有斐閣六法編集部 @yuhikaku_roppou
6月26日号外135号の官報にて、次の法律が公布されました。
○大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法(法律61号)
○被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の一部を改正する法律(法律62号)
旧司法試験 民法 平成16年・第2問
Aは、Bに2000万円の金銭を貸し付け、その担保としてBの父親Cが所有する甲不動産(時価2500万円)に第1順位の抵当権の設定を受け、その旨の登記をした。Bは支払期限までにその債務を弁済せずに行方をくらませた。
そこで、Cは、この抵当権の実行を避けるため、Aに対して複数回に分けて合計800万円をBに代わって弁済するとともに、残りの債務も代わって弁済する旨繰り返し申し出たので、Aはその言を信じてBに対して上記貸金債権について特に時効中断の手続をとらないまま、支払期限から10年が経過した。他方、その間に、Cに対してDが1000万円、Eが1500万円の金銭を貸し付け、その担保として、甲不動産につきそれぞれDが第2順位、Eが第3順位の抵当権の設定を受け、いずれもその旨の登記を了した。
以上の事実関係の下で(Cが無資力である場合も想定すること)、Aが甲不動産に対して有する第1順位の抵当権設定登記の抹消を請求するため、Eはいかなる主張をし、他方、Aはこれに対していかなる反論をすることが考えられるかを指摘し、それぞれについて考察を加えよ。
<E:主張その1>
1 Eは、後順位抵当権者として、AB間の債権の消滅時効について固有の援用権を有する。
<A:Eの主張その1に対する反論>
1(1) Cによる一部弁済行為により、AB間の債権の消滅時効は中断している(民法147条3号)。
1(2) Eは、固有の援用権を有しない。
<E:主張その2>
2 Cが無資力の場合、Eは、物上保証人(C)が有する援用権を代位行使する(民法423条)。
<A:Eの主張その2に対する反論>
2(1)Cによる一部弁済行為により、AB間の債権の消滅時効は中断している(民法147条3号)。(1(1)と同じ)
2(2)物上保証人(C)は、固有の援用権を有しない。
2(3)援用権は、債権者代位権の対象とならない。
以上
Ⅰ援用に関する部分の考え方
時効制度の趣旨=継続した事実状態に対する社会の信頼を保護するため、継続した事実状態を権利関係にまで高める制度(四宮)
時効の中断制度の趣旨=真実の権利関係が顕わになることにより、継続した事実状態に対する社会の信頼が破られるから、時効制度はもはや機能しなくなるという制度。
では、真実の権利関係を顕わにできる者は誰か
⇒真実の権利者または真実の義務者
時効の援用制度の趣旨=時効の利益を享受するか否かを、各利害関係人の意思に委ねる制度
派生的な法律関係の当事者は、基本となる法律関係の消滅時効を援用することができるか
⇒基本となる法律関係の当事者が不援用、派生的な法律関係の当事者が援用という事態を、実体法秩序が許容するかどうかで判断する。
2(2) 物上保証人(C)は、固有の援用権を有するかどうかでは、「B:不援用、C:援用」という場合を実体法秩序が許容するかどうか。
許容すれば、物上保証人Cは固有の援用権を有すると言える。
⇒結果的には、許容するといえる。
1(2) Eは、固有の援用権を有するかどうかでは、「C:不援用、E:援用」という場合を実体法秩序が許容するかどうか。
許容すれば、後順位抵当権者Eは固有の援用権を有すると言える。
⇒結果的には、許容しえない。
以上