江川卓+玉置肇・西村欣也・永瀬郷太郎 1988年 新潮社
きのうのつづき。引退の翌年に出た江川の半生記。
基本的に自伝なんだけど、共著としてクレジットされてるのは、あちこちフォローで試合経過などの事実関係を入れている、スポーツ新聞の記者のひと。
阪神ファンだった私が、宿敵ジャイアンツのピッチャー、しかも入るときにすったもんだしてダーティ・イメージいっぱいだった江川のことを、最初から好きだったわけではないのは当然のこと。っていうか、大っきらいだったんだけど。
それが何でファンになったかっていうと、その実力を見せつけられたからで。
プロ入り3年目の、昭和56年の江川、20勝したときの江川は、それはすごかった。
なんといっても、先発完投してきて、最終9回になると突如その日一番速い球を投げて、三振をとるという芸当をやってのけていたのは、カッコよかった。
それで試合は、3時間なんてかからず、夜9時前に終わるんだけど、ヒーローインタビューで「自分が子どものころ、テレビの野球中継が試合の途中で終わるのは面白くなかったから」とかシレっと言ってた。
このころから言動も、素の面白いとこが出るようになってきてたんで、そのへんも他の選手とは違って魅力的だったんだけど。
応援するチームだからとか、負けたらいやな相手だからとかぢゃなくて、それぞれの選手の実力をみて、評価するところは評価するというように、私が、野球を冷静に見るようになった最初は、やっぱ江川だったんぢゃないかと思う。
後年の「100球肩」とか弱いイメージが残っちゃってますが、若いときはすごかった。完投もするし、年間260イニング投げてたりする。いまのピッチャーは中6日で週一度しか先発しないで、しかもそれも5回くらいでマウンド降りちゃう(だから規定投球回数に達するピッチャーが少ない)んだけど、それに比べたら全然すごい、よく投げている。
ただ、「いきなり20勝するより、毎年10勝ずつしてったほうが、給料あがる」みたいな考え方を披露しちゃって、野球選手のサラリーマン化を招いた点はいただけないけど。
で、本の中身なんだけど。
「空白の一日」については、もちろん多くのページが割かれていて、幼少のころからのそれだけで一章=全体の三分の一になってます。
このなかで、江川が語ってる一番大事なことは、「自分のことはすべて自分できめなくてはならない」って考え方だと思います。
自分自身で判断して、その決断について自分で責任をとるという生き方、それこそが大事ってのには、はげしく同意します。
あとは、印象に残る勝負についていくつか触れられているけど、私が好きなのはヤクルト大杉との勝負。昭和57年のこと。
9回最後の打者で、三振に打ち取ったと思ったカーブを、ボールととられて、そのあと何球か粘られたあげく、逆転されてしまったんだが。
ボールをとられたときに抗議したのは演技(まあ、あとから何とでもいえる)、勝負に行ったのはその何球かあとの速球だったんだが、それをファウルされて投げる球が無くなってしまったという話。これには、ふーん、そうだったんだと思うとともに、いたく野球って深いなと思わされました。
あと引退後の話もいくつかあるんだけど、缶詰を開ける、釘を打つ、子どもの自転車のチェーンを直すといったことは、指を傷つける可能性があるから、引退するまでやったことがなかったなんて話。
きのうのつづき。引退の翌年に出た江川の半生記。
基本的に自伝なんだけど、共著としてクレジットされてるのは、あちこちフォローで試合経過などの事実関係を入れている、スポーツ新聞の記者のひと。
阪神ファンだった私が、宿敵ジャイアンツのピッチャー、しかも入るときにすったもんだしてダーティ・イメージいっぱいだった江川のことを、最初から好きだったわけではないのは当然のこと。っていうか、大っきらいだったんだけど。
それが何でファンになったかっていうと、その実力を見せつけられたからで。
プロ入り3年目の、昭和56年の江川、20勝したときの江川は、それはすごかった。
なんといっても、先発完投してきて、最終9回になると突如その日一番速い球を投げて、三振をとるという芸当をやってのけていたのは、カッコよかった。
それで試合は、3時間なんてかからず、夜9時前に終わるんだけど、ヒーローインタビューで「自分が子どものころ、テレビの野球中継が試合の途中で終わるのは面白くなかったから」とかシレっと言ってた。
このころから言動も、素の面白いとこが出るようになってきてたんで、そのへんも他の選手とは違って魅力的だったんだけど。
応援するチームだからとか、負けたらいやな相手だからとかぢゃなくて、それぞれの選手の実力をみて、評価するところは評価するというように、私が、野球を冷静に見るようになった最初は、やっぱ江川だったんぢゃないかと思う。
後年の「100球肩」とか弱いイメージが残っちゃってますが、若いときはすごかった。完投もするし、年間260イニング投げてたりする。いまのピッチャーは中6日で週一度しか先発しないで、しかもそれも5回くらいでマウンド降りちゃう(だから規定投球回数に達するピッチャーが少ない)んだけど、それに比べたら全然すごい、よく投げている。
ただ、「いきなり20勝するより、毎年10勝ずつしてったほうが、給料あがる」みたいな考え方を披露しちゃって、野球選手のサラリーマン化を招いた点はいただけないけど。
で、本の中身なんだけど。
「空白の一日」については、もちろん多くのページが割かれていて、幼少のころからのそれだけで一章=全体の三分の一になってます。
このなかで、江川が語ってる一番大事なことは、「自分のことはすべて自分できめなくてはならない」って考え方だと思います。
自分自身で判断して、その決断について自分で責任をとるという生き方、それこそが大事ってのには、はげしく同意します。
あとは、印象に残る勝負についていくつか触れられているけど、私が好きなのはヤクルト大杉との勝負。昭和57年のこと。
9回最後の打者で、三振に打ち取ったと思ったカーブを、ボールととられて、そのあと何球か粘られたあげく、逆転されてしまったんだが。
ボールをとられたときに抗議したのは演技(まあ、あとから何とでもいえる)、勝負に行ったのはその何球かあとの速球だったんだが、それをファウルされて投げる球が無くなってしまったという話。これには、ふーん、そうだったんだと思うとともに、いたく野球って深いなと思わされました。
あと引退後の話もいくつかあるんだけど、缶詰を開ける、釘を打つ、子どもの自転車のチェーンを直すといったことは、指を傷つける可能性があるから、引退するまでやったことがなかったなんて話。