以前、同じような構造の法律構成をご紹介させていただきました。
ブログ:「車に乗ったまま、お金貸します」返済期限が過ぎても返済ない場合の金融業者の車取戻しは窃盗罪になるか
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/483f6b313d66009fbac4dbad77584a4d
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし…同242条自己の財物であっても、他人が占有し…この章の罪については他人の財物とみなす
貸金債権を取り立てるために脅迫手段を用いた場合、恐喝罪が成立するかどうか。
****刑法*****
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
***********
例えば、「100万円の貸金債権を取り立てるために脅迫手段を用いた場合」
二段階で考えます。Ⅰ構成要件該当性とⅡ違法性判断(構成要件該当性があることが前提)の二段階です。
Ⅰ構成要件該当性
被害者の財産状態の変化としては、財産状態全体には変化がないが、現金100万円という個別財産が喪失したことが生じました。
例では、「100万円の債務はなくなったが、現金100万円が失われた」
恐喝罪は、個別財産に対する罪です。
被害者の占有する個別財産の現金100万円が奪われている事実を重視すると、損害がありとみなされ、「恐喝罪」の構成要件に該当することとなります。(占有説)
もともと恐喝を行ったひとが有している債権100万円を取り戻しただけと考えると、損害がなしとされ、「恐喝罪」の構成要件に該当しないことになり、恐喝罪は成立しません。(本権説)⇒よって、無罪。
構成要件に該当すると考えた場合は、以下に進んで、
Ⅱ違法性判断(構成要件該当性があることが前提)
債権者の権利行使として、許される範囲内の行為であるか否かで判断されます。
あまりにひどい行為であれば、違法性が阻却されず、「恐喝罪」が成立します。
正当行為(刑法35条)の範囲内とされれば、「恐喝罪」が成立しません。
***刑法35条***
(正当行為)
第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
**********
古い判例ですが、貸したお金の取り立て行為が、恐喝罪に当たると判事されました。
****最高裁判例昭和30年10月14日*****
他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする(昭和二六年(れ)二四八二号同二七年五月二〇日第三小法廷判決参照)。本件において、被告人等が所論債権取立のために執つた手段は、原判決の確定するところによれば、若し債務者Dにおいて被告人等の要求に応じないときは、同人の身体に危害を加えるような態度を示し、且同人に対し被告人A及び同B等は「俺達の顔を立てろ」等と申向けDをして若しその要求に応じない時は自己の身体に危害を加えられるかも知れないと畏怖せしめたというのであるから、もとより、権利行使の手段として社会通念上、一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した手段であることは論なく、従つて、原判決が右の手段によりDをして金六万円を交付せしめた被告人等の行為に対し、被告人CのDに対する債権額のいかんにかかわらず、右金六万円の全額について恐喝罪の成立をみとめたのは正当であつて、所論を採用することはできない。
被告人Bの弁護人〇〇〇〇の上告趣意第二点第三点について。右は事実誤認量刑不当の主張であつて上告適法の理由とならない。被告人Cの弁護人〇〇〇〇の上告趣意第二点について。所論は事実誤認の主張であつて上告適法の理由とならない。
ブログ:「車に乗ったまま、お金貸します」返済期限が過ぎても返済ない場合の金融業者の車取戻しは窃盗罪になるか
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/483f6b313d66009fbac4dbad77584a4d
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし…同242条自己の財物であっても、他人が占有し…この章の罪については他人の財物とみなす
貸金債権を取り立てるために脅迫手段を用いた場合、恐喝罪が成立するかどうか。
****刑法*****
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
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例えば、「100万円の貸金債権を取り立てるために脅迫手段を用いた場合」
二段階で考えます。Ⅰ構成要件該当性とⅡ違法性判断(構成要件該当性があることが前提)の二段階です。
Ⅰ構成要件該当性
被害者の財産状態の変化としては、財産状態全体には変化がないが、現金100万円という個別財産が喪失したことが生じました。
例では、「100万円の債務はなくなったが、現金100万円が失われた」
恐喝罪は、個別財産に対する罪です。
被害者の占有する個別財産の現金100万円が奪われている事実を重視すると、損害がありとみなされ、「恐喝罪」の構成要件に該当することとなります。(占有説)
もともと恐喝を行ったひとが有している債権100万円を取り戻しただけと考えると、損害がなしとされ、「恐喝罪」の構成要件に該当しないことになり、恐喝罪は成立しません。(本権説)⇒よって、無罪。
構成要件に該当すると考えた場合は、以下に進んで、
Ⅱ違法性判断(構成要件該当性があることが前提)
債権者の権利行使として、許される範囲内の行為であるか否かで判断されます。
あまりにひどい行為であれば、違法性が阻却されず、「恐喝罪」が成立します。
正当行為(刑法35条)の範囲内とされれば、「恐喝罪」が成立しません。
***刑法35条***
(正当行為)
第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
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古い判例ですが、貸したお金の取り立て行為が、恐喝罪に当たると判事されました。
****最高裁判例昭和30年10月14日*****
他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする(昭和二六年(れ)二四八二号同二七年五月二〇日第三小法廷判決参照)。本件において、被告人等が所論債権取立のために執つた手段は、原判決の確定するところによれば、若し債務者Dにおいて被告人等の要求に応じないときは、同人の身体に危害を加えるような態度を示し、且同人に対し被告人A及び同B等は「俺達の顔を立てろ」等と申向けDをして若しその要求に応じない時は自己の身体に危害を加えられるかも知れないと畏怖せしめたというのであるから、もとより、権利行使の手段として社会通念上、一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した手段であることは論なく、従つて、原判決が右の手段によりDをして金六万円を交付せしめた被告人等の行為に対し、被告人CのDに対する債権額のいかんにかかわらず、右金六万円の全額について恐喝罪の成立をみとめたのは正当であつて、所論を採用することはできない。
被告人Bの弁護人〇〇〇〇の上告趣意第二点第三点について。右は事実誤認量刑不当の主張であつて上告適法の理由とならない。被告人Cの弁護人〇〇〇〇の上告趣意第二点について。所論は事実誤認の主張であつて上告適法の理由とならない。
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