かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

日本の歴史的建造物

2021年04月08日 | Books



本書は、本屋で見つけた。
2月に出たばかり。
とても面白かった。

カバーから、日本の名建築について紹介している本かと思ったら、そうではなくて、日本の建築を、芸術として、歴史遺産として、文化として、どうとらえ保存してきたか、保存していくべきかを、事例を通して、考えていく本だった。

思い起こせば、駐在していたシンガポールでは、どんどん歴史的建造物(と言っても19世紀のものだが)が、新しいビルに建て替えられていたが、途中から、観光誘致や、文化的意義保存のため、生活の利便性を維持した上で、古い建物をリノベするようになった。
建て替えるより、コスパは下がるものと思われるが。

フランスに行くと、旧市街は、今でも市街地であるにも関わず、古い町並みがそっくり残され、新しいビルは、郊外に建てられているのがわかる。
イタリアでも景観を変える建て替えは、厳しく制限されるが、そのため、地震の際の被害は大きくなった。

そもそも日本で、建築物を残そうという活動が始まったのは、そんな昔の話ではない。
宗教的理由から、寺社は、定期的に立て替えられるケースがあっったが、その際も、前の建物に忠実に建て替えられたわけでない。

この考えは、やはり明治維新後コンドルが西洋の建築学を日本に、持込み、その一番弟子である辰野金吾や、伊東忠太などが、日本流の考え方を構築していった。
そもそもアイキテクチャーの訳語が当初はく、”造家”とされたが、もう少し学問的な言葉ということで、”建築”という言葉になったそうだ。
木造建築が主流で、デザインもアジア的な日本建築に、建築学をなじませるのには、相当の紆余曲折があった。

その事例について、極めて興味深い話が続く。
寺社、城、古い民家、近代建築、街並みなど、様々な形で、再現、保存がなされているが、どれが、最良の方法かについての意見も様々だ。
例えば、最近よく見れるようになったファザード工法も、これで街並みが維持されたと言えるのか。
そういえば、シカゴの金融街もファザード工法で、維持され、アンタッチャブルのロケで利用されたことを思い出したが。
お城も、コンクリート製でがっかりしたこともあったが、それはそれで、一つの考え方を基に、再建されていることも知った。

寺社の再建、修復にしても、工法をどうするか、その後の使用方法をどうするか、外観だけか、内装もか、そもそもどの時代の建築をゴールにするのか、単純な話ではない。

通常の工芸、美術品にはない、様々な課題がのしかかる。
そして、その結論が出ないまま、街は変貌し、建物も建て替わっていく。

街はどうあるべきか、その中で、建物はどう生まれ変わっていくべきか、考えさせられる1冊だ。

コメント
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