17期の桶 哲治です。
LRT(路面電車)に関する続きです。コンパクトシティとLRTについて考えてみました。
地方都市の中心市街地の活性化のためコンパクトシティについて皆さんご存じと思いますが改めて簡単に説明させてください。高度経済成長期には、郊外の住宅地開発が進んだ結果、中心市街地が空洞化するドーナツ化現象が日本の各都市(都会育ちの方には想像できないかも知れませんが人口が10万人くらいの都市でも)で発生しました。公共交通機関が発達していない地方都市は自家用車が移動の中心となり、巨大な複合商業施設や公共施設などが郊外に作られ、幹線道路にはファミレスやファストフード店などが進出し、郊外化を更に進展させました
一方、従来の中心市街地の道路は狭い場合が多いため、渋滞が発生し駐車場も少なく、小規模な店舗は価格やサービスの競争においても郊外の店舗に勝てず、シャッター通りが各都市で見受けられるようになりました。皆さんも地方都市に出張された際に気づいておられると思いますが、成長している首都圏に近い北関東の中核都市でさえもシャッター通りが目立ちます。まして、首都圏から遠く離れた都市は無残です。
都市が郊外に広がると人々が市街地に居住するのに比べ道路や上下水道などの維持費がよりたくさん必要になります。日本社会が人口減少・高齢化に向かうと、都市の利便性や自治体などの財政的制約からコンパクトシティ化を進めるべきだとの考えが広まりました。また、自動車中心の社会は、高齢者や障害者などの交通弱者にとっては不利益となります。高齢者も自動車を運転しないと通院や買い物などの日常生活に支障をきたすので、運転能力が低下しても運転せざるを得ないという危険も伴います。
そこで、国土交通省はコンパクトシティ政策を進めるため、2006年(平成18)に街づくり三法の改正をしました。さらに2013年には集約都市(コンパクトシティ)形成支援事業が創設され、2014年に改正都市再生特別措置法も成立しました。
コンパクトシティは、中心部に行政、医療、教育、などの都市機能を集積し、中心街の活性化と住民の利便性を向上させようとする考えですが、そのコンパクトシティ化の中核的機能として中心市街地への交通手段としてのLRTの導入が検討さされています。
LRTは従来の路面電車とは、若干異なり、原則専用軌道を走行し、バリアフリー化され、定時運行をおこなうことで、高齢者にも優しい、また環境にも優しく、そして路面電車よりも利便性が高くなります。路面電車は、最高速度が40Kmであり、自動車より遅くなってしまいますが、LRTは専用軌道を走るので、平均速度を上げることが出来ます。日本では、本来のLRTと呼べるのは専用軌道を走る富山ライトレールだけですが、広島市などは従来の路面電車の車両をバリアフリー化した車両を使い、電停も改善しています。
欧米の歴史ある都市は、あえて路面電車を残し、LRT化を進めています。ご存じのとおりサンフランシスコ(ケーブルカーですが路面電車です)やドイツやフランスの各都市は観光資源となっています。市民の意思として路面電車を残すことがその町にふさわしいと考えているようです。LRT導入により、バリアフリーで高齢者に使いやすく、より環境に優しい交通機関が観光資源となり、中心市街地に人々が戻り賑わいが復活すれば良いなと個人的に考えております。LRT導入を決めている宇都宮市が反対する人達への理解を得て着工出来れば鉄道ファンとしては嬉しいですね。ただ、自家用車の自動運転技術が進み、高齢者も自由に何処へでも行けるようになるとLRTなどの公共交通機関いらなくなるかもと鉄道ファンとして大いに心配もしております。