17期生の井上です。
先日、新聞で「IT人材不足「19年危機」 新卒争奪戦が過熱 」という記事を読みました。
IT企業のみならず、ユニクロなどの非IT企業も、ITスキルを持つ学生の採用に力を入れているといった内容でした。
また、約580億円分の仮想通貨NEMが外部からの不正アクセスで流出したというニュースもありました。
原因の一つである、「ネットから隔離した環境で情報を保管していなかった」理由について、
「技術的な難しさと、それを行なうことができる人材が不足している」ことを挙げていました。
たしかに最近、IT技術への高まる需要に対し、IT技術者の人数が不足していることを身近に感じます。
私自身もIT関連の営業活動をしている中で、得意先からの依頼に応えられないことが増えてきました。
売上が欲しいため、社内外のIT技術者の確保に奔走しますが、
そもそも人材を確保できない、または技術がマッチしない、といったことが多く、
その結果、せっかくの依頼を辞退することが増えている状況です。
なぜIT技術者が不足しているのでしょうか。
経済産業省が2016年に発表した、国内IT人材の動向と将来推計に関する調査によると、
IT人材(IT企業と、ユーザー企業の情報システム部門に所属する人材の合計)は
2016年時点で91.9万人であり、17.1万人が不足していると推計されています。
人口減少に伴い、退職者が就職者を上回ることで19年から先は減少に転じる一方、
IT需要の拡大が見込まれるため、人材ギャップは悪化。
IT市場が高率で成長した場合、30年にはIT人材数が85.7万人なのに対し、
不足数は78.9万人に上ると予測されています。
特に、市場拡大が見込まれるセキュリティ分野の人材は、現時点で28.1万人に対し、13.2万人が不足、
また、人工知能などの先端分野は、9.7万人に対し、1.5万人が不足するなど
今後市場が成長するにつれて人材不足も深刻化すると指摘しています。
IT技術者不足の理由についてをもう少し整理すると、以下の5つがあげられます。
1.IT市場そのものの成長
ソーシャル、スマホゲームなどITを活用する事業分野が拡大している背景があります。
またIoTと呼ばれる家電、衣服、時計などの製品でも、IT技術と切り離せないものになってきました。
その結果、IT技術者を求める業界・会社・市場が大きく増えています。
※最近需要が増加傾向の技術分野
・IoT(Internet of Things)
・ビッグデータ解析
・AI(人工知能)
・クラウドコンピューティング
・VR(仮想現実)・AR(拡張現実)
2.既存のIT技術者の高齢化・定年
基幹システムを構築していた技術者が高齢化し、定年退職しています。
特に汎用機エンジニアの要員不足は顕著なようです。
若手はWebやゲームなどの制作に携わるエンジニアを目指す傾向にあり
基幹系システムエンジニアの職に就いている人材が減少している傾向にあります。
3.IT技術職の魅力の低下
IT技術職に対し、辛い・厳しいというネガティブなイメージが強く、
俗にいう3Kという印象が、IT技術職にはある様です。
「3K」の定義は様々ですが、「きつい」「厳しい」「帰れない」の3つのKだそうです。
確かにIT技術者は、納期短縮やコスト削減される中で、期日までに製品を仕上げなければいけませんし、
システムに障害が発生すれば、帰れないこともあります。
4.IT技術者の年収の低さ
経済産業省の調査では、平均年収が500万円との記載がありましたが、最近は増加傾向にあるようです。
しかしそれでも、日本のエンジニアの給料は、海外、特にアメリカのシリコンバレー等と比べ少ないようです。
激務の割に給料が安いと、エンジニア目指す人が減少していた背景があると思います。
5.IT技術の変化の速さ
昨今、IT業界では技術の変化・進化が激しく、技術を一つ習得したと思えば、
その技術が廃れていくという状況があります。
そのスピードはどんどん早まっており、人材のスキル習熟がそれに追いつけずに、
企業の需要と合致したスキル・技術者が不足してしまうという事が起こっているようです。
では、IT人材不足の解消を図るにはどうしたら良いのでしょうか。
最近では、以下の取り組みがあるようです。
1.エンジニアの待遇改善、
最近の大手インターネット企業・メガベンチャーと呼ばれるような会社では
新卒からエンジニアに1,000万近い給与・年収を提示する会社も増えてきました。
また、働き方改革などにより、残業の制限や、テレワークによる在宅での勤務など
多様な働き方ができるようになってきております。
2.発注側のシステム構築に対する理解
発注する側がシステムを理解しておらず、
厳しい納期や予算による発注、度重なる仕様の変更などにより、
エンジニアの3Kの状況に拍車をかけていました。
しかし、最近では、システムを発注する側も、ある程度システム構築についての知識が高まっており
無理な発注は行わないとする会社が増えているようです。
3.エンジニアの育成
IT業界の人材不足は、政府や産業界も危機感を抱いている状況です。
エンジニアの育成を行うため、大学での先端IT技術に関する教育カリキュラム実施のみならず、
早期からプログラミングを学ぶ機会を作るという取り組みにより、
2020年には小学校にプログラミング教育が導入されます。
最近では、Google、Facebook、Amazon、Apple、マイクロソフトなど
アメリカの大手IT企業が日本でも人気企業となってきたこともあり、
小さな子どもを持つ親が、自分の子供に上記企業に入ってもらいたいと夢を託し、
子供向けプログラミング教室に通わせる家庭が増えてきているようです。
4.外国人や女性・シニアIT人材の活用
中国やベトナムの開発会社や子会社に開発をアウトソーシングするオフショア開発などは以前よりありました。
一方、最近では不特定多数の人に業務を委託するクラウドソーシングなどの進展により、
海外のIT人材のみならず、女性やシニアIT人材の活用にも注目が集まっているようです。
大企業と比べ、中小企業のIT人材不足は今後も深刻化していくと思われます。
上記対策も有効かとは思いますが、私と同様、IT資格やスキルを持つ診断士の方々と共に
中小企業のIT活用支援などを行うことで、社会課題に貢献できればと思いました。