補助金支出の違法を、住民訴訟で止めることができるか。
明らかに超高層の再開発を導入せずとも、再生できるにも関わらず、補助金をいれ、妥当性の欠く事業を行われようとしているものを、住民訴訟で正すことが可能であるか。
「原因行為に無効事由といえるような重大明白な違法がある場合,あるいは著しい裁量権濫用の違法がある場合には,財務会計行為自体も違法となると解するのが相当である」
似たようなケースにおいて、奈良地方裁判所は、判断しています。
「住民訴訟において主張することのできる違法
事由としては,当該財務会計行為自体に存在する財務会計法規上の違法のほか,財
務会計行為と事実上直接的な関係に立つ非財務会計上の行為(原因行為)に,法令
違反があってこれを看過しては執行機関の誠実管理執行義務(地方自治法138条
の2)違反をもたらすような場合の違法に限って主張することができると解するべ
きである。そして,原因行為に無効事由といえるような重大明白な違法がある場
合,あるいは著しい裁量権濫用の違法がある場合には,財務会計行為自体も違法と
なると解するのが相当である」
******奈良地裁 H15.2.26 抜粋*****
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/207/015207_hanrei.pdf
(前略)
(2)ア ところで,参加人らは,本件補助金の支出の差止めを求める訴えにおい
て,その違法事由として,本件事業が,①本件認可が違法であり,また,②破綻す
るおそれが大きい,といった理由で危険で不適切であると主張している。参加人ら
の主張の趣旨からすれば,本件支出の違法事由は,直接的に本件財務会計行為(補
助金の支出)についてのものではなく,本件再開発事業の内容についてのものであ
り,その結果として,本件補助金の支出は,「公益上の必要性」(地方自治法23
2条の2)がないと主張しているものと解される。
イ(ア) 地方自治法242条の2の規定に基づく住民訴訟は,普通地方公共団体
の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠
る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって地方財務行政
の適正な運営を確保することを目的とするものである(最高裁判所昭和53年3月
30日判決・民集32巻2号485頁参照)。そして,同法242条の2第1項1
号の規定に基づく差止請求訴訟は,このような住民訴訟の一類型として認められて
いるものにほかならない。したがって,当該職員の財務会計上の行為をとらえて上
記規定に基づく差止めをすることができるのは,たとえこれに先行する原因行為に
違法事由が存する場合であっても,上記原因行為を前提としてされた当該職員の行
為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解す
るのが相当である(最高裁判所平成4年12月15日判決・民集46巻9号275
3頁参照)。
(イ) しかし,本件差止めを求める訴えにおける請求の原因として財務会計行為
の違法を問題にしていると解される以上は,上記のとおり,原告らが実質的に問題
としているのは,その背後にある原因行為であるというべき本件認可の違法性であ
って,これがそれ自体財務会計行為ではなく,しかも,本件訴えで被告とされてい
る者とは別個の法主体がなした独立した行政処分であって,本来,被告は,本件認
可について何らの権限も有していないから,本件事業の違法性を問いうるものでは
なく,あくまで,参加人らが違法であると主張する本件事業に補助金を支出したこ
とを問題にすべきものであることを考慮してもなお,本件訴えがそのことを理由に
直ちに不適法となるということはできない。
ウ ただし,この問題が本案の問題としてどのように扱われるべきかについては,
別途検討を要する。すなわち,およそ公金の支出を伴わない行政上の行為は存在し
難いものであるから,公金支出の背後にある財務会計行為以外の行為の違法を理由
に公金支出も違法であると主張することにより背後の財務会計行為以外の行為の違
法を争うことを無限定に認めると,住民訴訟の対象を財務会計上の行為に限定した
趣旨を没却することにもなりかねないし,特に,財務会計行為以外の行為が行政処
分である場合において,無限定にその違法性を争う余地を認めると,行政処分の公
定力を否定したり,行政事件訴訟法が処分の取消しの訴えについて出訴期間等の制
限を設け,法的安定性を図っていることを否定する結果をもたらしかねない。他
方,住民訴訟において主張することのできる違法事由を財務会計行為が直接,法規
に違反する場合に限定すると,地方財務行政の適正な運営確保を図る機会は減少す
るといわざるを得ない。したがって,住民訴訟において主張することのできる違法
事由としては,当該財務会計行為自体に存在する財務会計法規上の違法のほか,財
務会計行為と事実上直接的な関係に立つ非財務会計上の行為(原因行為)に,法令
違反があってこれを看過しては執行機関の誠実管理執行義務(地方自治法138条
の2)違反をもたらすような場合の違法に限って主張することができると解するべ
きである。そして,原因行為に無効事由といえるような重大明白な違法がある場
合,あるいは著しい裁量権濫用の違法がある場合には,財務会計行為自体も違法と
なると解するのが相当である。
(3) 以上の見地から,本件事業の違法性について検討する。…