『涼子点景1964』森谷明子

涼子点景1964 森谷 明子 双葉社

 

曽根健太が漫画雑誌の万引きの疑いを掛けられていたところ、疑惑を晴らし助けてくれたのは、健太の兄・幸一の小学生時代の同級生。小野田涼子だった。

ただ、当時の彼女はとても貧しかったはずなのに、最近、立派なお屋敷から黒塗りの大きな車の後部座席に座っているのを見かけた者がいたのだ。

不審に思った幸一は、ちょっとした探偵気分もあり、彼女の周辺を調べ始めた。

1964年、東京オリンピック直前の頃を、8人の視点から描いています。
確かに、少し調べるだけでは、涼子への不信感がつのる状況ではあります。
でも、物語を俯瞰で見ると、彼女も周りの様々な謎の全てが分かっていたわけではなく、それでも誠実に生きようと行動していたのがいい方向に向かったんだろうなあと思えて、そこは、救われました。