法人にも人権があるか。
日本国憲法にはっきりと法人に人権があるという明文はありません。
ただ、最高裁判例をはじめ解釈で、法人にも、制限的に人権があるとされています。
さて、その場合の、どこまで人権を認めるべきかが問題になります。
法人の人権享有主体の問題です。
今、自分自身も考え方を整理中ですが、現段階の整理を記載します。
例えばの例で、法人が総会等で多数決の決議が行われ、あることをすることにしたが、その内容に反対する会員が、その決議に従わなかった場合に、法人は会員に処分をすることにしたとします。
その処分が、有効か無効かをどのように判断するかの考え方です。
「目的の範囲内」かどうかということを、しつこく書いているのは、民法34条の規定が使えるためです。
*****民法34*****
(法人の能力)
第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
**************
以下、「法人の決議が有効か無効か、その決議に従わない会員の処分」の憲法学的考え方を述べます。
その決議内容の手続の妥当性
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質、背後にある法人の人権
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
2)決議内容の許容性、相当性
その決議に従わない場合のその会員の処分の妥当性
、、で判断しますが、特にに焦点をあてて考えてみます。
法人の性質として、背後にある人権は、結社の自由(憲法21条)や職業選択の自由(憲法22条)。
反対する会員と衝突する人権は、思想良心の自由(憲法19条)や(消極的:支持したくない考え方を支持させられる)表現の自由(憲法21条)や職業選択の自由(憲法22条)。
****憲法****
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
**********
例1 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が職域拡大のための法改正を実現するための政治資金として司法書士会政治連盟に政治献金を納める。司法書士会政治連盟は与党議員にのみ寄付。
用いられる手段:特別徴収3万円を会員から徴収したものを政治資金として献金
決議に反対する会員の受けた処分:特別徴収を納めることを拒否して、退会処分
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質、
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要、
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
議会内の政治勢力に併せた寄付を与野党問わず行うべきところ
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒職域が拡大されることを目指しているから、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
少数派も受忍すべき範囲内
例2 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が、被災地の司法書士会支援のため支援金を寄付
用いられる手段:事務手数料収入1件につき50円を賦課して徴収したものを支援金として寄付
決議に反対する会員の受けた処分:事務手数料収入1件につき50円を賦課を納めることを拒否して、退会処分
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外、寄付であり、被災した司法書士の個人的ないし物理的被害に対する直接的な金銭補填や見舞金の趣旨、性格が色濃く残っている。
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
慈善の目的であるものは、まずは、会員の寄付で集めるべきで、一律強制は、受忍すべき範囲を超えている。
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒被災地司法書士の業務の円滑な遂行による公的機能の回復に資するから、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
登記申請事件1件につきその平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、少数派も受忍すべき範囲内
例3 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が、依頼者密告制度に反対する意見表明や反対活動をする
用いられる手段:一般会計から活動資金200万円を拠出し、反対活動のビラなどをつくる。
決議に反対する会員がとっと行動:反対活動を行わないように会への申し入れ
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
依頼者密告制度というものの賛否両論を併記した問題提起をするべきである。
公的機関が反対意見を主張すると、その影響力が多大。
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒依頼者が安心して司法書士にアクセスできる権利を守るための反対であり、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
会として反対活動をするのであり、その所属会員にまで反対を押し付けるものではない。
少数派も受忍すべき範囲内
以上
日本国憲法にはっきりと法人に人権があるという明文はありません。
ただ、最高裁判例をはじめ解釈で、法人にも、制限的に人権があるとされています。
さて、その場合の、どこまで人権を認めるべきかが問題になります。
法人の人権享有主体の問題です。
今、自分自身も考え方を整理中ですが、現段階の整理を記載します。
例えばの例で、法人が総会等で多数決の決議が行われ、あることをすることにしたが、その内容に反対する会員が、その決議に従わなかった場合に、法人は会員に処分をすることにしたとします。
その処分が、有効か無効かをどのように判断するかの考え方です。
「目的の範囲内」かどうかということを、しつこく書いているのは、民法34条の規定が使えるためです。
*****民法34*****
(法人の能力)
第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
**************
以下、「法人の決議が有効か無効か、その決議に従わない会員の処分」の憲法学的考え方を述べます。
その決議内容の手続の妥当性
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質、背後にある法人の人権
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
2)決議内容の許容性、相当性
その決議に従わない場合のその会員の処分の妥当性
、、で判断しますが、特にに焦点をあてて考えてみます。
法人の性質として、背後にある人権は、結社の自由(憲法21条)や職業選択の自由(憲法22条)。
反対する会員と衝突する人権は、思想良心の自由(憲法19条)や(消極的:支持したくない考え方を支持させられる)表現の自由(憲法21条)や職業選択の自由(憲法22条)。
****憲法****
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
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例1 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が職域拡大のための法改正を実現するための政治資金として司法書士会政治連盟に政治献金を納める。司法書士会政治連盟は与党議員にのみ寄付。
用いられる手段:特別徴収3万円を会員から徴収したものを政治資金として献金
決議に反対する会員の受けた処分:特別徴収を納めることを拒否して、退会処分
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質、
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要、
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
議会内の政治勢力に併せた寄付を与野党問わず行うべきところ
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒職域が拡大されることを目指しているから、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
少数派も受忍すべき範囲内
例2 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が、被災地の司法書士会支援のため支援金を寄付
用いられる手段:事務手数料収入1件につき50円を賦課して徴収したものを支援金として寄付
決議に反対する会員の受けた処分:事務手数料収入1件につき50円を賦課を納めることを拒否して、退会処分
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外、寄付であり、被災した司法書士の個人的ないし物理的被害に対する直接的な金銭補填や見舞金の趣旨、性格が色濃く残っている。
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
慈善の目的であるものは、まずは、会員の寄付で集めるべきで、一律強制は、受忍すべき範囲を超えている。
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒被災地司法書士の業務の円滑な遂行による公的機能の回復に資するから、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
登記申請事件1件につきその平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、少数派も受忍すべき範囲内
例3 総会多数決で決められた決議内容:司法書士会が、依頼者密告制度に反対する意見表明や反対活動をする
用いられる手段:一般会計から活動資金200万円を拠出し、反対活動のビラなどをつくる。
決議に反対する会員がとっと行動:反対活動を行わないように会への申し入れ
*決議に反対の立場の会員の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、中立性が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒目的の範囲外
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がない、
依頼者密告制度というものの賛否両論を併記した問題提起をするべきである。
公的機関が反対意見を主張すると、その影響力が多大。
*決議を実行する会側の主張
その決議内容の実体法上の妥当性
0)法人の性質
⇒強制加入団体、公益法人、会員の活動支援が必要
1)決議内容の目的の必要性、妥当性、これは、その法人の性質を考えながら、決議内容の目的が、その法人自体の定款で定めた目的の範囲内かどうかの判断
⇒依頼者が安心して司法書士にアクセスできる権利を守るための反対であり、目的の範囲内
2)その法人の性質を考えながら、決議内容の許容性、相当性
⇒相当性がある。
会として反対活動をするのであり、その所属会員にまで反対を押し付けるものではない。
少数派も受忍すべき範囲内
以上
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