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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

現代日本の政治過程

2010-06-25 19:11:58 | 読んだ本
小林良彰 1997年 東京大学出版会
副題は「日本型民主主義の計量分析」
マンガばっか読んでると思われるのも何なんで、最近政治がさわがしいことになってきたこともあるから、政治学の本。
日本の政治って何がどうなっているのか、計量的に解明し、何が問題なのかまとめているという点で、私が知る限り、政治について分析しているものとしては、この本が一番すばらしいかなと思う。
戦後日本の政治、時期としてはだいたい1955年以降から1993年の選挙までを取り扱っていますが、読んでけば、いろんなことがクリアになります。テレビの政治家が出てきて討論してる番組とか見て、なに言ってんだかわかんないなら、これ読めばよろしと思います。
第II部「民主主義の機能不全」には、「政党公約と政府支出」「公約と投票行動」と題した章がありますが、政党の公約が国の予算支出に与える影響が低く、有権者の意向が政策形成に反映されにくというショッキングなことがズバッと示されています。
選挙で選ばれた議員が、どうして選挙前の公約を守らず勝手なことをするかについては、第III部「政治家の合理性」で、自身の再選や、大臣のイスなどのポスト獲得のために、地元など特定の支持者のために動くからだと明らかにしています。
このへん、「だろう・ではないか」ではなく、たとえば政治家の得票とその地域への補助金とのあいだに因果関係ありというようなことを統計的に分析してます。
つぎの「有権者の反応」では、経済状況の変化などと政党支持率の関係のようなマクロ分析のあと、個人がどういう理由でどのような投票行動をとるかのミクロ分析もしてます。
そこでは、内閣不信が政治家全体に対する不信につながり、ひいては政治システムに対する不信にまでなること、支持政党なし層が増えることや投票率が下がることについても分析されてます。
で、当然のことながら、最後には、いくつかの提言があります。現実の改善に役立つ提言ができなければ学問の意味はない。
選挙公約登録制の提唱、理想的な選挙制度の提唱(定数自動決定式比例代表制)、直接民主制による補完機能の提唱(国民・住民投票の実施など)、公共セクターにおける政治的ノイズ排除の提唱、政治腐敗排除の提唱(政治家背番号制など)があげられている。
すべては、自分たちで決めたことを自分たちで守る、民主主義を現実に機能させるためって目的です。
コメント
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