頼りない勇気とは、私自身のことです。
今起きていることなのだから、心もとない勇気を持ってでも観ましょうと。
そこで上映館を見てみると全国で13です。驚きました。アカデミー賞受賞作品ですよ。
アートシアター系ばかりです。大手の配給会社は、観に来る人はほぼいないと判断したのでしょう。
残念なことです。
アートシアターでも短期間、一日1回上映です。なんと東京都には上映館がありません。
岡山のシネマクレールは一日2回上映している全国唯一の映画館です。えらいよ!
では、『マリウポリの20日間』です。
決死の撮影行です。似たような題名ですが『マリウポリの7日間』という映画も観ました。この映画の監督は死亡しています。
先に書いたように病院は悲惨を極めます。
そしてあろうことか産科病院が爆撃されたというニュースが飛び込んできます。
撮影者のチェルノフ氏は爆発直後の産科病院に行き人々の様子を撮影します。
助け出された妊婦さんです。臨月ですね。
妊婦さんは救急車で病院に運ばれていきます。
この映像は全世界に配信され、非難の声が巻き起こるのですが、ロシアはフェイクだといって取り合いません。
もちろんフェイクなどではありません。証明されています。
チェルノフ氏はこの妊婦さんがどうなったのか街の病院を探します。
そして、母子ともに助からなかったことを知ります。
病院の地下には数多くの遺体が置かれていました。
人びとは遺体を郊外の空き地に穴を掘り放り込むように置いていくしかありません。
そのままの撮影であり上映です。
テレビのように遺体を映さないようにすることはありません。
テレビ映像に慣れた私たちには大きなショックです。
撮影クルー(チェルノフ氏とスチール写真家マロレトカ氏の2名か)はこの貴重な映像を持ち帰らなくてはなりません。
協力してくれる運転手の家族とともにロシア軍の包囲網を通過します。
人道回路を通り15か所のロシア軍検問所を通過します。
撮影した記録媒体をシートの下に隠して。
人道回路を赤十字チームと共に通り抜けます。
もし徹底して調べられ発見されたならば記憶媒体の没収、身柄拘束です。もちろん命の保証などありません。
脱出を成功させたことはロシアにとって大きな失態だったでしょう。もうフェイクとはいえないだけの映像が持ち出されたのですから。
数十時間に及ぶ映像の一部がこの映画を構成しています。
もちろん、映画には劇伴音楽やナレーションも使われます。その手法については「放談会」でも指摘がありました。
劇伴音楽はもっと抑えたほうがよかったと私も思いました。
この映画の最大の価値は撮影された映像にあります。
戦争というものがどういうもの、マリウポリでなにが起こったのかが記録されています。
マリウポリの20日間以降も2か月におよぶ戦火がありました。その記録はありません。
またガザの惨状をジャーナリストが撮影できているとは思えません。
住民のスマホ頼りです。
この映像の重要性がわかります。ウクライナにとっては国の宝と言えるほどです。
戦争が終わってロシアが戦争犯罪で裁かれることになれば、最も重要な第一次資料になることでしょう。
その日が早く来ることを祈ります。
お読みいただきありがとうございました。
見出し画像は、映画のパンフより