公文書管理は、とても重要な仕事です。
********朝日新聞***************
公文書管理、問われる自治体 「メモ集約、保管」愛媛県条例案
2018年7月8日05時00分
加計学園の獣医学部新設は「首相案件」と首相秘書官が言った――。職員がそう記した文書が「個人メモ」か「公文書」かが議論になったことを受け、愛媛県が公文書管理条例案を作った。11日に県議会で可決される見通しだ。何を残し、廃棄するか。条例がある都道府県はまだ少なく、その中身もまちまちだ。
中村時広知事は4月、朝日新聞の報道で明らかになった「首相案件」の文書を職員が作成したものと認めつつ、「(庁内の)報告のためのメモ。保管義務がない」と説明した。「公文書ではないのか」という記者の問いには「(公文書に)ならない」と否定。情報公開請求時の開示の対象でもないと述べた。
5月に参院に提出した文書には、学園理事長と首相が面会したという学園の報告が記されていた。中村知事はこのときも文書が「備忘録」との見解を示した。
獣医学部が設置された同県今治市の市民団体「今治市民ネットワーク」の村上治共同代表はこの取り扱いを疑問視する。加計問題に関する「全て」の文書を2017年5月に情報公開請求した際、開示された文書にこれらのメモが含まれていなかったからだ。「メモと言えば公文書でなくなるという魔法の言葉にしてはならない」と話す。
中村知事は4月に条例を設ける考えを示し、5月には「(文書をめぐる県の対応が)非常に分かりにくいという声も頂いている」と理由を説明した。6月25日に提出した条例案の柱は、「意思決定の過程を検証できるよう、文書を作成しなければならない」という条文だ。ただ、中村知事は「全部のメモを残すのは物理的に不可能。メモを決裁文書に集約して残すというルール」と説明する。
村上さんは「本当に必要なことが決裁文書に入っているか検証できない」と懸念する。
■制定は5都県
総務省によると、公文書管理条例が制定されている都道府県は東京、鳥取、島根、香川、熊本の5都県(17年10月1日現在)。多くの自治体は内規で対応しているのが現状だ。
政府の公文書管理委員会の委員を務める三宅弘弁護士は「内規レベルでも日常業務には支障が見えにくく、住民に(条例として)明確に示す必要性を感じないのだろう」と分析する。
5都県の条例は公文書を「共有の知的資源」とし、意思決定の過程を検証できるようにするよう求めていることなどが共通する。東京都は豊洲新市場への移転をめぐる会議録が廃棄されていたことがわかり、「経過等を明らかにする文書」の作成を求める条例を17年に施行。それまで資料を残すかどうかは職員に委ねられていた。
一方、廃棄のルールは濃淡がある=表。熊本県は保存年限が過ぎた文書を、専門家と第三者委員会のチェックを経てから廃棄するよう義務づけている。条例を制定した12年度からの5年間の廃棄対象は約22万件。そのうち約3700件は廃棄を「保留」とされた。
鳥取県は4月、文書管理のあり方を見直す庁内の検討チームを作った。きっかけは、強制不妊手術に関する優生保護審査会の記録が廃棄されていたこと。だれが手術を受けたか特定できないケースがあるという。例えば保存期間が30年の文書は「原簿、台帳等の簿冊で重要なもの」などとしているが、さらに具体的に示す考えだ。
(前田智、大川洋輔)
■文書残す仕組み整えて
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話 文書をどう管理し、重要な歴史文書を残していくかを明確にするのが条例を制定する意義だが、愛媛県の案ではその点が不十分だ。文書管理の不備が招く弊害は明らかで、例えば強制不妊手術の当事者を特定する資料がないのは、個人の権利侵害につながっている。地方自治体はトップの権限が強い。どのような報告がなされ、どんな選択肢をもとに結論を導いたか、過程がわかる文書を残す仕組みを広く整えるべきだ。
■各自治体の主な公文書廃棄のルール
<東京都> 別の課の職員がダブルチェック
<熊本県> パブリックコメントを通じて県民の意見を聞き、専門家に見解を求める。その上で、第三者委員会に諮問
<鳥取県> 1年以上保管した公文書は、事前に簿冊リストをインターネットで公開しパブリックコメントを受け付ける
<愛媛県> 実施機関は、保存期間が満了した公文書ファイル等を廃棄するものとする(条例案)。県議会では「重要な文書は永年保存」と答弁
********朝日新聞***************
公文書管理、問われる自治体 「メモ集約、保管」愛媛県条例案
2018年7月8日05時00分
加計学園の獣医学部新設は「首相案件」と首相秘書官が言った――。職員がそう記した文書が「個人メモ」か「公文書」かが議論になったことを受け、愛媛県が公文書管理条例案を作った。11日に県議会で可決される見通しだ。何を残し、廃棄するか。条例がある都道府県はまだ少なく、その中身もまちまちだ。
中村時広知事は4月、朝日新聞の報道で明らかになった「首相案件」の文書を職員が作成したものと認めつつ、「(庁内の)報告のためのメモ。保管義務がない」と説明した。「公文書ではないのか」という記者の問いには「(公文書に)ならない」と否定。情報公開請求時の開示の対象でもないと述べた。
5月に参院に提出した文書には、学園理事長と首相が面会したという学園の報告が記されていた。中村知事はこのときも文書が「備忘録」との見解を示した。
獣医学部が設置された同県今治市の市民団体「今治市民ネットワーク」の村上治共同代表はこの取り扱いを疑問視する。加計問題に関する「全て」の文書を2017年5月に情報公開請求した際、開示された文書にこれらのメモが含まれていなかったからだ。「メモと言えば公文書でなくなるという魔法の言葉にしてはならない」と話す。
中村知事は4月に条例を設ける考えを示し、5月には「(文書をめぐる県の対応が)非常に分かりにくいという声も頂いている」と理由を説明した。6月25日に提出した条例案の柱は、「意思決定の過程を検証できるよう、文書を作成しなければならない」という条文だ。ただ、中村知事は「全部のメモを残すのは物理的に不可能。メモを決裁文書に集約して残すというルール」と説明する。
村上さんは「本当に必要なことが決裁文書に入っているか検証できない」と懸念する。
■制定は5都県
総務省によると、公文書管理条例が制定されている都道府県は東京、鳥取、島根、香川、熊本の5都県(17年10月1日現在)。多くの自治体は内規で対応しているのが現状だ。
政府の公文書管理委員会の委員を務める三宅弘弁護士は「内規レベルでも日常業務には支障が見えにくく、住民に(条例として)明確に示す必要性を感じないのだろう」と分析する。
5都県の条例は公文書を「共有の知的資源」とし、意思決定の過程を検証できるようにするよう求めていることなどが共通する。東京都は豊洲新市場への移転をめぐる会議録が廃棄されていたことがわかり、「経過等を明らかにする文書」の作成を求める条例を17年に施行。それまで資料を残すかどうかは職員に委ねられていた。
一方、廃棄のルールは濃淡がある=表。熊本県は保存年限が過ぎた文書を、専門家と第三者委員会のチェックを経てから廃棄するよう義務づけている。条例を制定した12年度からの5年間の廃棄対象は約22万件。そのうち約3700件は廃棄を「保留」とされた。
鳥取県は4月、文書管理のあり方を見直す庁内の検討チームを作った。きっかけは、強制不妊手術に関する優生保護審査会の記録が廃棄されていたこと。だれが手術を受けたか特定できないケースがあるという。例えば保存期間が30年の文書は「原簿、台帳等の簿冊で重要なもの」などとしているが、さらに具体的に示す考えだ。
(前田智、大川洋輔)
■文書残す仕組み整えて
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話 文書をどう管理し、重要な歴史文書を残していくかを明確にするのが条例を制定する意義だが、愛媛県の案ではその点が不十分だ。文書管理の不備が招く弊害は明らかで、例えば強制不妊手術の当事者を特定する資料がないのは、個人の権利侵害につながっている。地方自治体はトップの権限が強い。どのような報告がなされ、どんな選択肢をもとに結論を導いたか、過程がわかる文書を残す仕組みを広く整えるべきだ。
■各自治体の主な公文書廃棄のルール
<東京都> 別の課の職員がダブルチェック
<熊本県> パブリックコメントを通じて県民の意見を聞き、専門家に見解を求める。その上で、第三者委員会に諮問
<鳥取県> 1年以上保管した公文書は、事前に簿冊リストをインターネットで公開しパブリックコメントを受け付ける
<愛媛県> 実施機関は、保存期間が満了した公文書ファイル等を廃棄するものとする(条例案)。県議会では「重要な文書は永年保存」と答弁