北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

都市計画はどこへ行く

2011-08-08 23:45:49 | Weblog
 札幌で開かれた都市計画制度の勉強会にパネラーとして参加しました。

 勉強会には道庁都市計画課さんが全面的にバックアップしてくださり、道庁赤レンガの二階の格式高い会場で開かれました。

 ほとんど宣伝らしい宣伝をしていなかったとのことですが、会場には地方自治体や建設コンサルタントの方など約60人ほどが集まり、冷房もない暑い中で熱い討論を見守ってくださいました。


   【暑い暑い!】


 今回の趣旨は、東京に本部のあるNPO法人都市計画家協会で都市計画法に対して行った提言が地方都市においてどのようなものとして受け止められているかを知りたいということで、道内各地でまちづくりに一言ありそうなところからの論客が集められたということで、釧路からは私に参加の要請があったもの。議論は良かったけれど、それにしても暑かった。ふー


    ※    ※    ※    ※


 都市計画法は建物が建てられる条件を規定したり居住や商業や工場などの業態を棲み分け、さらには街路や公園、下水道などの都市施設を計画的に整備する事で秩序ある街並みを作り、健康で安全な都市環境を形成しようという法律。

 都市が拡大して建物が増える時には一定の基準やルールを事前に定めておかないと不便で住みにくく下手をすると危険なまちになってしまいます。

 例えば、私たちは何気なく土地を買って家を建てて住んでいますが、これだって道路の幅が決められて計画的に下水道が整備され、住宅地の近くには工場は建てられないような決まりになっているために住みやすい環境を享受出来ているのというわけなのです。

 しかし一つには手続き論として、国や都道府県の関与あるいは自治体の裁量をどこまで認めるか、という地方分権の程度についての議論は続いています。例えば用途地域の変更など首長さんが今後こういう町にしたいという計画も都道府県の同意が必要という名の下に事前の調整に時間と労力を必要とするなど、主体性を発揮することができないという不満が自治体側にあります。

 また、建てられる建物の用途を定めながら建てられる範囲を制限的に拡大することで町並みをコントロールしようという規制的手法も、人口が増大して市街地が拡大している時には有効だった反面、今日の地方都市における人口減少局面では無力感がただよいます。ここにはお店を建てても良いよ、というエリアから店がなくなってしまったのが今日の中心市街地の衰退問題です。

 また、やや無秩序に出来上がっている既成市街地を地権者全体の総意で動かしたり土地を出し合って整備することで土地の価値を上げる区画整理などの都市計画手法もありますが、これもまた人口増加局面でこそ有効な手段で、今日地方都市では実に少なくなりました。

 日本全体を一つの法律で秩序立てようという都市計画法ですが、東京などまだまだ開発したいという意欲に満ちた地域と、人口減少と経済低迷に悩む地方都市ではその武器の果たす役割も自ずから変わります。

 北海道だって、今回参加してくださったニセコ町などでは海外資本によるリゾートブームによってコンドミニアムなどが無秩序に建てられ始めて様々な問題が起きたそうで、それを都市計画法を適用することでなんとか秩序建てようとしている活気ある悩みがあります。

 逆に夕張から参加した担当者の方からは、かつて人口11万人だったまちが今や1万6千人になり、かつての都市計画を縮小している生々しい話も聞けました。

 夕張では住まいを中心とした住居地区にかつて石炭会社から譲り受けた炭住を市営住宅として使っていましたがそれも人口が減少したことで、もはや将来に亘って人は住まないと判断した地区について、住居地区という都市計画をどんどん外しているとのこと。いわゆる現実に都市を縮小させているのです。

 ところが、底地が市有地で上に建っているのが市営住宅であれば縮小出来るのが、民有地に商店の形で建物が残っていると、現実にはもう誰も住んでいなくて商売をしていないにも関わらず、将来また商売ができるかもしれないことから商業地域を外すことができないのだそう。

 これから日本中がコンパクトシティという形で都市を上手に縮小させたいと考えている中では、こうした最前線の悩みと取り組みこそが参考になるはずです。夕張には頑張って欲しいものです。


    ※    ※    ※    ※


 さて、論客が多い中でテーマも幅広かったために二時間半ではとても収まらない拡散した議論になりましたが、私なりに概括してみようと思います。

① これまでの規制的な都市計画手法は一定の役割を果たしたと言えるが、開発意欲が旺盛で引き続き抑制的にコントロールすることが必要な地域と、人口減少局面が顕著な地方都市という二極化が進んでいる。

② 後者の地方都市に於いては、抑制的な建築誘導を行うことよりは都市経営あるいは都市施設マネジメントの段階に入っており、それは都市計画的手法の拡大で行われるべきかどうかも分からない。

③ 都市計画の主体を全て市や町に降ろすべきかどうかについては、まだ都道府県が行うべき広域的都市計画の役割はあり、市レベルが行う都市計画との役割分担について連携を密にして行われるべき。

④ 都市計画手続きそのものが長年の制度改正によって複雑で煩瑣になっているが、その一方で地方自治体では職員数も減り都市計画を担うべき人材育成も難しくなりつつあることから、都市計画事務を自治体が追い切れない事態も予想される。事務を複雑化させるのではなく、事務を簡素化させるような改訂を望みたい。

 …とまあ大体このような感じでしょうか。

 議論を聞いてくれていた方からもコメントが欲しいところではあります。 


    ※    ※    ※    ※


 昨夜はそんな濃い会議をした後に、さらに偶然札幌にいた方に呼び出されて午前様になってしまいました。

 出会いの多い日というのはあるものです。
コメント
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