本書の存在は、前に紹介した”「敦煌」と日本人”で知り、ネットで探してゲットした。
1958年1月に、高島屋で開かれた中国敦煌芸術展覧会の図録だ。
今の図録から比べると、小さくて、紙質も悪いが、カラー写真もあり、当時としては、相当気合の入った図録であったものと思われる。
毎日新聞社と日本中国文化交流協会の主催。
当時、中国とは国交がなかったので、今の北朝鮮の石窟壁画の模写展を高島屋で開催したようなイメージか。
当時の日中の敦煌への思い入れが、本展開催につながった。
当時の技術では、石窟壁画の写真を綺麗に撮影することは難しかったろうから、このような形での展覧会がベストな手法だったろう。
模写と言ってもレベルの極めて高いものであったことがわかる。
顔の輪郭が黒く見えるのは、今は、鉛を含んだ塗料の変色によるものであることがわかっているが、絵具の下の線が現れ過ぎていると説明されている。
上塗りがはげたと説明している絵もある。
それがグロテスクとまで言われてしまっている。
絵具が変色したものだろうと言っているものもあり、説明が一貫していない。
日本の仏像、仏画との関連についても、言及されておらず、その研究もこれからだったのだろう。
解説を読んでいると、中国側の研究成果の発表的な色彩が強い。
今の日本人の思い入れのある壁画や仏像の解説はないものも多く、評価の移り変わりを感じる。
第7回フランス文化使節(ソナタ共演の名手)、中国歌舞団の広告なども、当時ならでは。
敦煌研究創成期の記録として貴重な資料。
見ているだけでも楽しい。