北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

室町時代と現代~京都での最終日

2011-02-22 23:45:15 | Weblog
 庭園巡りを中心とした京都の町めぐりもいよいよ今日でお終いです。

 今日は市内のお寺を巡る定期観光バスに乗車。選びきれない洛中の名刹を、バス会社が選んだ企画に乗る形で巡って歩きました。

 東寺(教王護国寺)、京都御苑、大徳寺、御寺で仏像の数々や庭園を見せてもらって大満足の一日。

 大徳寺大仙院では室町時代で応仁の乱後の永正6(1509)年に作庭された枯山水庭園を拝見。石や砂を地形や波に見立てる「見立て」文化の一つの結晶がここにあります。

 那智の青石を縦に使って滝に見立て、白い砂利による文様を水の流れに見立てますが、その文様の描き方で海にもなれば川にもなり、浜辺の波にも沖の白波にもなります。

 川であることを補強するのに亀石を置いて形の面白い石を船に見立て、三角形の大きな石は比叡山。

 石をたくさん配置することで上流の渓流を表し、もはや石は配置せず白い砂利の広がりとその模様だけで大海原を表します。

 かなり哲学的な思考が必要とされる庭園様式が完成したのは室町時代のこと。なにか日本民族が日本人であることを本格的に目覚めて今日につながる独自な文化様式を手に入れ始めたのがこの時期です。

    ※    ※    ※    ※

 室町時代に始まったものを列挙してみても、障子、書院造り、茶の湯、能楽などが成立。味噌、醤油、豆腐などの食材もこのときに揃い始めました。
 私たちは室町人の子孫です。このあたりは山本七平さんの「日本人とは何か」という本を読むとよく分かります。

 もっとも、応仁の乱という日本最大級の内戦によって多くの寺社仏閣が焼かれてしまったのもこの時期。今現在我々が目にする仏閣の多くが江戸時代という安定した時期に徳川家を始めとした武士達の寄進によって再興されたものでもあります。

 現代の我々は室町人の文化に囲まれて暮らしています。しかし近年急速にそれらが失われているのは、新しいテクノロジーとエネルギーによって快適さが得られるようになったことで、エネルギーや資源を最小限に抑えながら合理性や美学を追究する精神が大事にされなくなったためではないでしょうか。

 最近は環境問題の視点から省エネが改めて叫ばれていますが、そもそも使うのを抑制するのではなく、ものや資源がないところをどのように工夫してきたかという日本人の祖先の知恵や哲学に学ぶところは多いと思います。

 温故知新という言葉は知っていても、体で感じるには旅が一番です。

 京都を訪ねられるのは次はいつのことでしょうか。


                 【大徳寺大仙院山門】
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