午前に、事務の女性から、「専務、OA機器メーカーのA社の営業の方がご挨拶をしたいとのことなんですが」と聞かされました。
聞けば、今オフィスで使っているのはOA機器大手のB社さんからのリースなのですが、リース機器の窓口になっている女性職員たちが、どうも最近営業に来る方の反応が鈍い、と感じているというのです。
「A社の方の話を聞くことは意味があるの?」と訊くと、「今リース機器を入れているB社の営業の方は、『この協会は、次も機器更新してくれるだろう』と安心しきっているのじゃないかと。だから次回の更新のために相見積もりをもらって、価格やサービス内容を比較すれば緊張するかもしれませんし、それでも改善しないならリース先を替えても良いと思います」とのこと。
どうやらサービス水準の低下に対して、積もり積もった不満が背景にあるようです。
「そもそも、今の会社にしたのはなぜ?」
「はじめは、C社さんだったんです。それがB社の営業担当の方がとても真面目でマメに対応してくれたので、それこそ1台のパソコンリースから始まって、次第に『ここがいいね』となって、今では全部をB社に替えたんです」
「そのときは『ここが良い』と思ったB社さんがダメになったの?」
「年月が経って、当時の営業担当さんは仕事ぶりが評価されて偉くなり、今は他の地域の責任者になっているんです。営業の担当者さんの良し悪しは仕事の質に関わりますから」
なかなかに手厳しい観察眼であります。評判というものは、自分の知らないところで形成されているのです。
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さて、挨拶に訪れた営業マンは、なんと今年大学を卒業したばかりの新人だそうですが、スラっとしたスタイルで笑顔もハツラツとしたイケメン君です。
開口一番、「初めまして。何分まだ営業の日が浅いのですが、弊社の機器をいれていただいていない会社様をお訪ねして、いろいろと勉強させていただいています」と言います。
どんな人がいるかわからない事務所に飛び込みで訪問して営業をするというのは、なかなか勇気のいることです。
身の上話を聞くと、学生時代は野球をやっていて、高校は甲子園に何度も行っている常連校でしたが、「自分たちの3年間はそれが叶わなかった、残念な世代なんです」と自虐ネタを披露。
それはそれで印象づくかもしれませんよ。
「最近の若い人たちは、営業や現場仕事を嫌うと聞いていたのですが、営業でも仕方ないと思っているのですか?」
「私は営業職を希望したんです。それは、この会社が、幼い時からの野球の先輩が就職して営業をしている会社でして、その先輩になんとかついていきたいと思っていたものですから」
ああ、初々しくていいなあ、と思うのでした。
なんだかとてもアドバイスをしたくなって、いろいろなことを話してしまいました。
彼は良い話になるとノートを取り出して、「ああ、いいお話ですね」とメモを取っていました。
さんざん対話をして、私が最後に言ったことは、「何か、役に立ちそうな話がありましたか。もしあったとして、その『良いですね』と感じたことを実践できるかどうかがポイントですよ。大いに頑張ってくださいね」という励ましでした。
さて、パソコン1台からでもこのA社さんに機器のリースがうまくいくでしょうか。
異なる会社同士で切磋琢磨することで、人も会社も成長するように思います。
しかし、そんな我々の期待に高いレベルで応えてくれることを求めることは、働き方改革に逆行するのかなあ。
さて、この新人営業マンの成長を見守りつつ、次世代の育成にもつながるとよいのですが。