっこらと男が前に出てくることも増えました。それでも命がけの決戦よりも、異世界での自給自足の方に話の軸足がきているので基本のほほんな物語です。まだ「なお」とか「蛇足ながら」などのエクスキューズを強調したがる癖が気になりますが、読む方が慣れてきたかな。
