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産業廃棄物処分場問題 福岡県飯塚市(旧筑穂町) 福岡地判H20.2.25/福岡高判H23.2.7

2012-06-12 11:32:19 | 地球環境問題
 本日の行政学演習の課題のひとつ。

 福岡県 旧筑穂町、現飯塚市での事案。
 住民の皆さんは、一審(福岡地判H20.2.25)は却下ですが、控訴審(福岡高判H23.2.7)で、一部勝ちを得ています。
 ものすごく大きな勝ちを得ています。

 産業廃棄物処分場そこから出された有害廃棄物拡散は、日本全国どこでもありうる問題。

 理解を深めたいと思います。


****判例概要****



措置命令処分等の義務付け請求控訴事件

第1審
【事件番号】 福岡地方裁判所判決/平成17年(行ウ)第43号
【判決日付】 平成20年2月25日

判決主文

 一 原告らの訴えをいずれも却下する。
 二 訴訟費用は、原告らの各負担とする。


控訴審
【事件番号】 福岡高等裁判所判決/平成20年(行コ)第11号
【判決日付】 平成23年2月7日

判決主文

 1 原判決中控訴人X1,同X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X7及び同X8に関する部分を取り消す。
 2 前項記載の控訴人らの主位的請求をいずれも棄却する。
 3 第1項記載の控訴人らの訴えに基づき,福岡県知事は,株式会社Aに対し,原判決別紙産業廃棄物処分場目録記載の産業廃棄物処分場について,廃棄物の処理及び清掃に関する法律19条の5第1項に基づき,生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずべきことを命ぜよ。
 4 控訴人X9,同X10,同X11,同X12及び同X13の控訴をいずれも棄却する。
 5 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は,第1項記載の控訴人らと被控訴人との間においては,第1,2審を通じ,同控訴人らに生じた費用の4分の3を被控訴人の負担とし,被控訴人に生じた費用の8分の1を同控訴人らの負担とし,その余は各自の負担とし,前項記載の控訴人らと被控訴人との間においては,同控訴人らに生じた控訴費用と被控訴人に生じた控訴費用の2分の1を同控訴人らの負担とし,その余は被控訴人の負担とする。






本件は、別紙産業廃棄物処分場目録記載の産業廃棄物処分場(安定型最終処分場・以下「本件処分場」という。)の周辺地域に居住する原告らが、被告に対し、本件処分場において廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)所定の産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われ、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあるとして、

①主位的に、法一九条の八第一項に基づき、福岡県知事が上記支障の除去等の措置を講ずべきこと(以下「本件代執行」という。)の義務付けを求め、

②予備的に、法一九条の五第一項に基づき、福岡県知事が本件処分場の事業者である株式会社乙山(以下「乙山社」という。)に対し上記支障の除去等の措置を講ずベきことを命ずること(以下「本件措置命令」といい、本件代執行と併せて「本件各処分」という。)の義務付けを求める非申請型の義務付け訴訟である。



【事案の概要】
(1)当事者
Xらは、本件処分場の周辺である別紙当事者目録記載の住所地に居住する者である。Xらの住所地は、旧筑穂町に属していたが、旧筑穂町は、平成一八年三月二六日、合併により飯塚市となった。

乙山社は、産業廃棄物、一般廃棄物の処理処分業等を目的とする株式会社である。

(2) 本件処分場の概要
 本件処分場の概要は、別紙産業廃棄物処分場目録記載のとおりである。本件処分場の地質構造は、地表から地下三メートルまで砂層及び砂礫層であり、その下は、風化花崗岩層となっており、N値は、地下約五メートル以下は五〇以上となっている。

(3) 本件処分場における場内水(処分場内の水一般をいう。)の排出の状況
 ア 本件処分場の南約三〇メートルの地点には、西から東に向かって大野川(川幅一メートル程度)が流れている。本件処分場の南東部分からは、長さ数十メートルの側溝(以下「本件側溝」という。)が大野川に通じている。
 大野川の河川水は、本件処分場の周辺住民の生活用水や農業用水として利用されている。

 イ(ア) 本件処分場の場内水の排出経路は、別紙図面のとおりである。本件処分場の場内水は、貯水池(別紙図面「貯水池」の地点)に集められ、水処理設備で水処理がされた後、ビニールホースを通じて本件側溝と大野川が接する地点(別紙図面P3の地点)において放流されている(以下、同経路による放流水を「ビニールホース放流水」という。)。
  (イ) また、本件処分場の擁壁(別紙図面P9の地点)にはL字型のパイプ(以下「L字パイプ」という。)が設置されており、本件処分場の場内水は、L字パイプからも本件側溝に放流され、本件側溝を通じて大野川に放流されている(以下、同経路による放流水を「L字パイプ放流水」という。)。L字パイプは、元々、産業廃棄物の層を通過せずに本件処分場周縁部の排水溝に流入した雨水を処分場外に排出するために設置されたものであるが、その後の覆土等により、上記排水溝が埋没し、現在では、雨水以外の水も混合して排出する状態となっている(弁論の全趣旨)。また、降雨等により上記イの貯水池の水位が高くなり、貯水池内のオーバーフロー管の高さを超えた場合には、同管からL字パイプを通じて、貯水池内の水が水処理設備を通さずに直接排出される構造となっている。
 ウ 上記イ(ア)の貯水池よりも処分場内側の別紙図面「調整池」の地点には、調整池が設置されており、同調整池には黒いパイプ(以下「黒色パイプ」という。)が設置され、黒色パイプの排出口は本件側溝(別紙図面P8の地点)に接続している。

 (4) 本件処分場の設置及び操業の経緯
 ア 甲田有限会社(以下「甲田社」といい、乙山社と併せて「本件処分業者」という。)は、昭和五九年七月一七日、下記のとおり本件処分場の設置届出をし、昭和六〇年八月二四日、福岡県知事から産業廃棄物処理業の許可を受けた上、本件処分場の操業を開始した。
         記
  埋立可能面積 九四一四平方メートル
  埋立可能容量
      一二万三四六五立方メートル
  処理する産業廃棄物
          一品目(がれき類)

 イ 甲田社は、平成一三年四月一三日、本件処分場で処理する産業廃棄物を一品目(がれき類)から安定型産業廃棄物に変更する旨の産業廃棄物処理施設軽微変更等の届出をした。

 ウ 甲田社と乙山社は、平成一三年六月二九日、甲田社が、本件処分場の埋立物受け入れ後の場内作業(荷繰り、整地等)及び定期水質検査の作業宅配等場内整備一般について、乙山社に委託する旨の業務委託契約を締結した。

 エ 甲田社は、平成一四年一一月一八日、二回目の手形不渡りを出して倒産した。

 乙山社は、平成一四年一二月二六日、福岡県知事から、甲田社からの本件処分場の譲受けについての許可(法一五条の四、九条の五第一項)を受け、平成一五年四月一六日、福岡県知事から産業廃棄物処理業の許可を受け、本件処分場の操業を開始した。

 オ 乙山社は、平成一六年五月二八日、本件処分場の埋立容量及び埋立面積を別紙産業廃棄物処分場目録記載のとおりに変更する旨の産業廃棄物処理施設軽微変更等の届出をした。

 (5) 本件処分業者に対する行政処分及び行政指導の概要
 ア 平成一三年八月一二日に本件処分場から黒い汚水が大野川に排出されたため、福岡県嘉穂保健所長は、同月一三日、甲田社に対し、本件処分場の場内水の排水を停止するように指導した。

 イ 福岡県保健環境研究所(保健・環境行政を科学的・技術的側面から補助するため、調査研究及び試験検査等の業務を行う、福岡県条例により設置された機関である。)は、同月一六日、本件処分場の浸透水(浸透水採取設備において採取された水)、場内水及び放流水の水質検査を実施したところ、浸透水について、BODが七八〇mg/l、水銀が〇・〇〇二六mg/l、ジクロロメタンが〇・〇二七mg/lと、浸透水基準を超えていた。福岡県嘉穂保健所長は、同年九月一二日、甲田社に対し、速やかに本件処分場への産業廃棄物の搬入及び埋立処分の中止その他生活環境の保全上必要な措置を講ずることを求める厳重注意を行うとともに、必要な措置の計画書を提出するように指導した。

 ウ 本件処分場から悪臭防止法の規制基準値を超える硫化水素及びメチルメルカプタンが検出されたことから、旧筑穂町長は、平成一三年一〇月三〇日、甲田社に対し、同法に基づく改善勧告をした。

 エ 福岡県知事は、本件処分場で実施した掘削調査の結果、安定型産業廃棄物以外の熱しゃく減量が八・四パーセント、一二・一パーセントと、五パーセントを超えていたことから、令が規定する、安定型最終処分場において産業廃棄物の埋立処分を行う場合に、安定型産業廃棄物以外の廃棄物が混入し、又は付着するおそれのないように講ずべき必要な措置(前記一(3)イ(イ)c)が講じられていないとして、平成一四年三月二〇日、甲田社に対し、法一九条の三に基づき、本件処分場について、安定型産業廃棄物以外の廃棄物を除去し、産業廃棄物処理基準に適合させることとの内容の改善命令をした。

 オ 福岡県知事は、平成一四年七月五日、甲田社に対し、上記エの改善命令の履行確認通知をし、本件処分場への産業廃棄物の搬入の再開を認め、甲田社は、同月一七日、本件処分場への産業廃棄物の搬入を再開した。

 カ 福岡県保健環境研究所は、平成一五年六月二〇日、本件処分場の浸透水を検査したところ、BODが四二mg/lと浸透水基準を超えていた。福岡県嘉穂保健環境事務所長は、上記検査結果を受け、同年八月一二日、乙山社に対し、速やかに本件処分場への産業廃棄物の搬入及び埋立処分を中止し、水質悪化の原因究明を行い、その他生活環境の保全上必要な措置を講ずること等の内容の厳重注意を行った。

 キ 被告は、上記カの厳重注意後に行われた調査の結果を踏まえ、平成一五年一〇月二四日、乙山社に対し、上記厳重注意に係る履行確認通知をし、乙山社は、同月二九日、本件処分場への産業廃棄物の搬入を再開した。

 (6) 原告ら住民の乙山社に対する仮処分の申立て
 ア Xら(原告乙野春夫を除く。)を含む旧筑穂町の住民四六一五名は、乙山社に対し、本件処分場の使用及び操業の仮の差止め並びに本件処分場内に存在する廃棄物の仮の搬出を求める仮処分を申し立て(福岡地方裁判所飯塚支部平成一五年(ヨ)第一四号)、福岡地方裁判所飯塚支部は、平成一六年九月三〇日、上記申立てのうち、本件処分場の使用及び操業の仮の差止めを求める部分を認め、その余を却下する旨の決定をした。

 イ 乙山社は、本件処分場の廃止に向け、平成一六年一二月一五日ころから、本件処分場に処分された産業廃棄物につき、残土による覆土を実施している。
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