まえがきにも書かれているように、ここに載せられている作品群の中には、長めのものが多いかもしれません。
ショートショートの三要素が含まれていない面もあったりします。
それでも、とても素敵な物語ばかりが並んでいます。
何より、素子さんがこの企画を聴かれた時、思い浮かばれたという矢崎存美さんの「初恋」が巻頭に来ています。
その後に続く物語たちのどれもが、それに負けないほどの魅力に満ち、バラエティに富んでいるのですから、読まない手はありません。
そうですねえ。
私が気に入っている作品を挙げていきますと、矢崎さんの「初恋」はもちろんの事、高野史緒さんの「舟歌」や図子慧さんの「ダウンサイズ」には、それぞれの切なさが感じられますし、堀真潮さんの「トレインゲーム」には、ある種の潔さがありますし、村田沙耶香さんの「余命」では、星新一さんの作品にある不老不死の世界での子捨てから見ると、ある意味人道バージョンかな?と考えられます。
ホラー風味の新津きよみさんの「タクシーの中で」や松崎有理さんの「超耐水性日焼け止め開発の顛末」もいいですし、幻想ですと上田早夕里さんの「石繭」で、SFと幻想の狭間の恩田陸さんの「冷凍みかん」というのもあります。
そしてトリを務める素子さんの「のっく」
ふんわりと包み込むような温かい結末で、とても優しい気持ちになりました。
これは、星さんの「ノックの音が」へのオマージュでしょう。
さて、ここに選ばれている全ての小説家さん方は、皆様、第一線の素晴らしい方々です。
もし、いいなと思われる方がいらしたら、その方の作品をご購入ください。
出版社は、図書館が注文しても、そしてそこで借りる方々が多くても、作家を評価しません。
本を買う事が、その評価につながり、次の作品を書くことができるのです。
好きな作家全てとは、言いませんしできません。
ただ、この方には書き続けて欲しいとか、大多数は評価しないかもしれないけど、私は大好きだから購入する、という応援の仕方もありだと思いますし、私は実行しています。
むしろ、売れている方は「私が応援しなくても」と、後回しになってしまうのは困りものです。
へそ曲がりかもしれませんが、アイドルの応援の仕方のようなものかも?