こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『マチのお気楽料理教室』秋川滝美

2019-07-12 19:11:53 | 読書感想
元ツアーコンダクターで主婦の常盤万智は、時間に余裕のある時だけ、自宅で郷土料理の料理教室を開いている。
開催時間も夕方や夜、昼間など、希望者がいて万智の都合がつけば変動する。

これだけ書くと、タイトル通りに気楽な生活のように思えるかもしれません。
しかし、物語が進むにつれ、万智の家庭の事情やこれまでの人生が明らかになり、決して順風満帆ではなく、今も、それなりに気づかいを要する状況だという事が、分かってきます。

つい、身内だと甘えてしまうのですが、やはり、親しき中にも礼儀あり、気を付けなくてはいけないと、自分を戒めた読書でした。
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『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人

2019-07-08 19:57:15 | 読書感想
日本の昔話世界で起きた殺人事件を描いた、連作短編集です。

「一寸法師」「花咲かじいさん」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」
この5つの話、それぞれで起きた殺人事件の犯人と手口、殺人事件の動機が様々で、推理しつつ、ドキドキしながら読みました。

凶悪事件や財産狙い、密室殺人もありましたが、中でも「浦島太郎」と「桃太郎」は、非常に虚しさと切なさが感じられる物語でした。
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『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第一部兵士の娘II』香月美夜

2019-07-06 19:46:51 | 読書感想
今回、商人のベンノとカンイチャンリンシャンの作り方と交換で、紙作りに必要な材料を調達してもらえる事となった。

その契約の為、仮ではあるが商人ギルドに入らなくてはならなかったのだが、商人の子どもではないマインには困難ではあった。
しかしそれも、ベンノの策略で可能となった。この冬、洗礼式を迎えるギルド長の孫娘が、トゥーリの洗礼式の時の髪飾りを欲しがっていたので、それを請け負う事で恩を売る事になったからなのだ。
また、その孫娘・フリーダが、以前、マインと同じ病「身食い」に罹っていて、かなりの大金があれば治療可能だという事も分かった。

ただ、せっかく紙作りが始まったばかりなのに、マインの身に異変が起きる。

マインも変わり者の面白い子ですが、本当の意味では、彼女がマインでは無いという事に気づいたルッツが、それでも、彼女を守ろうとするところで、とてもいい子だと感じられました。

司書はともかく、マインが本を読めるようになる日が来る事を祈りつつ、読んでいます。
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『マジカルグランマ』柚木麻子

2019-07-03 19:43:44 | 読書感想
七十代半ばの相葉正子は、端役だったが元女優。
映画監督・浜田壮太郎と結婚し長男の孝宏を育て上げたが、浮気の多い夫に愛想をつかし、現在、家庭内別居である。

そんな彼女の下に、ちえこばあちゃんという役で出演のオファーがやって来たのだが・・・。

そうですね。
きっと誰もが、多数派の考え方に流されて他人ばかりか自分の個性さえ見失ってしまうのかもしれません。
読了後、思ったのは、梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』への答の1つなのではないかという事。
『西の~』を読んだ頃には気づきませんでしたが、あれって、若者が思う理想の高齢者像を描いているのであって、本当の高齢者は、もっとわがままで自分勝手だったりしますよね。
そういう意味で、『マジカルグランマ』は、高齢者に限らず「私をあなたの理想の型にはめないで」「私は、あなたに都合の良い人間ではない」という思いが聞こえるような物語です。
とても面白く読めました。お薦めです。
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『偶然の聖地』宮内悠介

2019-07-01 19:50:53 | 読書感想
西にシリア、東にギルギットを従えた独立峰イシュクト山。
“わたし”こと、怜威の祖父・朗良も、イシュクトに魅入られ山を目指して消息を絶った1人。

“わたし”がイシュクトを目指すこととなったのは、祖父が失踪後にニルファムという名の女性を作ったと、弁護士を名乗る男が訪ねてきたからである。
彼女は、イシュクトの麓近くの集落にいるというので、家族会議によって、夏休みがある“わたし”が会いに行くこととなった。

この物語世界には多くのバグがあり、イシュクトと琵琶湖の底が繋がっていたりもする。
そのバグを修正する世界医という者もいて、今回、殺人事件の容疑者として“わたし”を追う刑事、ルディガーとバーニーに2人組と対立することとなる。

読み始めは「ずいぶん、注釈の多い物語だな」と思ったのですが、時折、宮内さん自身の話題に笑わせていただいて、むしろ、楽しみにしておりました。
ただ、本当にバグも多くて、修正に関する闘いが終わった後も、生物学的に困難だと思えるバグが平然と存在し続けて、頭を抱えたくなりました(笑)
最終的な闘いの相手も、何だかなーって存在ですしね。

IT関係に詳しい方だから、こういう面白い発想や変わった方向の思考をなさるのでしょうか?
ファンタジーと言ってもいいのかもしれませんが、ここまで大風呂敷というかスケールの大きさだと、SFとも言えると私は思えます。
楽しませていただきました。
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