みなさん、あけましてめでとうございます。
稼プロ!19期生の森です。
私の仕事の一つに高齢者雇用関係業務があります。簡単に言えば、高年齢者雇用安定法に基づく、その法の趣旨の周知・助言、そして指導です。
ご存知かと思いますが、現在(平成25年から)、企業は働くことを希望する従業員については65歳まで全員働くことができるように、定年を延長するか、再雇用または継続雇用制度を設けることが義務化されています(これを「雇用確保措置」と言います)。
更に令和3年度からは、70歳以上への「就業確保措置」が高齢法に定められ、65歳以降も一定の基準に該当する者については働くことができる制度の導入が“努力義務”とされました。
「雇用」ではなく「就業」となっているのは、必ずしも雇用によらず、業務委託契約や、社会貢献活動に従事することを支援する、などの措置も対象となるためです。
あくまで努力義務であり義務ではありませんが、65歳までの雇用も10年余りの努力義務期間を経て義務化されましたので、いずれ70歳までの義務化の可能性もあると思われます。
背景には少子高齢化があります。生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減り続け、2030年にはピーク時より約2000万人減る見通しです。これまでは、女性や高齢者の労働参加の促進と外国人労働者の受け入れによってなんとか労働力人口は維持してきました。その先は更に大幅な減少が見込まれます。外国人労働者の受け入れ拡大やIT・機械化による労働力の補完などもありますが、年金・医療財政のひっ迫、健康寿命の伸びなどを勘案すると、65歳以上の高齢者もできるだけ働いてもらえるようにすることは最優先課題であるかもしれません。
一方で、昨年、経済界の有名経営者の方が「45歳定年制」に言及して炎上していました。元々、東大の柳川教授が提唱されているキャリアの考え方として「40歳定年」というものがあります。一旦40歳で定年という区切りを設けることで、キャリアを見直し学び直しをする。実際には多くの従業員が再雇用などで雇用継続になるとしても、職種転換や転職・起業もオプションとして選択できるように、そうした自分のキャリアの方向性を考える契機にしようという意図があるようです。この変化の激しい時代にあって、会社としても10年後必要なスキルが何かということは見通すことは難しい。だから会社任せのキャリアではなく、自分で主体的に考えてスキルアップをしていく、そうしたマインドセットが必要ではないか、ということのようです。一方の会社側もこのポジションにはどういった能力を求めるのか、といったいわゆるジョブ・ディスクリプションを提示することで、会社に残りたい人はそれに向けて足りないスキルの習得を促すことができ、方向性が違うと感じる人には転職や起業の判断材料になる。
このためには会社による自己研鑽支援や退職した場合の所得補償の他、公的な教育訓練やリカレント教育等の整備も必須だと指摘されています。
これから70歳、もしかするとそれ以上まで働かなければならない時代では、40歳に限らず、50歳、60歳、もっと若い30歳といった節目節目で会社に頼らず主体的にキャリアを考えていくことは、確かに必要なことだと思います。
そういう意味で、制度としての70歳以上への雇用と、40歳(あるいは45歳)定年的な考え方は、相反するものではなく、うまく整合してやっていくことが求められるのではないでしょうか。