妻が元美容師の、17期生 井上です。
突然の質問ですが、日本のコンビニの数と美容室(美容業)の数はどちらが多いかご存知でしょうか。
「衛生行政報告例」、「経済センサス-活動調査 」など厚労省が公開しているデータを見ると、コンビニの総店舗数約56,700に対し、美容室の数は約246,000店舗と多く、コンビニ店舗数の約4倍にも上ります。
ちなみに、日本の信号機の数、約190,000機よりも多いのです。
近年、美容室の出店ブームが続いており、過去5年間で毎年約3,000店舗ずつ増えております。
(約12,000店舗が新規オープンし、約9,000店舗が閉店している差し引きの数値です。)
一説には、開店1年以内に60%のサロンが閉店し、3年以内に90%が閉店すると言われているようですが、それでも美容室の数が増えているのはなぜでしょうか。
調べると、主に以下3つの理由があるようです。
<美容室が増えている理由>
1.新規参入障壁が低い
美容室は開業にあたっての店舗建物、設備・備品などの投下資本が比較的少なくて済むことから、参入障壁が他業種に比べて低く、新規開業が容易と言われております。
2.仕入れが少なく利益が多い
小売業の利益は、「売上-仕入」ですが、美容室は技術料での売上が8割、店販での売上2割とほとんど仕入れがありません。
そのため、売上がそのまま利益に直結し、労働するだけ、また多店舗化するだけ利益が増えるという特徴があり、軌道に乗れば、成功しやすい業種と言われております。
3.従業員が独立するため
後述しますが、美容師は雇われのままですと収入が低く、家計が成り立たたなくなる場合があるため、多くの美容師が美容学校を卒業後、美容室で10年間ほど勤務したのちに独立という道を選択するようです。
以前の「カリスマ美容師」によるブームの影響で美容師になった方の独立が近年増えているようです。(これは、妻から聞いた話です。)
一方、美容室の年間総売上高は、2015年が約1兆5220億円に対し、2016年が約1兆5146億円と、年々減少しております。
マーケットは縮小しているのに、店舗数は増えているという状況です。
総売上高の減少は、競争の激化により、顧客数や客単価が減少していることもありますが、美容師不足も主な要因の一つのようです。
供給が需要を上回る中、美容師の数は近年やや増えてはいるものの、美容室の増加に美容師の数が追いついていない状況です。
「手に職」をつけられることで人気の職業であった美容師ですが、なぜ最近は不足しているのでしょうか。
原因は、主に以下の3つが挙げられます。
<美容師不足の原因>
1.長時間労働、低賃金
多くの美容室で勤務体系の見直しなど、労働環境の改善に取り組んでいますが、まだまだ拘束時間が長く、そのわりに給与額が低い美容室が多いといった現状があります。
美容師は、掃除・片付け、シャンプーなどを行うアシスタント経験を経て、カット等を行うスタイリストになるのですが、スタイリストの平均年収は、厚労省の「平成26年度賃金構造基本統計調査」によると、30.2歳で約262万円と、決して多くはありません。
尚、アシスタント時の月給は、悲しいことに、10万円程度の場合もあるようです。
そのため、美容師になりたい人の数が減りつつあり、美容師をやめる人も一定数存在します。
2.一人前になるのに時間がかかる
アシスタントは、3~5年の間、接客やシャンプー、カラー、パーマ、カット、着付け、メイクなど、各ステップ毎に技術テストを受け合格して、やっとスタイリストとしてデビューできます。
合格し一人前の美容師となるまでは、主な技術料収入となるカット等は行えません。
3.美容業界の構造的な問題
美容師になるには、「美容師国家資格免許」という国家資格が必要となります。
よって、他業界から気軽に転職ができません。
さらに、理容師と美容師は、理容師法・美容師法によって区別され資格・免許が異なるなど、既得権益の問題もあり、理容師が美容師に簡単になれなかったりもします。
また、私の妻も同様ですが、専門学校に通って美容師国家資格免許を取得する方が多く、その学費に100~200万円ほどかかります。
資格取得に費用がかかる割りに低賃金のため、資格取得者数は減少傾向にあります。
美容師の不足を補う対策としては、
資格を持っている休眠美容師の職場復帰がカギになると言われております。
現在約45万人いる美容従事者に対し、休眠美容師は約60万人いるためです。
さて、成熟期を迎えている市場ですが、以下の取り組みを図ることで、
差別化を図り売上を伸ばしている美容室が存在するようです。
<売上を伸ばしている美容室の取り組み例>
1.高齢者層の顧客を取り込む
高齢化社会の中、60代女性が年間12回以上美容室へ行く割合は15.5%と他の世代比べて多く、一定の支出をする顧客層が存在しております。
そのような中、高齢者層向けにコンセプトやサービスを変える店舗が増えているようです。
2.外国人顧客を取り込む
日本に訪れるアジア圏の外国人観光客の消費が爆買いから体験に変化する中、日本の美容室のレベルの高さに興味を持ち、美容室を体験したいと思っている外国人が増えています。
(インバウンド美容ツーリズムという言葉もあるようです。)
そのため、従業員教育に英会話を加え、外国人の来店を歓迎する美容室も増えているようです。
3.総合性と専門性の強化
「トータルビューティーサロン」への転換を図り、カット・パーマ・カラーといったスタンダードなメニューだけでなく、ネイルやフェイシャル、ヘッドスパ・マッサージなど幅広い施術メニューを提供する美容室が増えております。
総合性で顧客の来店を促し、さらに、各サービスの専門性を強化することで顧客との信頼関係を築き、顧客生涯価値を高めることに重点を置くようになりつつあります。
以上をもとに美容業界の生き残りのための課題をまとめます。
<美容業界の課題>
・増加する競合店とのコンセプトやサービスの差別化
・OnetoOne対応による顧客との信頼関係構築と顧客生涯価値の向上
・WebやSNSを活用した採用の強化
・労働環境の改善によるスタッフの定着率の向上
・独立支援制度や復職制度等のキャリアプランや環境の構築
・後継者不足によるM&Aの実施
妻から美容業界の話を聞いたことがきっかけで少し調べてみたこの市場には、
診断士の活躍の場があるように思いました。
突然の質問ですが、日本のコンビニの数と美容室(美容業)の数はどちらが多いかご存知でしょうか。
「衛生行政報告例」、「経済センサス-活動調査 」など厚労省が公開しているデータを見ると、コンビニの総店舗数約56,700に対し、美容室の数は約246,000店舗と多く、コンビニ店舗数の約4倍にも上ります。
ちなみに、日本の信号機の数、約190,000機よりも多いのです。
近年、美容室の出店ブームが続いており、過去5年間で毎年約3,000店舗ずつ増えております。
(約12,000店舗が新規オープンし、約9,000店舗が閉店している差し引きの数値です。)
一説には、開店1年以内に60%のサロンが閉店し、3年以内に90%が閉店すると言われているようですが、それでも美容室の数が増えているのはなぜでしょうか。
調べると、主に以下3つの理由があるようです。
<美容室が増えている理由>
1.新規参入障壁が低い
美容室は開業にあたっての店舗建物、設備・備品などの投下資本が比較的少なくて済むことから、参入障壁が他業種に比べて低く、新規開業が容易と言われております。
2.仕入れが少なく利益が多い
小売業の利益は、「売上-仕入」ですが、美容室は技術料での売上が8割、店販での売上2割とほとんど仕入れがありません。
そのため、売上がそのまま利益に直結し、労働するだけ、また多店舗化するだけ利益が増えるという特徴があり、軌道に乗れば、成功しやすい業種と言われております。
3.従業員が独立するため
後述しますが、美容師は雇われのままですと収入が低く、家計が成り立たたなくなる場合があるため、多くの美容師が美容学校を卒業後、美容室で10年間ほど勤務したのちに独立という道を選択するようです。
以前の「カリスマ美容師」によるブームの影響で美容師になった方の独立が近年増えているようです。(これは、妻から聞いた話です。)
一方、美容室の年間総売上高は、2015年が約1兆5220億円に対し、2016年が約1兆5146億円と、年々減少しております。
マーケットは縮小しているのに、店舗数は増えているという状況です。
総売上高の減少は、競争の激化により、顧客数や客単価が減少していることもありますが、美容師不足も主な要因の一つのようです。
供給が需要を上回る中、美容師の数は近年やや増えてはいるものの、美容室の増加に美容師の数が追いついていない状況です。
「手に職」をつけられることで人気の職業であった美容師ですが、なぜ最近は不足しているのでしょうか。
原因は、主に以下の3つが挙げられます。
<美容師不足の原因>
1.長時間労働、低賃金
多くの美容室で勤務体系の見直しなど、労働環境の改善に取り組んでいますが、まだまだ拘束時間が長く、そのわりに給与額が低い美容室が多いといった現状があります。
美容師は、掃除・片付け、シャンプーなどを行うアシスタント経験を経て、カット等を行うスタイリストになるのですが、スタイリストの平均年収は、厚労省の「平成26年度賃金構造基本統計調査」によると、30.2歳で約262万円と、決して多くはありません。
尚、アシスタント時の月給は、悲しいことに、10万円程度の場合もあるようです。
そのため、美容師になりたい人の数が減りつつあり、美容師をやめる人も一定数存在します。
2.一人前になるのに時間がかかる
アシスタントは、3~5年の間、接客やシャンプー、カラー、パーマ、カット、着付け、メイクなど、各ステップ毎に技術テストを受け合格して、やっとスタイリストとしてデビューできます。
合格し一人前の美容師となるまでは、主な技術料収入となるカット等は行えません。
3.美容業界の構造的な問題
美容師になるには、「美容師国家資格免許」という国家資格が必要となります。
よって、他業界から気軽に転職ができません。
さらに、理容師と美容師は、理容師法・美容師法によって区別され資格・免許が異なるなど、既得権益の問題もあり、理容師が美容師に簡単になれなかったりもします。
また、私の妻も同様ですが、専門学校に通って美容師国家資格免許を取得する方が多く、その学費に100~200万円ほどかかります。
資格取得に費用がかかる割りに低賃金のため、資格取得者数は減少傾向にあります。
美容師の不足を補う対策としては、
資格を持っている休眠美容師の職場復帰がカギになると言われております。
現在約45万人いる美容従事者に対し、休眠美容師は約60万人いるためです。
さて、成熟期を迎えている市場ですが、以下の取り組みを図ることで、
差別化を図り売上を伸ばしている美容室が存在するようです。
<売上を伸ばしている美容室の取り組み例>
1.高齢者層の顧客を取り込む
高齢化社会の中、60代女性が年間12回以上美容室へ行く割合は15.5%と他の世代比べて多く、一定の支出をする顧客層が存在しております。
そのような中、高齢者層向けにコンセプトやサービスを変える店舗が増えているようです。
2.外国人顧客を取り込む
日本に訪れるアジア圏の外国人観光客の消費が爆買いから体験に変化する中、日本の美容室のレベルの高さに興味を持ち、美容室を体験したいと思っている外国人が増えています。
(インバウンド美容ツーリズムという言葉もあるようです。)
そのため、従業員教育に英会話を加え、外国人の来店を歓迎する美容室も増えているようです。
3.総合性と専門性の強化
「トータルビューティーサロン」への転換を図り、カット・パーマ・カラーといったスタンダードなメニューだけでなく、ネイルやフェイシャル、ヘッドスパ・マッサージなど幅広い施術メニューを提供する美容室が増えております。
総合性で顧客の来店を促し、さらに、各サービスの専門性を強化することで顧客との信頼関係を築き、顧客生涯価値を高めることに重点を置くようになりつつあります。
以上をもとに美容業界の生き残りのための課題をまとめます。
<美容業界の課題>
・増加する競合店とのコンセプトやサービスの差別化
・OnetoOne対応による顧客との信頼関係構築と顧客生涯価値の向上
・WebやSNSを活用した採用の強化
・労働環境の改善によるスタッフの定着率の向上
・独立支援制度や復職制度等のキャリアプランや環境の構築
・後継者不足によるM&Aの実施
妻から美容業界の話を聞いたことがきっかけで少し調べてみたこの市場には、
診断士の活躍の場があるように思いました。