皆さん、こんにちは。事務局の宇野毅です。今日は、1月24日の日経新聞朝刊に掲載されていた「選択のオーバーロード現象」について紹介します。これは、「多くの選択肢がもたらす必要以上の情報を負担に感じ、決断や行動が乱れてしまう状態」のことです。
日頃、スーパーマーケットに行くと、同じ商品でも多くの種類が並んでいるのを見ます。2021年のスーパーマーケット年次統計調査報告書によると、スーパー1店舗あたり、トマトで15~20種類、カレーで90~125酒類、ヨーグルトに至っては、110~150種類程度を扱っているそうです。
このように商品ラインナップが増える要因として、価格をめぐるメーカーと消費者との関係性が指摘されています。つまり、「新商品が好きだが、価格アップは避けたい」という消費者心理にあわせて、メーカーは他社との価格競争による値下げを避けるため、「わずかな違いの新商品を出して、従来の価格を維持する」という戦略をとります。その結果として、品数は増え続けることになります。
では、選択肢が増えれば、人々は満足や豊かさを感じるのでしょうか?
記事では、広島大学の有賀敦紀准教授の研究が紹介されていました。12種類と4種類の人気のスイーツの写真を見せて、好みの3種類を選んでもらう実験をした際に、12種類から選んだ時は4種類から選んだ時より、「後悔」や「選び直したい」という思いが強かったそうです。つまり、選択肢が増えることによって、選んだ結果に満足しにくくなり、最終的には、選ぶ行為そのものが嫌になった、という結果が出ました。
また、米コロンビア大学での実験では、ジャム売り場の試食コーナーに6種類のジャムを置いた場合、試食に来た人の3割が商品を購入しましたが、24種類のジャムを置いた場合には、購入した人はわずか3%であったそうです。
これらの研究は、再現実験の難しさもあり、「選択肢の多さ=悪」という結論ではないようですが、選択肢の多さが、豊かさや満足には必ずしもつながらないということは言えると思います。
これまで企業は、新しい商品やサービスを開発し、品揃えを強化することで、満足度を高めようという努力を続けてきましたが、SDGsという新しい概念が浸透しつつある中、環境破壊や食糧難につながる資源の無駄遣い、ロスの削減がより重要とされる時代になってきています。その意味からも、この「選択のオーバーロード現象」という概念を聞いて、私自身、とても興味深く感じました。