大人をこどもはきちんと見ています。
「ぼくらの七日間戦争」背景にあるもの。
著者は、語っています。「権力に反抗してきた全共闘世代が、親になったら管理教育をし、体制に順応する子どもにしようとしているのは「違うんじゃないか」との思いで書いた。」
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33年、心つかむ「ぼくらの七日間戦争」 「小学生が一番好きな本」8位
2018年6月25日05時00分
33年前に出版された宗田理(そうだおさむ)さん(90)の小説「ぼくらの七日間戦争」=キーワード=が、再び脚光を浴びている。出版社が行った、小学生が選ぶ「一番好きな本」投票では8位にランクイン。新たにアニメ映画化も決まった。どうして、長い間、子どもたちを引きつけるのか。
■「力合わせ悪い大人倒す、すごく共感」
ポプラ社が企画した「こどもの本 総選挙」。全国の小学校や図書館、書店などに呼びかけて投票用紙を配り、昨年11月~今年2月まで募集した。「1、2万票を見込んでいた」(事務局)が、12万8055票も集まる反響を呼んだ。
5月に発表された結果では、「ぼくら――」が8位に入った。上位10作は『ざんねんないきもの事典』や人気絵本作家ヨシタケシンスケさんの作品など、近年刊行された本がずらりと並び=表=、1985年に出た「ぼくら――」の異例ぶりが際立つ。小6では最も多くの票を得た。なぜ選ばれるのか。
「総選挙」に投票した茨城県常総市の長谷川賀子さん(12)は小5のとき、友達から「これ、面白いよ」と言われて読み始めた。クラスでも朝の読書時間にちょっとした話題になっていた。以来、シリーズ全作を読破するほどはまったという。「いまは『大人が言うことが絶対』みたいに言われるけど、大人だって間違えることもある。自分たちの『こうしたい』という気持ちをかなえさせてくれる本」と熱く語る。
一番好きなのは、廃工場に立てこもって大人と戦うシーンだ。「みんなで力をあわせて悪い大人を倒していく。実際にはできないけど、すごく共感します」
ニュースで見る今の大人たちへの視線も厳しい。「政治の人は、『これ、絶対にウソじゃん』と思うようなことでも頑張って隠蔽(いんぺい)したり、変な言い訳をして逃げ回ったり」。アメリカンフットボールの悪質タックル問題は「謝って終わりにしちゃおう、みたい」。本が書かれたのは、携帯電話もポケベルすらなじみのない時代。だが、「全然、昔の本だと感じない」という。暇なとき、今でも本を開く。
母親に勧められた川崎市の藤森貴大君(11)は「大人には抑圧されないという不屈の意志が感じられた」という。「全部大人の言いなりにはなりたくない。この本は子ども目線で書いてある」
他にも「学校に苦手な先生がいてイライラしている時、この本がすごくストレス解消になった」「友だちの大切さ、勇気など様々なことが学べる」――投票用紙とともに、そんな声も寄せられた。
■新装版・映像化で新たな読者
「ランクインは驚きではありません」。出版したKADOKAWAの坂本真樹・角川つばさ文庫編集長代理はこう話す。「この10年、ずっと売れ続けているので」
「ぼくら――」は、1985年に角川文庫から出た後、88年に宮沢りえさん主演で映画化され、「熱狂的に売れた」(坂本さん)。その後は沈静化したが、07年にポプラ社が図書館向けにハードカバーで新装版を出すと、再びブームに火がついた。
KADOKAWAもその2年後、漢字にふりがなをふるなどして、角川つばさ文庫で刊行。「毎年3、4万部近く重版し、新しい読者がどんどん入ってくる」。今回8位に入ったのも09年版だ。同社は今月、アニメ映画化を公表。「子どもだけでなく、親世代、実写の映画を見た世代にも見て頂ける」と期待する。
ポプラ社の山科博司宣伝プロモーション部長は、07年に新たに出版した当時は「そんなに売れるとは思っていなかった」と明かす。「30年たっても、子どもたちは『ぼくら』みたいになりたいとあこがれる。子どもの普遍的な欲求に寄り添ったすごい物語です」
作者の宗田理さんはロングセラーの理由をどうみるか。「子どもは何年たっても、大人に反抗したり、いたずらしたりするのが好きなんですよ」。当初は「悪書」と言われ、学校から「読まないほうがいい」と言われたこともある。
権力に反抗してきた全共闘世代が、親になったら管理教育をし、体制に順応する子どもにしようとしているのは「違うんじゃないか」との思いで書いた。
一方、時代の変化も感じている。「今の子どもたちは『個』になり、みんなで遊ぶことをしなくなってきた。そういうものへの郷愁を感じているのかもしれません」
(中村靖三郎)
◆キーワード
<ぼくらの七日間戦争> 夏休みの前日、東京下町の中学で、1年2組の男子生徒たちが突然いなくなり、廃工場に立てこもる。抑圧する大人に対して、子どもたちが「解放区」を作って団結し、戦いを挑む7日間を描いた。発行部数は、角川文庫で180万部、角川つばさ文庫37万部、ポプラ社で19万部。
■小学生が選ぶ「一番好きな本」トップ10
タイトル・出版社/出版年
1位 ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ(高橋書店)/2016年
2位 あるかしら書店(ポプラ社)/2017年
3位 りんごかもしれない(ブロンズ新社)/2013年
4位 続ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ(高橋書店)/2017年
5位 おしりたんてい かいとうVSたんてい(ポプラ社)/2017年
6位 おしりたんてい いせきからのSOS(ポプラ社)/2017年
7位 このあと どうしちゃおう(ブロンズ新社)/2016年
8位 ぼくらの七日間戦争(KADOKAWA)=最初の出版は1985年/2009年
9位 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(偕成社)/2013年
10位 りゆうがあります(PHP研究所)/2015年
「ぼくらの七日間戦争」背景にあるもの。
著者は、語っています。「権力に反抗してきた全共闘世代が、親になったら管理教育をし、体制に順応する子どもにしようとしているのは「違うんじゃないか」との思いで書いた。」
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33年、心つかむ「ぼくらの七日間戦争」 「小学生が一番好きな本」8位
2018年6月25日05時00分
33年前に出版された宗田理(そうだおさむ)さん(90)の小説「ぼくらの七日間戦争」=キーワード=が、再び脚光を浴びている。出版社が行った、小学生が選ぶ「一番好きな本」投票では8位にランクイン。新たにアニメ映画化も決まった。どうして、長い間、子どもたちを引きつけるのか。
■「力合わせ悪い大人倒す、すごく共感」
ポプラ社が企画した「こどもの本 総選挙」。全国の小学校や図書館、書店などに呼びかけて投票用紙を配り、昨年11月~今年2月まで募集した。「1、2万票を見込んでいた」(事務局)が、12万8055票も集まる反響を呼んだ。
5月に発表された結果では、「ぼくら――」が8位に入った。上位10作は『ざんねんないきもの事典』や人気絵本作家ヨシタケシンスケさんの作品など、近年刊行された本がずらりと並び=表=、1985年に出た「ぼくら――」の異例ぶりが際立つ。小6では最も多くの票を得た。なぜ選ばれるのか。
「総選挙」に投票した茨城県常総市の長谷川賀子さん(12)は小5のとき、友達から「これ、面白いよ」と言われて読み始めた。クラスでも朝の読書時間にちょっとした話題になっていた。以来、シリーズ全作を読破するほどはまったという。「いまは『大人が言うことが絶対』みたいに言われるけど、大人だって間違えることもある。自分たちの『こうしたい』という気持ちをかなえさせてくれる本」と熱く語る。
一番好きなのは、廃工場に立てこもって大人と戦うシーンだ。「みんなで力をあわせて悪い大人を倒していく。実際にはできないけど、すごく共感します」
ニュースで見る今の大人たちへの視線も厳しい。「政治の人は、『これ、絶対にウソじゃん』と思うようなことでも頑張って隠蔽(いんぺい)したり、変な言い訳をして逃げ回ったり」。アメリカンフットボールの悪質タックル問題は「謝って終わりにしちゃおう、みたい」。本が書かれたのは、携帯電話もポケベルすらなじみのない時代。だが、「全然、昔の本だと感じない」という。暇なとき、今でも本を開く。
母親に勧められた川崎市の藤森貴大君(11)は「大人には抑圧されないという不屈の意志が感じられた」という。「全部大人の言いなりにはなりたくない。この本は子ども目線で書いてある」
他にも「学校に苦手な先生がいてイライラしている時、この本がすごくストレス解消になった」「友だちの大切さ、勇気など様々なことが学べる」――投票用紙とともに、そんな声も寄せられた。
■新装版・映像化で新たな読者
「ランクインは驚きではありません」。出版したKADOKAWAの坂本真樹・角川つばさ文庫編集長代理はこう話す。「この10年、ずっと売れ続けているので」
「ぼくら――」は、1985年に角川文庫から出た後、88年に宮沢りえさん主演で映画化され、「熱狂的に売れた」(坂本さん)。その後は沈静化したが、07年にポプラ社が図書館向けにハードカバーで新装版を出すと、再びブームに火がついた。
KADOKAWAもその2年後、漢字にふりがなをふるなどして、角川つばさ文庫で刊行。「毎年3、4万部近く重版し、新しい読者がどんどん入ってくる」。今回8位に入ったのも09年版だ。同社は今月、アニメ映画化を公表。「子どもだけでなく、親世代、実写の映画を見た世代にも見て頂ける」と期待する。
ポプラ社の山科博司宣伝プロモーション部長は、07年に新たに出版した当時は「そんなに売れるとは思っていなかった」と明かす。「30年たっても、子どもたちは『ぼくら』みたいになりたいとあこがれる。子どもの普遍的な欲求に寄り添ったすごい物語です」
作者の宗田理さんはロングセラーの理由をどうみるか。「子どもは何年たっても、大人に反抗したり、いたずらしたりするのが好きなんですよ」。当初は「悪書」と言われ、学校から「読まないほうがいい」と言われたこともある。
権力に反抗してきた全共闘世代が、親になったら管理教育をし、体制に順応する子どもにしようとしているのは「違うんじゃないか」との思いで書いた。
一方、時代の変化も感じている。「今の子どもたちは『個』になり、みんなで遊ぶことをしなくなってきた。そういうものへの郷愁を感じているのかもしれません」
(中村靖三郎)
◆キーワード
<ぼくらの七日間戦争> 夏休みの前日、東京下町の中学で、1年2組の男子生徒たちが突然いなくなり、廃工場に立てこもる。抑圧する大人に対して、子どもたちが「解放区」を作って団結し、戦いを挑む7日間を描いた。発行部数は、角川文庫で180万部、角川つばさ文庫37万部、ポプラ社で19万部。
■小学生が選ぶ「一番好きな本」トップ10
タイトル・出版社/出版年
1位 ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ(高橋書店)/2016年
2位 あるかしら書店(ポプラ社)/2017年
3位 りんごかもしれない(ブロンズ新社)/2013年
4位 続ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ(高橋書店)/2017年
5位 おしりたんてい かいとうVSたんてい(ポプラ社)/2017年
6位 おしりたんてい いせきからのSOS(ポプラ社)/2017年
7位 このあと どうしちゃおう(ブロンズ新社)/2016年
8位 ぼくらの七日間戦争(KADOKAWA)=最初の出版は1985年/2009年
9位 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(偕成社)/2013年
10位 りゆうがあります(PHP研究所)/2015年